【1万字インタビュー】安川孝志薬剤管理官に聞く

【1万字インタビュー】安川孝志薬剤管理官に聞く

【2024.02.26配信】2月14日、令和6年度調剤報酬改定が答申された。本紙では、厚生労働省保険局医療課・薬剤管理官の安川孝志氏に、薬局に関係する調剤報酬改定の部分についてインタビューした。


地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直し

 ――今回の改定のポイントを改めてお聞きできますか。

 安川 今回の診療報酬改定全体としてのポイントは、大きくは3つあって、1つが賃上げをしっかりやる、そのための対応をやりましょうということです。2つ目は医療DX、特にマイナ保険証の利用を進め、医療の質を上げていきましょうというポイント。3つ目が医療・介護・障害福祉のトリプル改定であったことです。トリプル改定に取り組む中での特に医療・介護との関係、連携をしっかり進めることです。このあたりが全体としての柱立てになるのかなと思っております。
 それに伴って調剤報酬に関しても、必要な部分についての対応を行ったというところです。

 調剤報酬においても3つの柱があります。1つは賃上げも含めますけれど、薬局としては地域の医薬品供給拠点としてしっかり役割を発揮してほしい、そのためにはさまざまな取り組みが必要になってくるので、その体制を評価していきたいということです。2つ目は、かかりつけ機能を発揮しながら業務を進めていくという、従来の方向性の中での対応です。3つ目が同時改定というタイミングもあり、在宅医療の質を向上するための様々な内容について重点的に行ったということになります。

賃上げ/ベースとなる基本料で対応したのはポイント

 ――1つ1つについてお聞きしていきたいと思います。まずは大きな論点となった賃上げについてです。早くも「この報酬では賃上げはかなり難しい」といったお声が出ていますが、このあたりはどう考えたらよいですか。

 安川 最終的に報酬全体の中でプラス改定になったということで整理した結果です。
 その中で、それぞれの項目については、点数の上下もありましたし、適正化も含めて対応した点が多かったため、薬局の運営実態によっての影響はさまざまなのだと思います。ただ、賃上げをしっかりやるという中で、基本料のところ、ベースを上げたというところは大事なポイントになってくると思います。そこには賃上げという意味合いもありますけれども、医薬品を備蓄する上での負担であるとか、物価高騰、日頃からの感染症対策など、こういったところにさまざまなコストもかかるということも含めた上で点数も加味した上での評価にしているところです。

 一方、どのぐらい今回、賃上げをしっかりやっていただくかというところですが、もちろん政府の方針なので今回の報酬改定を元にどの薬局でもしっかりと賃上げをやっていただきたいというところがあります。ただ、今回の診療報酬の中では引き上げに関する用途というのは2つに分かれていて、改定率「+0.61%」で考慮されている「病院、診療所、歯科診療所、訪問看護ステーションに勤務する看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種の賃上げ」というものと、改定率「+0.28%」での対応としての「40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げ」では考え方が分かれています。

 「+0.61%」の方は、確実に賃上げをするための加算という形でベースアップ評価料など、明示的になっている一方で、薬局の方の「+0.28%」の方は賃上げも含めて全体改定率の中に含まれているということなので、“ここが賃上げ部分”などと数値では明示的にはないんですけれども、全体の中で取り組みを進めていただきたいということになります。今回の報酬の対応のほか、賃上げ促進税制、各薬局で従来から行っていた対応を含めて、しっかりとベースアップも含めて賃上げしていただきたいということになります。

 ――賃上げ促進税制の存在も、あまり業界として馴染みがない印象があります。職能団体なども通して周知してしっかり活用していく必要もあるかもしれませんね。

 安川 厚労省としても賃上げ促進税制の概要などの分かるパンフレットのURLなどもご紹介をしています。一定率以上の賃上げをした場合に賃上げ額の一部を法人税等から税額控除できる仕組みで、薬局にとってもメリットのある制度になっているかと思います。
URL
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/r6_chinagesokushinzeisei_pamphlet.pdf

