優位性は手間のかからない「自動化」と「リアルタイム」の情報把握
MSNWが開発した調剤実績情報を地域薬局間で共有できるシステムが「LINCLEちいき版」だ。「どの薬が」「どの薬局で」「いつ調剤されたか」がすぐに探せるようになっている。これまで、医薬品供給の不安に直面する中、薬局同士がスムーズに医薬品を融通できるよう支援することを主な目的として利用が進んできた。すでに5つほどの地域薬剤師会で導入実績がある。
具体的な仕組みは、レセプトコンピューター情報を基に、サービスを利用している薬局の調剤実績情報を共有できるというもの。同システムが持つ最大の優位性は手間のかからない情報のアップロードの「自動化」と、「リアルタイム」の情報把握だ。医薬品情報は薬局が請求に使うレセプト情報を基に月に1度、薬局側で手動による情報アップロードが必要だったり、それにより情報の更新頻度が月に1度程度にとどまることがあるが、「LINCLEちいき版」ではアップローダーをインストールするだけで以降の情報のデータ更新は自動。薬局現場に手間をかけさせない仕様となっている。
そのため、情報頻度も30分に1回ほどと細やか。すなわち、参加薬局が検索できる情報は30分前の情報に更新されており、ほぼ“リアルタイム”更新といってよいほどの鮮度だ。
導入にあたっての準備が少ないことも特徴。①自薬局へのレセコンベンダーへ出力設定作業を依頼。②ファイルアップローダのインストール、③「LINCLEちいき版」を見るパソコンへGoogle Chromeをインストールという、基本的にはわずか3ステップで利用できるようになる。
個人情報や点数情報等を「薬局内で」削除する仕組み
MSNWはいうまでもなく、「なの花薬局」を運営する薬局企業でもあり、医薬品ネットワーク事業も展開している。そのため、薬局から見れば「同業他社」という存在でもあり、加盟店以外の薬局から見れば「これを機に加盟を働きかける目的ではないか」「システムを介して情報を収集されるのではないか」といった一部に警戒感を示す声もある。
そのため、すでに導入した地域薬剤師会の開発過程では、「薬局から持ち出される情報を最低限にしてほしい」といった要望が出た。こうした要望に応える形で、「LINCLEちいき版」では、個人情報や点数情報等を「薬局内で」削除する仕組みとした。そのため、連携される調剤実績データは、必要最低限のものに限定されており、薬局外に情報が持ち出されることがない。
また、MSNWへの“懸念点”は裏を返すと、“安心感”とも表裏一体のものともいえる。MSNWは薬局の同業だからこそ、薬局運営に精通しており、医薬品ネットワーク事業でも薬局と接点があるからこそ、「LINCLEちいき版」だけのビジネスに限らず、薬局との信頼関係を崩すことができないというバックボーンがあるとも言い換えることができる。導入済みのある地域薬剤師会の関係者は、「目的は地域のため。地域のためになるものであれば、言葉は悪いが、良いものは利用するだけだ」と割り切る。
都道府県薬剤師会においては厚労省予算事業への申請準備に追われているところもあり、MSNWでは予算申請にも対応する料金設定も提案している。

なぜMSNWが取り組んでいるのか
当のMSNWは「LINCLEちいき版」を展開する理由について、「地域医療に貢献するという企業価値を確立したい」と語る。これまでの地域薬剤師会との開発においても採算は度外視して開発に投資してきた。
個々の薬局の経営支援は今までも掲げてきた理念だが、個々の薬局経営自体が地域の取り組みと密接に関係してくる中、地域に貢献できる取り組みへとMSNWの領域が拡大してきていることも自然だ。MSNWでは今後も、「LINCLEちいき版」の展開に限らず、地域の課題に耳を傾け、新事業を手掛けていく方針だ。
「リンクルちいき版」について詳細・問い合わせは下記URLからも確認できる

「迅速に対応させていただきますのでぜひお問い合わせください」と語る担当者の飯盛浩幸氏
(株式会社メディカルシステムネットワーク 情報システム部 次長)