「オンラインだけでは成しえない地域薬局・薬剤師会の在り方を示していく」
会長演述は以下の通り(談)。
日本薬剤師会第106回定時総会の開会にあたり、一言申し述べさせて頂きます。
本日の総会は、令和6年度の会務及び事業報告を申し上げるとともに、令和6年度の決算案の審議をいただく総会になります。また、公益法人法改正に伴う役員選挙規程等の議案と、会員拡大に関連する議案についても審議をいただく総会となります。
代議員の皆様におかれましては、本総会が日本薬剤師会の最高議決機関であると同時に、本会が令和6年度にどのような事業を遂行し、国民や患者のために薬剤師免許を使うものの統括団体として内外に向けて実施してまいりました事業と決算を確認する機会であることを認識いただき、実りある議論と慎重かつ厳正な審議をお願いする次第です。
令和6年度は診療報酬・介護報酬・障害者福祉サービスのトリプル改定が行われ、4月1日に薬価基準、6月1日に診療報酬と介護報酬(医療系サービス)が改定されました。令和6年度診療報酬改定は、本体分として+0.88%、かつ、医科・歯科・調剤の公平な配分比率も堅持されました。三師会で主張してきた医療関係従事者の賃上げ対応は、必ずしも十分な財源内容とは言えませんでしたが、一定程度理解していただけたものと理解しています。
すでに令和8年度診療報酬改定に向けて新たな議論が始まりつつあり、引き続き、物価高・賃上げに対応した適切な財源確保を政府に要望してまいります。また、7年連続で実施された薬価改定の影響を受け、さらには未だ改善されない医薬品の安定供給問題が続いておりますが、患者さんの薬物治療を維持・確保するべく必死に取り組んでいる現場の薬剤師・薬局のため、本会としては、薬価基準の中間年改定の「廃止」とともに、長期化する医薬品の供給不足の早期改善について、引き続き主張してまいります。
さて、5月14日には第 217回国会において、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、21日に公布されました。
今回の改正では、「薬局開設者は、関係行政機関との連携等により、医療を受けるものに必要な薬剤及び医薬品の安定的な供給を図る」(第1条の5)という、すなわち、関係行政機関と薬局が連携して地域に必要な医薬品を安定供給することが必要という旨の規定が明確化されました。これは、本会がこれまで主張してきた「地域医薬品提供計画」(仮)の理念の一端が反映されたものと受け止めています。薬局開設者には、自薬局として医薬品の安定供給にとどまらず、関係行政等と連携して「地域」の医薬品提供体制を構築することが求められ、行政側にも地域薬剤師会と連携・対応していくことが必要になってきます。
このため日本薬剤師会では、「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」を策定し、また、厚生労働省が本年度予算事業として3億円余りの予算規模の薬局機能高度化事業を実施することで、地域の薬局・薬剤師会の活動強化を図っていくことを予定しています。これは、地域で生活する住民の方々からの薬局・薬剤師会活動への期待にどう応えていくか、どのように「見える化」していくか、これからの地域薬剤師会のあるべき姿を方向付ける最後の機会と言っても過言ではない取組みであると受け止めています。
地域の薬剤師会が自分たちの実態を把握し、今後の地域における課題の抽出とその対策を立案・実行するとともに、その情報を他の医療・介護関係職種の方々や地域の行政担当者と共有し、医薬品提供というオンラインだけでは成しえない地域薬局・薬剤師会の在り方を示していくことと考えています。
急速な少子化や過疎化が進む人口減少社会において、地域の医療資源たる薬局・薬剤師にとって正念場であるとともに、大きなチャンスでもあることを念頭に置いて、積極的にご対応いただくことをお願いいたします。
一方で、毎年1万人弱の新たな薬剤師が生まれている状況下においても、会員数の減少が続いています。現在、各地域で薬剤師会役員等が中心となり行っている薬剤師を対象とした施策とともに、薬剤師の職能団体として永続的な活動を進めていくためには、薬学生を含む若年層を対象とした加入促進と、地域薬剤師会の活動範囲を超えた勤務状況下にある大手チェーン薬局などに勤務されている薬剤師の方々への取組みは非常に重要です。
新たな視点での会員増強策を検討し、都道府県薬剤師会・地域薬剤師会の協力のもと、会運営の在り方も含めて組織強化に取り組むため、本会は本年6月に特別委員会を設置しました。今後議論を深め、年度内に一定の方向性を得ることを目標としています。
昨年の会長就任から一年が経過しました。先輩諸氏や同僚、学生を含めた後輩の方々、薬剤師会関係者、行政職や国会議員をはじめ、多くの方々にご指導やご示唆をいただきながら務めてまいりました。事務局職員も含め、改めて感謝を申し上げます。
出来たこと出来ないことが混在しておりますが、引き続き会員諸氏のご理解とご協力をいただきながら、会務を進めてまいります。