 加えて、賃上げ対応に関しては、今回の診療報酬改定を基に個々の薬局がしっかり賃上げをしたのか確認するという前提があります。「+0.61%」の方、ベースアップ評価料の方では明確に賃上げの計画や報告を提出することになっていますが、薬局への対応である「+0.28%」の方はそこまでの用途制約はないものの、結果、賃金が上がっていますよね、ということの確認は何らかの形で必要になりますので、薬局に対しては抽出調査の実施を予定しています。どういった形で、どういった調査内容にするかというところはこれから整理していくべきところでありますけれども、いずれにしても把握をして薬局の方でもきちんと一定の賃上げの効果があったというところは確認していかなければいけないことになっていますので、薬局の皆さまにも協力をお願いしたいと思います。

地域支援体制加算/感染症対応やDXも地域への貢献という概念は共通

 ――地域支援体制加算についてです。地域支援体制加算のマイナス7点という単独での数字の大きさに皆さんの目がいっていますが、個人的には調剤基本料とその加算全体でみればそれほど大きなマイナスだと思っていません。今回、調剤基本料がプラス3点、調剤基本料の加算でいえば、地域支援体制加算でマイナス7点、連携強化加算が2点から5点へのプラス3点、この時点でマイナス幅はマイナス1点にまで縮小します。連携強化加算でいえば、これまでは地域支援体制加算を算定していない薬局では算定できない位置付けだったものが、単独で加算算定可能になり算定しやすくなったともいえます。そして、月1回算定ではあるものの、医療DX推進体制整備加算でプラス4点、また在宅患者さんの処方箋への加算ではありますが、在宅薬学総合体制加算2を取れるような薬局はプラス50点も算定できます。そういった薬局さんでは増点の可能性すらあると思うのですが、この見方は間違いなのでしょうか。

 安川 体制評価全体として考えるとそのとおりです。今回、体制評価として、どうやったら地域に貢献できるかという1つのメッセージが、地域支援体制加算のかかりつけ機能であり、今回の新しいポイントとして連携強化加算の感染症対応、第2種協定指定医療機関であり、加えて医療DXで医療の質を向上することがあります。一方、これらは地域への貢献という意味では大きな概念は一緒のものなんだとも思います。だからこそ、現行では連携強化加算も地域支援体制加算の中の位置付けだったのだと思っています。そこの立て付けは変えてはいますが、トータルとして考えた中で整理をした結果ということです。地域支援体制加算の要件を強化した反面で点数が下がっているという、メッセージの捉え方、現場の声というのは真摯に受け止めなければいけないところだとも思っています。ただ、繰り返しになりますが、体制として感染症対策をしっかりやっていただきたい、医療DXにも取り組んでいただきたいということをトータルでみた結果と理解していただきたいというふうに思っています。

地域支援体制加算の“選択”項目/1〜4で共通に

 ――地域支援体制加算の要件の強化とされていますが、実績回数を下げている項目もありますし、どのあたりが強化なのでしょうか。

 安川 今回、大臣折衝の中で「調剤基本料等の適正化」ということが決まっていました。適正化の項目は2つあります。1つが調剤基本料の見直しの中で、処方箋の受付回数が月に4000回超で集中率上位3つの医療機関の処方箋調剤が7割超の薬局についての適正化です。もう1つが地域支援体制加算の方で、基本料1を算定する薬局の要件をできる限り、基本料1以外と合わせていくということです。

 そういう意味では、実績要件の項目を並びにしたということが要件強化になります。これまでは基本料1を算定している薬局の要件と、基本料1以外を算定している薬局の要件が違う項目立てになっていました。今回はその項目を揃えた上で、それぞれ、満たすべき項目数に3つ以上や8つ以上といったハードルを課したことになります。ただ、項目は揃えましたけれど、回数はそれぞれ実態とか、今までの算定状況などに応じて考慮しています。回数に関してもこれが厳しいものかどうかということもそれぞれの薬局の経営実態によるところがあると思いますが、年間の回数ではありますので、目指していただくことは可能ではないかと思っています。

