【オンライン資格確認】薬局は3月までに申し込まないと10万円損する可能性

【オンライン資格確認】薬局は3月までに申し込まないと10万円損する可能性

【2021.01.27配信】3月から薬局に来た患者がマイナンバーカードを提示する可能性がある。マイナンバーカードが健康保険証としても使えるようになるからだ。その時、薬局は「当店では取り扱いできません…」と断るのだろうか? もちろん、代わりに従来の健康保険証や処方箋を提示してもらえばよい話ではあるが、「遅れている薬局」と思われる可能性はある。利用する薬局は申し込みを早めにしておくに越したことはない。3月末までに申し込まなければ助成の優遇も受けられず10万円程度損をする可能性もある。助成の多寡や患者からの印象以上に、今、薬局に問われているのは患者一人一人の情報を生かして健康づくりにつなげようという長期ビジョンとその意欲ではないだろうか。


目標6割に遠く薬局の申請は3割強

 「オンライン資格確認」という言葉を聞いたことがない薬局薬剤師はもはやいないであろう。

 しかし、申し込み率は2020年11月時点で3割強と、厚生労働省が目標とする「3月までに6割」には遠い状況だ。新型コロナウイルス感染症への対応もあり、優先事項が多い中、オンライン資格確認のカードリーダーの申し込みは後回しになってしまっている状況は想像に難くない。

 ただ、オンライン資格確認は未来の医療・健康情報を生かした健康づくりの実現に向けた“基盤”。申し込み率は「薬局は手にしようとしている情報を積極的に生かそうとしているのか」の一つの指標として社会から評価される可能性もあることを念頭に置いておくべきではないだろうか。

 より早い時期の申し込み、さらにはマイナンバーカードへの健康保険証利用の推進役など、社会の新たな基盤構築に能動的に協力する姿を見せておく必要がある。それが社会から頼れる存在との認識にもつながるものであり、さらにこの“基盤”は翻って、薬局に価値を提供するものになってくれるからだ。

個人単位で情報が把握できる利点

 薬局への価値提供とは何か。

 健診情報や薬剤情報が共有されることになったことは知られているが、厚生労働省保険局保険データ企画室長の大竹雄二氏は、当メディアの取材に応じ、「これまで『ICTを使ってもっといろいろなことができるのでは』というお声をいただいてきたがオンライン資格確認がそういったものの基盤となる。服薬情報や健診情報の共有、電子処方箋への活用に限らず、パーソナルヘルスレコードなどとの連携を含めて今後、アイデアを出していただくことになるのではないか」と話している。

 オンライン資格確認のもたらす変化は、健診情報や学校健診など、それぞれの仕組みごとに保管されていた情報が一人一人の個人単位で情報が把握できるようになっていくことだ。そして、それらが医療関係者同士でネットワーク化されるメリットは大きい。医療という注意を要する情報だけに、これまで共有しづらいという課題があった。

 加えていうならば、オンライン資格確認の基盤があるだけでは、価値を大きくすることはできず、使う薬局側の提案次第でその価値は変化していくと考えられる。
 
 例えば、薬局の中には、「受診のあとに継続して受診されているか」の確認やそれに基づいた受診に導く支援などが重要だとの声がある。
 
 しかし、オンライン資格確認は、現状では薬局に患者が来た、その時点での情報しか確認できず、薬局がその後の情報を把握できるのは、次回来局時だけである。

 これでは、「受診が必要であるのに受診していないかもしれない」患者のスクリーニングは不可能だ。こうした“取りこぼされない人”へのサービスを拡充するには、薬局や医療機関だけでなく市町村や保険者との連携が必要になるだろう。そして、「こうしたことができる」といった提案は薬局からの能動的な姿勢が必要になる。

 多彩な情報が見られるようになるオンライン資格確認システムではあるが、時間軸としては“点”の情報である側面はあり、“点”を“線”にしていくには、やはり服薬フォローなどの薬局の働きが必要となる。

 前出・厚労省の大竹氏も「医療に限らず、今後は待ちではなく、プッシュ型の通知をしていくことが重要になるだろう。それも全体に対してではなく個々人に対して、それぞれの属性や状況を踏まえてそういったことをできるのも個人を把握しているからこそできることだろう」と感触を示している。

 目指す世界観は、「医療機関などが把握している情報」や「個人が収集するパーソナルヘルスレコード」に、「専門家ならではの分析と助言」を加えていくことだろう。

薬局の自己負担はゼロの見通し

 なお、従来の健康保険証でもオンライン資格確認はできるが、マイナンバーカード利用の場合は、患者情報が自動入力されるメリットがあるほか、薬剤情報等の医療情報の閲覧については、厳格な本人確認のためにマイナンバーカードが必要になっている。

 患者の方が3月にマイナンバーカードを健康保険証代わりに提示する可能性がある以上、カードリーダーを備えておいた方がよい。ただ、カードリーダーは原則、受注生産のため、マイナンバーカードを提示する患者が増えてから慌てて申請してもすぐに納品されない可能性がある。

 今後の潮流である以上、繰り返しになるが、申請は早ければ早い越したことはない。

 経費に関しても、厚生労働省は昨年の12月に「加速化プラン」を公表し、これまでは補助を経費の4分の3としていたところ(大手チェーン以外の薬局)、2021年3月末までの申請を条件に全額補助とした。上限額は42万9000円のため、フルで経費がかかったことを想定すると、3月末までに申請の場合は42万9000円補助のところ、それ以外は32万1750円の補助になるので、その差額、10万7250円の“損”となる可能性がある。

 もちろん上限金額として42万9000円の設定はあるが、厚生労働省では「基本的に導入にあたり上限額を超えることはないと理解している」としている。つまり、薬局にとっては、自己負担なく導入できることを想定している。

 カードリーダー1台は無償であり、補助対象となるのはカードリーダー以外の導入にあたって生じる可能性のある端末(PC)の購入やネットワーク環境の整備、レセコンの改修などを想定している。厚生労働省ではこれらの生じるであろう経費についてベンダーなどからもヒアリングを行い、上限額の範囲内でおさまることを確認しているようだ。補助金は後払いにはなる。

 厚生労働省では2021年3月時点で申請を6割を目標とするほか、2年後の2023年3月末までにおおむね全ての医療機関・薬局での導入を目標としている。

 また、厚生労働省では、マイナンバーカードの健康保険証利用申込サポートを薬局に率先して協力してほしいとしている。患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、「生涯で一度だけ」申請登録が必要になる。厚生労働省では患者向けに登録ガイドブックを用意しており、こうした資料の薬局での活用を要請している。

 オンライン資格確認への申請は下記ポータルサイトから申し込める。

https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/

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