【座談会】「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を振り返る

【座談会】「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を振り返る

【2023.07.09配信】ある意味で業界が一喜一憂しながら見守ってきた厚労省「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」。10カ月にわたり13回の会議が開催され、6月12日に報告書がとりまとめられた。ドラビズon-lineでは検討会を総括する目的で厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長(医薬産業振興・医療情報企画課セルフケア・セルフメディケーション推進室長併任)安藤公一氏や青山学院大学名誉教授の三村優美子氏、 日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長の原靖明氏を交えた座談会を実施した。


座談会出席者
■厚生労働省 医政局 医薬産業振興・医療情報企画課長(医薬産業振興・医療情報企画課セルフケア・セルフメディケーション推進室長併任)安藤公一氏
■青山学院大学 名誉教授 三村優美子氏
■日本保険薬局協会 医薬品流通・OTC検討委員会副委員長 原靖明氏

安藤公一氏

三村優美子氏

原靖明氏

 以下、有料版「ドラビズ for Pharmacy」の記事から三村氏コメントのみを抜粋。

三村教授、モダリティの変化強調/「30年続いた医薬品流通に、大きな修正が入ると思っている」

 「モダリティの関連からも医薬品流通を考え直す必要があるのではないか」ーー。

 「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」に参画していた青山学院大学名誉教授の三村優美子氏はそう問題提起する。座談会のうち、三村氏のコメントを抜粋しまとめた。

 三村氏が特に強調したのは医薬品の「モダリティ」の変化が議論されたことの意義だ。従来の低分子の医薬品とは違って、再生医療や遺伝子治療など新しいモダリティの医薬品が登場。これらは研究開発力だけでなく製造や販売における、いわゆるバリューチェーンにおいても高度な技術や知識が必要とされる。それに伴い人材育成も必要だ。

 三村氏は、現在、市場に出てきている大型の医薬品はこうした新しいモダリティの医薬品であり、登場によって患者の恩恵は大きい一方、日本でつくれなくなるのは「とんでもない問題」だとし、医療保険財政のあり方、価値の評価を含めて考え直す必要があると指摘する。

 その中にあって、医薬品流通はその価値をどう守るかという視点が重要になるとも指摘。その観点でも川上、川中、川下が協力し合い、自律的な解決能力を持つべきだが、これが「持てなくなってきてはいないか」「分断されていないか」と問題提起。当然のことながら薬局、薬剤師も流通当事者として、「患者の接点として医薬品の価値を伝える役割がある」(三村氏)が、「あまりに制度上の制約がありすぎて医療保険制度の中に閉じ込められている」ために、こうした役割が必ずしも明確化されてこなかったのではないかと指摘する。

 そういった意味でも、医薬品流通における薬局、薬剤師の役割についても「パラダイムシフトではないか」(三村氏)との見方を示した。「30年続いた現在の医薬品流通の仕組みに、大きな修正が入ると思っている」と話した。

 具体的な青写真については、必ずしも描ききれていないとの実情も指摘する。ただ、原材料の地政学的リスクの顕在化からまだ2年あまり、そして安定供給という「当たり前だと思い過ぎていた」問題へのリスクマネジメントという視点からの医薬品行政の転換についても始まったばかりであり、場合によって10年単位の変化になるともした。安藤課長(厚労省・産情課)に対しては、「控えめに言われているが、実は大変画期的なことをされたと思っている」との見方を示した。「経済安全保障」という考え方を政府として示したことは、非常に重要だったとした。原因は複合的であり、1つ、2つを見直しても効果はなく根本的解決が必要としつつも、まず個別のテーマである後発薬については強化が必要とし「医療上必要性の高い医薬品」のキーワードが重要になるとした。

編集部コメント/座談会を終えて

 薬剤師業務の根幹を成す医薬品という“モノ”が変化してきた。例えばワクチンの冷蔵保管。当たり前のように薬剤師は受け入れ、対応してきたが、いわゆるバリューチェーンの一翼を担った現状があるのではないか。毎年薬価改定の衝撃に薬業界が団結してどんな対抗策を打てるか。そのヒントの1つに、新しいモダリティの医薬品において医療機関・薬局が果たす「サプライ」の役割を薬価制度の中にだけに閉じ込めることのない再定義・再評価することもあるのではないか。いずれにせよ、この難局・転換期に、薬剤師はどんな提案ができるのか。発信が求められている。

 
【編集部より】
有料版「ドラビズ for Pharmacy」では安藤課長や原氏の今後の展望などもまとめている。
この機会にぜひ試読お申し込みをご検討ください。
■試読申し込み(1ヶ月間無料試読可能)↓
https://forms.gle/rGKYwLgwNiBqucPw8
■「ドラビズ for Pharmacy」について↓
https://www.dgs-on-line.com/boards/5