 また、算定をするかどうか別にしても、かかりつけ機能としてこういったことに取り組んでいただきたいというメッセージはずっとこれまでの改定の中でも発信し続けていたものではあります。その結果の要件見直しではありますので、これまで示していなかったことに取り組んでいただきたいということではないと思っています。かかりつけに取り組んでくださいであるとか、処方箋内容によっては疑義照会をしっかりしてくださいとか、ポリファーマシーなどに取り組んで結果として減薬にも取り組んでくださいであるとか、これまで発信し続けていた内容なので、必ずしも達成できないものではないと思っています。

基本料1への指摘/財務省の予算執行調査の結果は非常に重たいものだった

 ――議論には表舞台のもの、そうではないものがあるとは思いますが、薬局関係者も理解をしておいた方がいいと思うのは、まず財源が無尽蔵にあるわけではないということかなと思います。限りある財源の中で、優先順位については薬局が決めるものでもなく、中医協での議論に基づき、社会からの要請度合いがある。今回は感染症対応、医療DXなどですね。これは個人の家計と同じだと思うんですね。使えるものと使い先をどう考えるか。その中で、やっぱり薬局としても、ここは崩せない、そして、ここは薬局の今後のために取り組んでおくべきだという項目が議論されてきた結果として今回の答申があるのだと思っています。

 安川  財務省の予算執行調査の結果についても、受け止めて対応する必要がありました。その中で、1つの要素として、大型チェーンの効率化という視点ではなく、基本料1を算定している薬局が本当に地域のかかりつけ機能を発揮しているのか、効率が良いのであれば適正化もできるのではないか、かかりつけ機能をもっと発揮できるような要件にすべきだ、というものがありました。だから、基本料1の集中率が高いところは基本料を引き下げていいのではないか、あるいは地域支援体制加算の方も例えば認定薬局を要件にすべきではないか、といった提言になっていたわけです。これは予算執行調査でも、財政審でも指摘されていたことです。
 「調剤基本料等の適正化」については大臣折衝でも書き込まれたということです。
 「ちゃんとかかりつけ機能を発揮しなさい」というのは、ずっと求められてきたものですので、そういったところを今回は財務的にも強調されたということだと認識しています。

 ――地域支援体制加算の要件の中で、薬局の方々から難しい項目として挙げられるものが服用薬剤調整支援料ですね。ただ、この項目は創設当初から、医薬分業の価値を示せる項目として業界では注目されていました。改めて、こういった算定項目に関心が注がれる結果になっているようにも感じています。

 安川 項目の中で、例えば麻薬調剤は、そのような処方箋があるかどうかで影響を受ける観点はたしかにあると思いますが、ご指摘の服用薬剤調整支援料などについては、厳しい医薬分業のバッシングが続いてきた中で薬を減らす取り組みというところに、ずっと期待をされてきたわけです。すごくハードルは高いとは思うのですが、それに応えることをしていかないと、今後の調剤報酬は守れないと思います。

 調剤管理料の調剤管理加算3点についても、前回の改定においても支払い側からこの点数は必要なのかという厳しい指摘もあった中で認められ、その代わり検証することになっていました。今回も懐疑的な意見は強く出ましたが、中医協の「調剤その2」の議論の際に、その加算を算定している薬局でポリファーマシーの取り組みが進んでうまく対応できている事例を示すことができました。こうした事例を示すことで、支払い側からは「それなら」と納得をしていただけた。資料では埼玉県薬剤師会の事例を示していましたが、ああいったデータがあったのであの加算については継続することができました。これはまさに薬を減らす取り組みで、実施するのは難しいのですが各薬局でどう取り組んでいくのか、今後も引き続き求められるものです。

地域支援体制加算“共通”項目/他の政策として関連付け調剤報酬のルールだけでつくらないようにしたいと思っていた

 ――“選択制”ではない、地域支援体制加算の共通の要件についてはいかがですか。OTC薬の48薬効群などの記載もありますが、これについては備蓄しておけばいいのかという質問もよく聞きます。

