「処方箋集中率と地域貢献の関連性に関する緊急調査」開始
都薬は「処方箋集中率と地域貢献の関連性に関する緊急調査」を12月3日から開始したことを報告。
中医協において来年度調剤報酬改定の議論が佳境を迎えている中、都市部にある特定の医療機関からの処方箋集中率が高い薬局については運営が効率的であり、小規模乱立の状況も含め、適正化の必要性が指摘されている。しかし、都薬としては、都市部にあり集中率が高い薬局であっても地域貢献をしている薬局や地域医療を支えている薬局もあり、それだけをもって判断することはできないとの考え。
そのため、処方箋集中率にかかわらず会員薬局が日常的に担っている地域活動や連携の実績を把握し、地域医療への理解と評価の促進につなげることを目的として、緊急調査を実施するもの。
都薬会長の髙橋正夫氏は、アンケートについて、「タイトルを見れば、なぜ(このアンケートを)やるか分かると思うが、中医協で“特別区”という名前が出てきて、東京はえらいことになると思って。すぐにアンケートを作ってもらった」と説明。
「中医協の中で小規模乱立で、地域支援体制加算などの加算がなく地域の中で貢献がないところが多いから、そういところは基本料1から外してもいいのではないか、そんなことをおっしゃられているのかというところ。特別区はと大阪と東京が該当するが大阪府薬は会見で“絶対に許さない”と表明されており、都薬も同じ考えだ」と反対姿勢を示した。
加えて髙橋会長は、「特別区とそれ以外が、どういうことで出てきたのか理解できないところがある。例えば世田谷区と三鷹市でどういう差があるのか」とし、それぞれの地域でさまざまな状況があるとの考えを示した。「(薬剤師)人数の少ない薬局が貢献していないようなことも出ていたが、地域で貢献していた薬局のところに医療機関が出てきて、対応していることもある」と違和感を表明した。
算定や届け出によらない地域への貢献業務を調査
アンケートは12月3日水曜から開始し、締め切りは翌週の12月10日水曜としている。
アンケートでは、地域支援体制加算やかかりつけ薬剤師指導料などの算定状況のほか、算定や届け出によらず、日常業務で対応している下記のような地域への貢献業務も聞いている。
・時間外や休日の対応
・麻薬の調剤
・在宅業務の実施
・小児在宅の実施
・服薬情報提供書の発言
・学校薬剤師(勤務者含む)の委嘱
・コロナ検査キットや妊娠検査薬等の販売・相談
・地域の多職種との連携会議などへの参加
・近隣基幹病院等との薬・薬連携会議や協議会への参加
・休日診療所等(休日輪番体制を含む)への協力
・地域医療提供体制・地域医薬品提供体制の把握と整備(薬局リスト掲載や医薬品在庫の共有など)への協力
・災害時用備蓄医薬品(ランニングストックなど)への協力
・地域の防災訓練等への参加
・行政施策(クールスポットなど)への協力
・地域のお薬相談会への参加
・薬局での相談対応や他機関(地域包括支援センターや福祉事務所、保健所等)への紹介
・地域住民への医薬品適正使用に関する啓発活動(出前講座や広報誌等への執筆等)
・使用済み注射針の回収
速報値ではエリアによる地域支援体制加算や集中率で「大きな差ない」
アンケートはまだ締め切っていないため結果は出ていないが、開始3日で600の薬局から回答が寄せられたと説明。
「詳細はこれから解析することになる」としつつも、集中率や地域支援体制加算の状況について、特別区に該当する23区の薬局とそうではない薬局のデータにおいて大きな差がないとの結果が速報値として見られるとした。
「エリアで差があるということは、それは違うのではないかと、今の段階ではそう見えている。今回問題になっている85%という集中率があるが、85%未満の薬局は(回答薬局)全体では82.5%で、特別区だけで見ると84.9%。そんなに差がない。地域支援体制加算の算定状況では全体で63%、23区で64.1%。そういうところも差があると、今の段階では見えない」(髙橋会長)と速報値を解説した。
「小さい薬局で一生懸命やっているところは切り捨てる考えでいくのか」
髙橋会長は、前回の改定では賃上げのために調剤基本料に加点されたことにも言及。それでも他産業に比べて「足りていない」と訴えている中で、基本料である調剤基本料1と引き下げる話が出ていることに憤りを表明。「(基本料を)下げてくるということは、小さい薬局で一生懸命やっているところは切り捨てる考えでいくのか」(髙橋会長)と述べた。
「地域で地道にやっている薬局は、そこに生活圏があったり、自分の住まいも一緒にあること、近くに住んでいることが多いというデータもある。何かあった時に出動できる体制と言える。特に東京は昼の人口の問題や海外からのインバウンドの問題などさまざまなところで対応できる体制をとっておかなければいけない。単に“数が多いから”ということではない。それについても逆行している」(髙橋会長)とした。
今後、都薬としては、アンケートで得られたデータを日本薬剤師会を通して対応に活用してもらいたい考え。