【独自インタビュー】松本純氏(前衆議院議員)に聞く/トリプル改定、「消費税が上がった時以上の大議論巻き起こる可能性」

【独自インタビュー】松本純氏(前衆議院議員)に聞く/トリプル改定、「消費税が上がった時以上の大議論巻き起こる可能性」

【2023.09.14配信】昨年10月、自民党神奈川県連は松本純前衆議院議員を「自民党神奈川1区」(横浜市中区・磯子区・金沢区)の支部長に選出した。「1区支部長」は、次期衆院選挙で神奈川1区自民党公認候補の前提となるもの。薬剤師に関わる政策に広く・深く関わってきた同氏の復活に向けた薬剤師業界の期待には熱いものがある。不透明感の払拭できない医療・介護・障害者サービスのトリプル改定等への、薬剤師業界の強い危機感の裏返しといってもいいだろう。本稿では松本氏にインタビューした。


少子化対策と医療費

 「消費税が上がった時以来の大議論、いや、時代背景を考えるとそれ以上になるだろう」――。

 数々の改定に深く関わってきた松本氏の目から見ても、年末に迫ったトリプル改定はそう映る。
 “時代背景”の1つは、いうまでもなく少子化対策。安定的財源確保については、こども未来戦略方針(令和5年6月)によれば社会保険の賦課・徴収ルートを活用し2028年までに「支援金制度(仮称)」を構築することとし、詳細について年末に結論を出すとされている。ただ、そこに至るまでには「歳出改革等による財源確保」と「経済社会の基盤強化」が必要ともされている。医療費にどのような影響が出るのかは関係者が抱く懸念だ。
 松本氏は、「医療従事者の賃上げ要望が強い中ではプラス改定の流れではあるが、そんなに簡単ではない。しっかり動向を見ておく必要がある」と指摘する。ただ、松本氏は「少子化対策は絶対に必要」と指摘し、特に少子化は相対的な大学への修学の減少につながり、薬学・創薬の観点からすると、理系の学生の減少が起きた時に、「学術の水準を落とすことにもつながる」と懸念する。

少子化で「今の薬剤師数を維持する必要性の可否」も議論に

 改定の議論が厳しく、また見通しづらくなっているような環境下で、社会における薬剤師の立ち位置はどのように変化するのか。
 松本氏は、少子化問題は長いスパンでみると、人口が減り、今の薬剤師数が維持されることが必要かどうかの議論が必然的に出てくると予想する。「少子化は国の形を変えてしまうことにつながりかねない。薬剤師は関心を持ち続けなければいけない」(松本氏)。薬局数についても「皆が過不足なく医療を受けられる、医薬品を入手できる環境をどうつくるか」の視点が重要になってくるとした。

 調剤助手を含めて各国は工夫をしている。「薬剤師たる者は何をすべきなのかというようなことがこれからさらに議論されてくる可能性は高い」とし、「スキルのある薬剤師は残るが、そうでない人は遅れてきてしまうことが生じないとも限らない」とする。病院薬剤師と薬局薬剤師の間の臨床経験の違いが議論されているが、両者の臨床経験の「均衡化が必要かどうかも議論が出てくる」とした。
 
 薬学を学んだ薬剤師が、「創薬はほかに任せて、われわれ(薬局薬剤師)は調剤だけをします、というわけにはいかないでしょう」と指摘し、今後、薬剤師の働く場や関与が薬局に限定されず広がっていくべきだと指摘。振り返ると、分業元年といわれる昭和49年以降、とりわけ平成に入る頃から急速に薬学生の就職先として薬局が増加したが、それは「幅が狭まっている」(松本氏)と言い換えることもできる。「新型コロナ感染症パンデミックの間、日本の創薬能力が下がりワクチン開発も出遅れていると指摘が出た。創薬力を高めていく必要がある」(松本氏)。創薬が日本を支える1つの大きな産業になり得るというのは松本氏の信念でもある。

検証し次のパンデミックに備える

 前回の衆議院選挙では松本氏は無所属で出馬、次点で落選となった。しかし、現在は自民党に復党。公認となれば選挙情勢もだいぶ変わってくるだろう。
 地域住民に対しても、医療・福祉政策の専門家として、またいつ起こるか分からないパンデミック下でも安心・安全を届ける体制づくりへ尽力する姿勢を強調している。
 そのためには国全体を見通したワクチン製造技術の向上や医療従事者の一致結束を支える体制も必要となる。

 松本氏は次のように語る。
「この3年間、パンデミックにいかに対応するかということで地域の皆さんが大変苦しんできたけれども、神奈川県・横浜市などからも協力を得て、地域の皆さんの命を守るために我々は何をすべきか、医療従事者が一致結束して取り組んだ結果が出ていると感じている。今、2類相当から5類へ移行し、状況が変わったけれどもパンデミックはいつあるかわからない。それに対してこれまでを検証し、足りなかったこと、もっと配慮すべきこと、反省点も含めて次のパンデミックに備え、地域の皆さんに安心してもらえる体制をつくっていくことが大事だと思っている。医療従事者の皆さんは懸命に頑張っておられる。これからも信頼できる医療提供体制を維持すること、またその根幹となっている国民皆保険制度を堅持していきたい」。

昨年10月、自民党神奈川県連から「自民党神奈川1区」(横浜市中区・磯子区・金沢区)の支部長に選出された松本純氏(前衆議院議員)。「1区支部長」は、次期衆院選挙で神奈川1区自民党公認候補の前提となるもの。自身も薬剤師であるだけでなく、医療・医薬品分野だけに限らない幅広い人脈を自身で積み上げ、薬剤師に関わる政策に広く・深く関わってきた同氏の復活に向けた薬剤師業界の期待には熱いものがある



【編集部より】
改定や薬剤師政策への松本氏の見解は会員制媒体「ドラビズforPharmacy」で詳報。
https://www.dgs-on-line.com/boards/5

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