 安川 全体としては、地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するためには、さまざまな医薬品を提供できる環境をつくること、それがまさにかかりつけの機能としても必要なことだろうということです。今回、基本料1の実績要件を見直したことに伴い、その要件を入れた項目も当然ありますし、薬局間連携、医薬品の融通などは、もともと昨年12月までの安定供給問題を踏まえた特例措置の要件に入っていた考え方ですが、そういった取り組みを地域で促していきたいという考えがあるので、要件として追加したことになります。

 また調剤だけではない取り組みとしてOTC医薬品とか、緊急避妊薬に関する事項も入れています。調剤にだけに特化せずにしっかりその他のものも提供しながら地域に貢献していくということを、より具体的に示したというところです。単にOTC医薬品を置けばいいということではなく48薬効群を取り扱うことや、緊急避妊薬に関しても単に備蓄すればいいということではなくて、女性の健康に関わる相談なので、医薬品を置いたからには相談があった時に地域の状況を理解した上で必要な対応をしっかり促せることは必要でしょう。それは別に医薬品の提供に至らなくてもいい場合もあります。要件だけをみれば備蓄していればいいということになるのかもしれませんが、備蓄していればいいのかと割り切る考えに対しては、それは本来求めている姿ですか、と言われればきっと「違います」という答えになると思います。

 ――今回の改定のポイントの一番目には「地域の医薬品供給拠点としての役割」を掲げていますよね。ここは急に出てきたものではなくて、薬機法改正で薬局の定義が調剤だけでなくOTC薬を含めた提供をする場と変更になったように、至極、自然な流れの中での組み込みに思えました。

 安川 今回の改定で意識していたのは、ほかの政策として関連付けたりして、調剤報酬のルールだけでつくらないようにしたいと思っていたのです。本来の調剤報酬は全体の政策があって、それを促すための報酬というのが前提にあるからです。ただ薬局の調剤報酬に関しては、「薬局とは」という部分が一昔前まであまり注目されておらず、調剤報酬の世界で規定することがほとんどでした。ですが、そこから「患者のための薬局ビジョン」ができ、健康サポート薬局や薬機法改正の対応があり、今回は医薬局での「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」の議論もそうですし、医政局では第8次医療計画の指針策定、改正感染症の議論もありました。そういった政策にうまく結びつくような形で調剤報酬でも後押しをしていきたいという考えがありました。

 ――薬局経営からすればハードルが上がって点数が下がったという見方にもなるのだと思うのですが、長期的に薬局が社会や地域から評価され続けるためには、この算定をクリアしていくことがより基盤を強固にするのではないかとも受け取れました。

 安川 医薬分業に対する厳しい指摘もそうですし、規制改革の議論では医薬品に関して本当に薬局・薬剤師が扱わなくてはいけないのかといった、いろいろな指摘がされている中にあります。地域の薬局・薬剤師で必要な医薬品が提供できないのであれば、現場では医薬品入手に困っていることがあるので、そういうときはほかの職種でもいいのではないか、ということが規制改革の議論の1つの発端ではあると思うのです。しかし、これに応えるのは本来は薬局自身であると思うのです。加えて、薬局はそういったことに応えることができるんだということを情報発信していかなければいけない。そうしなければどこで何をしているかわかりませんから。今回の報酬における夜間・休日対応もそうです。特に夜間・休日の体制は、輪番制でもいいとか、1つの薬局で完結しなくてもいいというような考え方を改めて示していることと、それをきちんと地域に周知することを要件として示しています。その手段としては行政機関や薬剤師会など、個々の薬局だけでやるのではなくて、地域としての情報発信をしてくださいという要件を加えています。これは地域の中でどの薬局であれば対応できているのか、分かるような発信にしないと、個々の薬局やグループでの情報発信であれば、地域の人は6万の薬局をそれぞれ見なければいけないということになってしまいます。今回、このような薬局情報の周知について、地域支援体制加算、在宅薬学総合体制加算、連携強化加算で要件にしているのはそういった考え方からです。

