電子処方箋でも「患者が希望の薬局で調剤を受けられるように」/薬局の思い
令和6年10月6日時点で、オンライン資格確認を導入した薬局のうち、電子処方箋の運用を開始した薬局は5割を超えている。中でも、今回ピックアップした各地域の導入率は奈良県大和郡山市80%、香川県東かがわ市79%、熊本県菊池市79%と高い数値となっている。
そこで厚労省では、この3地域に対し、導入拡大のきっかけや薬局で感じるメリットなどについて聞き、ホームページで公開した。
奈良県大和郡山市の薬局に対するヒアリングでは、導入のきっかけが地域の中核病院が導入することを知ったことだった。厚労省主催の電子処方箋の説明会で、地域医療機能推進機構(JCHO)が順次電子処方箋を導入していく予定があることを知ったたため、地区薬剤師会の支部長が、地域の地域医療機能推進機能大和郡山病院に定期的に電子処方箋の導入予定を確認するようにしたという。電子処方箋は電子処方箋に対応した薬局でしか調剤できないため、これまでどおり各薬局に患者さんに来局いただけるように、地区薬剤師会の支部長から地域の薬局に電子処方箋の導入を呼びかけ、地域内の導入を進めたという。
香川県東かがわ市でも、近隣の病院が電子処方箋を導入するとの情報がきっかけ。地域で複数店舗をもつ薬局の経営者が、患者さんがいつもの薬局で継続して調剤を受けられるようにと早々に準備を進めた事例もあるようだ。「都会に比べると薬局数も少ないため、できるだけ対応薬局を増やしていきたいという地域への想いの現れ」との声もあった。
地域ではまだ医療機関の電子処方箋導入はなく、電子処方箋を導入している広域病院の電子処方箋の応需もまだなくとも薬局での導入を進めているのが、熊本県菊池市だ。「都会に比べると薬局間の距離が遠いため、電子処方箋を発行された患者さんが離れた薬局に行かずとも、調剤を希望する薬局で調剤を受けられるようにしたい」との薬局の思いが導入の促進につながった。
併用禁忌の多い薬剤も直近の服用薬を正確に把握
導入したメリットを感じているとの指摘も数多い。
1つは在宅医療の現場で多くの紙の処方箋を物理的にやりとりする必要がなくなることだ。電子処方箋の場合は、医師の診察後、引換番号や被保険者番号等が薬局に連絡がくれば、処方箋の原本である電子処方箋を電子処方箋管理サービスから薬局側で取り出し確認することができる。これまでよりも早い時間で患者に薬を渡せるメリットがある。
また、医療情報の確認の幅が広がることは患者の利便性、医療の安全性につながっている。
例えば、新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬は併用禁忌に該当する薬剤が多い。しかし、お薬手帳に記入漏れ、シールの貼り漏れの場合もある。マイナ保険証で受付、過去の薬剤情報の提供に同意をもらうことで、患者の薬剤情報(電子処方箋管理サービス由来の処方・調剤情報含)を詳しく確認できるようになったため、必要に応じて疑義照会を行うことができ、併用禁忌を避け医療安全につながる。
新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬を処方された患者には、普段は調剤を受けていない薬局に来局されることもあるが、その際、マイナ保険証で受付、過去の薬剤情報の提供に同意をもらえば、医療機関に加え、患者が普段調剤を受けている周辺の薬局が電子処方箋管理サービスに登録した直近の調剤情報を確認できるようになった。これまではお薬手帳で確認を進めてきたが、どうしても持参を忘れてしまうケースもあるため、マイナ保険証で受付、過去の薬剤情報の提供に同意をもらえれば、患者の薬剤情報を確認できるようになった。確実なチェックができるようになることは、将来的には薬剤師の業務負担軽減にもつながるとの期待の声もある。
なお、これらの情報は、郡山地区薬剤師会、大川薬剤師会、菊池郡市薬剤師会の関係者へインタビューを行い、コメントを抜粋したもの。
編集部コメント/薬局が積極的に導入する価値大きい
「電子処方箋」というと、処方する医療機関側が導入するもの、とのイメージも強いと思う。しかし、実際は薬局が電子処方箋対応を開始し、調剤データを電子処方箋管理サービスに登録していくことで、ほぼリアルタイムに近い患者の医療情報が蓄積されていく。そして、それは医療機関側が電子処方箋を導入した際に、すぐさま医療機関側も閲覧できる医療情報の共有につながる。薬局が電子処方箋を導入する理由は“受ける側”であり、どこからの処方箋がくるかわからないという立場上のこともあるが、それだけでなく、導入による医療安全への貢献を薬局側が理解しているからこそ、導入が薬局では進んでいると考えられる。薬局での導入は極めて意味のあることだ。