【薬経連】「OTC類似薬保険適用除外」について日薬に提言書送付

【薬経連】「OTC類似薬保険適用除外」について日薬に提言書送付

【2025.03.11配信】保険薬局経営者連合会(薬経連)はこのほど、「OTC 類似薬の保険適用除外」に関する提言書を日本薬剤師会(日薬)等に送付した。日薬が同問題に対し、反対意見を表明していることへ提言をまとめたもの。「医療費の適正化、セルフメディケーションの推進、医療機関の負担軽減といった観点からも有益」とし、「速やかな制度改革を求めるとともに、適正な医療費配分による持続可能な医療制度の確立を強く提言する」としている。


 このほど、日本薬剤師会や都道府県薬剤師会長、政令指定都市薬剤師会会長あてに提言書を送付した。

 保険薬局経営者連合会会長の山村真一氏は、今回の送付に関して、「このようなテーマこそ、日本薬剤師会がリーダーシップを発揮し、主導的に議論を展開して欲しい」との思いからだとし、「今は社会の動きを背景に議論するには絶妙なタイミングであること」などを挙げている。
 なお、持続可能な医療制度の構築に薬剤師が貢献していく議論を促すことが提言の趣旨であり、「OTC類似薬の保険適用除外」を薬経連として、「一律実施を求めるものではない」こと、加えて「社会的弱者への十分な配慮を講じること」などは重要な視点であるとしている。

 提言書の内容は以下の通り。

■OTC 類似薬の保険適用除外に関する日本薬剤師会の反対意見への提言
一般社団法人保険薬局経営者連合会
会長 山村真一

1. はじめに
 現在、わが国の医療財政は深刻な課題を抱えており、その持続可能性を確保するためには、医療費の抜本的な適正化が急務になってきました。そのような状況の中、市販薬(OTC 医薬品)と成分や効能が類似する医療用医薬品(以下、OTC 類似薬)に対する公的医療保険の適用についても、見直しの議論が高まっています。本提言書では、薬剤師が医療費適正化に貢献し、社会保障というセーフティネットを維持し続けることに寄与する観点から、OTC 類似薬の保険適用除外は、その有益性と利点、そしてその必要性を考慮し、国民の健康増進と医療費適正化に資するものであると考え、賛成の意見を以下に提示いたします。

2. OTC 類似薬の保険適用除外の有益性

(1) 医療費の抜本的改革と財政負担軽減への貢献
 医療費の増加は国民皆保険制度の維持に深刻な影響を与えています。OTC 類似薬を医療用医薬品から保険適応を外すことは、医療費の適正化を図る上で重要な一歩となり、国民の健康意識を高め、セルフメディケーションを推進する好機と捉えることができます。軽度な症状については、薬剤師が関与し、患者自身が適切に対応できる環境を整備することになり、限られた医療資源の有効活用につながります。(その経済効果は数千億円と見込まれています。)

(2) セルフケアとセルフメディケーションの推進
 セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」(WHO の定義)であり、セルフメディケーションを推進していくことは、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを促進することはもちろん、医療費の適正化にもつながります。OTC 類似薬の保険適用を除外することで、国民が自立的な健康管理を実践する機会を提供することになり、疾病の予防や早期治療を推進することになります。このことにより医療機関への依存度が減少し、医療費の適正化につながることが期待できます。

(3) 医療資源の有効的な活用
 軽度な症状を OTC 類似薬で自己管理する患者が増えれば、医療機関を受診する機会が減少し、医師はより重症な患者の診療に専念できるようになり、医療機関の負担を軽減し、医療の質を高めることができます。特に医療資源が限られる地域では、適正な医療提供が可能になり、地域医療の質が向上することも期待されます。

(4) 薬剤師の役割と責任
 薬剤師は、患者に対して服薬指導だけではなく、健康相談や生活指導を通じて国民の健康増進に貢献する重要な存在です。OTC 類似薬が保険適応除外となることで、薬剤師の専門的役割が一層強化され、地域社会における薬剤師の存在価値が高まります。その結果、薬剤師の本来果たすべき役割が発揮され、健康寿命の延伸や生活習慣病予防に向けた貢献が期待されます。

3. 懸念点への考察

(1) 患者の経済的負担が増大
 患者が OTC 類似薬を入手するにあたり、経済的な負担軽減策(セルフメディケーション税制の活用による税制優遇措置や、医療費控除の対象とするなど)とセットで進めるようにします。またそれ以上に保険財政の逼迫による将来的な国民の自己負担増加を抑制する観点からも、軽症患者が自己負担することは社会全体の利益になる選択だと考えられます。

(2) 医療機関への受診控え
 軽度な症状に対する OTC 類似薬の利用が促進されても、もしも重症化の兆候がある場合には薬剤師が医療機関を受診勧奨することは今までと変わらず、むしろ、医療資源が本来必要な患者に集中するようになることで、医療機関による適切な医療提供が一層可能になります。

(3) 医薬品の適正使用が損なわれる
 複数の薬を服用している人や高齢者で基礎疾患を持つ人などに対して、薬剤師は日々の処方箋による調剤業務に加え、OTC 類似薬の販売においてもその専門性を生かし、今後 OTC 類似薬の販売の機会が増えることになれば、更に薬局での健康相談機能が強化され、医薬品の適正使用を支援する役割はむしろ拡大すると考えられます。

4. 結論
 OTC 類似薬の保険適用除外は、医療費の適正化、セルフメディケーションの推進、医療機関の負担軽減といった観点からも極めて有益であると考えられます。日本薬剤師会の懸念も、適切な制度設計と政策運用によって解消が可能であり、むしろOTC 類似薬の保険適用除外は国民全体にとって長期的な利益をもたらす施策といえます。
 したがって、OTC 類似薬の保険適用除外は、ジェネリック医薬品の使用促進、ポリファーマシーの解消に続く薬剤師の社会的役割を示すものとして、政府および関係機関に対し、速やかな制度改革を求めるとともに、適正な医療費配分による持続可能な医療制度の確立を強く提言いたします。

 薬経連としては、提言書では、医療費適正化、セルフメディケーションの推進、医療資源の有効活用、そして薬剤師の役割拡大といった観点から、将来的に到達すべき重要な目標の一つとして、OTC 類似薬の保険適用除外の有益性を論じたと総括。患者負担や適正使用に関する懸念についても考察を加え、適切な制度設計のもとで本施策を進めることが可能であることを示している。その上で、「薬剤師には、いかに多くの課題があろうとも、その実現を担う力があるはず」とし、「本提言が、現場での議論をさらに活性化させ、より良い医療の未来を築くための一つのきっかけとなることを願っている」としている。

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