 地域の中で夜間・休日対応等ができる薬局はどれくらいあるかという情報発信が必要ですし、行政もそれを理解していかないといけない。特に地方自治体の薬事行政ではこれまでは許認可業務が中心だったんですが、これから人口減少もある中でその地域の医薬品提供体制をどう考えるかのということを地方行政もしっかりと意識していかないといけないと思います。それをやっていくには、まずは薬局としてどうなのかを把握して議論しないと結局、薬剤師確保の必要性の議論にも結びつかないと思います。そういった情報把握の手段ということも、この情報提供としては1つの要素になると思います。こういう動きは都道府県の方でも意識していただきたいとも思っています。薬局であれば薬務主管課が主な担当部署になるとは思いますが、医療提供体制に関係する部署とも連携して、地域の医薬品提供体制をどういうふうに整備したらいいのかということを考えるきっかけにもしてほしいと思います。

 ――規制改革の中でも、訪問看護ステーションからのご指摘であったり、これだけ薬局の夜間・休日対応が問題になっている中ではむしろ、薬局自身が周知をしていくことは当然の流れでしょうね。

 安川 その発信をどこが担うのかというと、まずは薬剤師会が挙げられるのではないかと思います。医薬局の方の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」(WG)でも地域の薬剤師会が中心的な役割を担うべきとの方向性は示されていました。まずは地域の薬剤師会がどこまでできるのか、まずはきちんとやってもらおうという流れです。これは会員・非会員問わず地域の薬局が協力し、議論を行う必要があると思います。

 ――地域でカバーするという考え方については否定的な意見もお聞きします。個々の薬局・薬剤師は患者さんに対して責任を持ってやっている、それをほかの薬局に任せるという考えには賛同できないといった意見です。

 安川 薬局で責任を持つことはとても大切な考え方ではあると思うのですが、その考えだけでいくと、カバーできている地域はよいのですが、カバーできていない地域で医薬品が提供できない時に「ここのエリアは薬剤師以外が薬剤を提供してもいいですよね」という規制緩和の要望が出てきます。それは結果、薬剤師が望んでいる方向ではないと思いますので、地域での考え方も意識する必要があります。

医療DX /情報の活用の意義が分かっているからこそ薬剤師はマイナ保険証持参を患者さんに促せるのでは

 ――次に医療DX推進体制整備加算についてです。これまでもDXが薬剤師の業務を大きく変える可能性があるとご指摘されていましたよね。

 安川 これから医療DXが進展すると、ますますいろいろな情報のやりとりが増え、処方側でも他院の処方情報などが見られるようになります。裏を返せば、薬剤師がいなくても薬剤情報の収集はできるのではないか、という話にもなりかねない。医療DXの推進は情報活用に重点を置かなくてはいけないのですが、そこは薬剤師の職能発揮としても大事なポイントです。それが結果的にはさまざまな評価体系にこれから結びつくものになっていく。医療DXが進み、多くの情報が薬局に入ってきた時に、薬剤師はそれをプラスにとらえるのかどうかで、おそらく情報活用の意味が変わってくると思います。

 その情報の活用の意義が分かっているから、薬剤師はマイナ保険証持参を患者さんに促せると思うのです。単に「持ってきてください」と、「国が推進しているから」といった認識で言い続けるだけでは、気持ちも入りませんし、患者さんにも伝わらない。医療DXの価値は、情報を活用して質を向上することにあると思うのです。マイナ保険証の利用を推進することはもちろん必要なのですが、そのことによって薬剤師は自らの職能発揮の環境をつくることが可能だと思うのです。

 また、マイナ保険証という側面以外でいえば、電子処方箋の推進があります。薬剤師にとっては電子処方箋によって、リアルタイムの処方情報などが確認できるようになりますから、必ず必要になってくるものです。医療機関側の体制加算でも電子処方箋を発行するシステムの導入が要件に入ってきていますし、受け皿である薬局もしっかり体制を整備していく必要があります。また、いわゆる3文書・6情報を含めた電子カルテ情報共有サービスに関しても医療DXの議論の中では進んでいますので、そういった将来に向けてもまずは薬局は情報を活用できる環境を整備していく必要があると思います。