※「ドラビズ for Pharmacy」はお陰様で薬局1万軒へのリーチを持つ媒体に成長いたしました。
2023年度は、薬局様だけでなく、薬局様の動向に関心のある卸企業様、製薬企業様、関連業界企業様への購読拡大もしてまいります。

この記事のライター

関連する投稿


【令和7年度の薬価“中間年改定”】岸田首相「関係者の意見も聞き検討進める」/参議院予算委員会で神谷政幸氏の質問に答える

【令和7年度の薬価“中間年改定”】岸田首相「関係者の意見も聞き検討進める」/参議院予算委員会で神谷政幸氏の質問に答える

【2024.03.28配信】参議院予算委員会が3月28日午前から開かれ、神谷政幸参議院議員が質問に立った。


【厚労省】医療用医薬品の流通改善ガイドライン改訂を発出

【厚労省】医療用医薬品の流通改善ガイドライン改訂を発出

【2024.03.01配信】厚生労働省は3月1日、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドラインの改訂について」を発出した。「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会報告書」(令和5年6月9日)に基づき、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」での議論を踏まえ、医薬品特有の取引慣行や過度な薬価差等を是正し、適切な流通取引が行われる環境を整備することにより、さらなる流通改善を図っていくため、流通改善ガイドラインの改訂を行ったとしている。現行からの主な追加、変更点は以下の通り。


【武見厚労相】薬剤自己負担の議論、「イノベーション推進」のために「長期収載品等の自己負担の在り方の見直しを検討」

【武見厚労相】薬剤自己負担の議論、「イノベーション推進」のために「長期収載品等の自己負担の在り方の見直しを検討」

【2023.10.03配信】厚生労働相の武見敬三氏は10月3日、10時20分から省内で会見し、薬剤自己負担の議論について、「イノベーション推進」のために「長期収載品等の自己負担の在り方の見直しの検討」を進めていると述べた。


【流改懇】医療上必要性の高い品目を流通交渉で「別枠」設ける案提示/流通改善GL改訂を議論

【流改懇】医療上必要性の高い品目を流通交渉で「別枠」設ける案提示/流通改善GL改訂を議論

【2023.09.28配信】厚生労働省は9月28日、「第35回 医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)を開き、流通改善ガイドライン(GL)の改訂について議論した。


【日薬連】中長期的に「薬価差が生じない仕組み」要望

【日薬連】中長期的に「薬価差が生じない仕組み」要望

【2023.07.05配信】厚労省は7月5日、中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会を開催し、関係業界からのヒアリングを行った。その中で日本製薬団体連合会(日薬連)は、中長期的に「薬価差が生じない仕組み」を要望した。さらに「薬価差が果たしている役割を明確にしたうえで、必要分を診療報酬・調剤報酬の中で評価することも検討が必要」とした。


最新の投稿


【調剤報酬_疑義解釈】夜間休日対応の周知、「薬剤師会会員のみの整理」は算定不可

【調剤報酬_疑義解釈】夜間休日対応の周知、「薬剤師会会員のみの整理」は算定不可

【2024.04.26配信】厚生労働省は4月26日、令和6年度調剤報酬改定の「疑義解釈資料の送付について(その3)」を発出した。


【東京都】災害薬事コーディネーターを任命/都薬副会長の宮川昌和氏など

【東京都】災害薬事コーディネーターを任命/都薬副会長の宮川昌和氏など

【2024.04.24配信】東京都薬務課は4月24日、定例会見を開いた。


【東京都】市販薬の適正使用へ/小学生向け教材作成へ/乱用推進計画

【東京都】市販薬の適正使用へ/小学生向け教材作成へ/乱用推進計画

【2024.04.24配信】東京都薬務課は4月24日、定例会見を開いた。


【楽天三木谷氏】“濫用薬”の規制方向「撤回を」/デジタル社会構想会議で表明

【楽天三木谷氏】“濫用薬”の規制方向「撤回を」/デジタル社会構想会議で表明

【2024.04.24配信】デジタル庁は4月24日、第 9 回デジタル社会構想会議を開いた。この中で三木谷浩史氏(楽天グループ株式会社/一般社団法人新経済連盟)は厚労省の進める“濫用薬”の規制方向を撤回するよう意見した。


【たんぽぽ薬局】ミック・ジャパン(大阪市)のドラッグ事業など譲受へ

【たんぽぽ薬局】ミック・ジャパン(大阪市)のドラッグ事業など譲受へ

【2024.04.23配信】株式会社トーカイの連結子会社であるたんぽぽ薬局株式会社(岐阜市)は4月22日、株式会社ミック・ジャパン(大阪市)との間で、ミック・ジャパンが展開するリハビリデイサービス事業、ドラッグストア事業などの各事業の譲り受けについて基本合意に至ったと公表した。


ランキング


>>総合人気ランキング