 このほか、薬局では、調剤録とか薬歴を電子化していることも要件になっています。様々な仕組みを電子化することが必要なので要件に加えていますが、今後の医療DXを進める上では、いまシステムがベンダーごとにバラバラであることも、課題の1つではないかと思っています。「オンライン資格確認システム」「電子薬歴」「レセプトシステム」「電子お薬手帳」、これらが別々の情報として管理されているのではなく、本来はデータが連動しているシステムを作っていくべきでしょう。今回、そういった要件を課してはいませんが、こういったことを促していくことで、ベンダーにはシステム間で連動できるような仕組みを意識していただきたいですし、そういった方向性の働きかけをしていくのは薬局・薬剤師側だと思います。加えて、電子カルテ情報共有サービスなどの議論が進む中で、薬局側からも今後薬歴関連の情報をどう提供していくのかを考えていかなければいけません。そのためには薬歴の標準化、あるいは情報提供の仕方をどうするのかとかも、本来は意識しなければいけないのではないかと思っています。こうした議論が進んでいるタイミングなので、システムの連動をさせること、標準化を進めていくことは意識していってほしいと思います。これは本来のDXの考え方でしょうし、現場の薬剤師が各システムにおける連携の課題のメッセージをベンダーに対しても出し続ける必要はあるのだろうと思います。

在宅/在宅医療の体制を評価する項目があった方がいいのではないかという考えがあった

 ――次に同時改定の側面、医療と介護の連携についてです。

 安川 在宅関連の評価では大きく分けると3点かなと思います。

 1つはやはり在宅医療にしっかり取り組んでいるところはコストがかかっているので、体制評価も結びつく項目があった方がいいのではないかという考え方です(在宅薬学総合体制加算の新設)。

 次にターミナル期への対応です。これからターミナル期の患者も増える状況がある中で、ただその対応は非常に大変です。その業務に対してなかなか評価されてなかったので、今回はターミナル期の患者にしっかり取り組んでいる薬局の方々から様々なデータを示していただけたので、それが評価に結びついたことが大きかったと思います。そうでなければ、どの程度大変で、どのような課題を解決しているかが示せないので。例えば、訪問回数が現行の算定上限では対応しきれていないということも、ただ要望するだけでは説得力はありません。訪問回数(在宅患者訪問薬剤管理指導料について注射による麻薬の投与が必要な患者に対する定期訪問の上限回数を週2回かつ月8回までに見直す)、夜間などの訪問(夜間訪問加算、休日訪問加算、深夜訪問加算)、あるいは麻薬の調剤実態、希釈をせずに原液で調剤していることなど(無菌製剤処理加算の要件の見直し)、そういったところも実態が示せたので、評価を設けたり要件を見直すことができました。

 3つ目は高齢者施設への対応です。特別養護老人ホームでは現行でも薬剤管理指導の点数がありますが、介護老人保健施設とか、介護医療院においては、介護報酬との給付調整のルールにより、処方箋は一部出すことはできるけれども、受け付けた薬局では調剤報酬が算定できない状況だったのです。このような施設は薬剤師の配置が求められている施設であるという前提での取り扱いではありましたが、処方箋を受け付ける場合には調剤報酬でもカバーしましょうということです。あとは新型コロナ感染症などに対応した場合の緊急訪問に関して、定期訪問している場合以外は算定ができなかったため、今後の新興感染症の対応として施設を訪問した場合の整理を行いました(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1の算定可)。そのほか、特養の入所時などには重点的な服薬支援として服薬管理を整えなければいけないケースもあるので、新しい加算も設けました(施設連携加算の新設)。

 このほか在宅全般の評価事項として、退院後の在宅訪問を開始する移行期における薬学的管理についても、評価を設けることにしました(在宅移行初期管理料)。
 あとは在宅での医師への処方提案についても、薬剤師が医師とともに患家を訪問したりして、提案が反映された処方箋を受け付けた場合の評価などを設けました(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料)。
 これらの評価は、これまで業務実態があるにもかかわらず、調剤報酬で対応できないという現場からの意見を踏まえて、評価することにしたものです。

 ――ここは残薬調整に係るものがなぜ減点になったのか疑問の声もお聞きするのと同時に、医師と同行して処方に関わっていると、そもそも残薬が発生しづらい環境になりやすいというご指摘もお聞きしましたね。何回も残薬調整の加算を算定している実績があるとなると、そもそもの残薬発生理由にアプローチできているのかという疑問もわきますからね。

敷地内薬局/想定していなかった事例がビジネスモデル化し増加している問題

 ――次に敷地内薬局に関してお聞きできますか。

 安川 「国が認めたものなのに」というご意見があるのですが、敷地内についてはだいぶ昔からあるんですね。平成28年に何が変わったかというと、医療機関と薬局の行き来が公道にいったん出る構造にしなくてもよくなった、いわゆるフェンス規制がなくなったことです。それまでも医療機関と薬局間で土地の貸し借りはありました。公道に面している敷地内薬局は存在していました。そういった前提があります。

 しかし、今、何が起こっているかというと、医療機関側が薬局機能を指示したり、薬局に関係のない施設の造設を条件として公募している実態、高額な賃借料を請求している場合があること、一方、薬局の収支構造としては、医薬品費が突出して高い、となると、薬価差を含めた収入が賃借料となって医療機関へ環流しているとしか見えないケースもあります。こうした実態はそもそも想定していない。今まで想定していなかった事例がどんどんビジネスモデル化して増加している現状がある中で、収益関係も含めた適正化はこれまでも取ってきましたし、今回も経営実態のほか、結果的には機能面からみても院内の調剤所と同程度であろうということでさまざまな対応をしました。
 
 今回の検討においては公募要件がどうなっているかの実態、あるいは医療経済実態調査の中での収支など、今まで分かっていなかったことが把握されてくるようになったので中医協で様々なデータを示しました。医療機関と薬局との関係性がこういう状態でずっと続くということに対しては、何らかの対応をしっかり考えなければいけないという問題意識は持っていますので、今回以降も引き続き考えるべき課題だと思っています。突き詰めると、薬局の独立性だと思います。そこは医薬分業の根幹ですので、懸念を持たれない対応をすることは重要だと思っています。これは事件があった、なかったに関わらないことです。敷地内薬局の懸念点は昨年の7月の段階(調剤その1)から議論の俎上にのっていた話です。

 ――そうですね、昨年11月29日の中医協「調剤その3」では敷地内薬局の現状を記載していましたね。その中には、「薬局の開局時間や機能の指定、病院の業務の軽減を求める取組を条件とすることがある」と記載されていて、改めて驚きました。これは単に土地の賃借契約を越えた、薬局運営への介入ではないかと。

フォローアップは今後重要になってくるテーマ

 ――薬学管理料の方ではいかがでしょうか。

 安川 かかりつけ機能ですね。新しい考え方としては、調剤後のフォローアップについて慢性心不全患者への評価を追加しています(調剤後薬剤管理指導料)。

 ハードルは高いのですが、ここはこれから大事になってくるテーマだと思うのです。これは病院との連携が重要になります。再入院を防止するためにも医師と連携しながら服薬状況のほか生活環境の確認も実施しなければいけない取り組みになります。来局する患者が入院したかどうか分からないのではないか、というお声もあるかもしれませんが、医療機関、特に病院薬剤師との連携が必要になってくると思います。入院患者さんがいたとして、退院時に入院中の処方内容の変化なども含め病院薬剤師がしっかり薬局に伝えて、その上で薬局の薬剤師が再入院を防止するためのフォローアップをしっかりやって薬物治療を管理していく。ここを目指すべきだと思います。心不全を対象に追加したことで、改めて勉強してみようという薬剤師も増えるのではないかと思います。患者数からいっても、それも重要なことだと思います。
また、今回のように新しい疾患も評価の対象になることも示せたので、今後の対象追加についても考えいくことができるようになったのではないでしょうか。

 ーー本日はありがとうございました。

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