【中医協】協会けんぽと健保連、「後発薬加算の基準を最低80%に」提案

【中医協】協会けんぽと健保連、「後発薬加算の基準を最低80%に」提案

【2021.12.08配信】厚生労働省は12月8日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。その中で後発医薬品調剤体制加算のあり方が取り上げられた。事務局は「新規に大型の後発医薬品が収載された直後は、一時的に使用割合が低下することがあるため、使用割合を維持するだけでも一定の医療費適正効果があると考えられる」とのデータを示した。後発医薬品の供給が不安定になっている状況も示し、薬局業務の負担増にしたがったあり方が必要との方向を示したが、支払い側は現状から推進への適正化効果額と加算に支払っている額に触れ、加算の厳格化や減算の対象拡大を提案した。


 同日の中医協で事務局は、「新規に大型の後発医薬品が収載された直後は、一時的に使用割合が低下することがあるため、使用割合を維持するだけでも一定の医療費適正効果があると考えられる」とのデータを示した。さらに後発医薬品の不適切事例や薬局での業務負担の現状に関するデータや、年平均で1600億円の医療費適正効果があるとのデータも示した。

 日本医師会常任理事の城守国斗氏は、「後発医薬品推進には一般名処方と後発医薬品体制加算が鍵」との考えを示し、一般名処方に関して算定率は上昇しているものの50%程度にとどまっているとし、「引き続きの評価が必要」と述べた。「後発医薬品メーカーの不適正事案によって銘柄処方をした場合に一般名処方の加算が算定できなくなってしまうことは不合理であるため改善が必要」と述べた。
 後発医薬品調剤体制加算については、「出荷停止や出荷調整が頻発しており、最近では物流センターでの火災もあり安定供給の確保に解決の見通しが立っていない。メーカーや卸からの情報収集などこれまで以上の労力が生じている」とし、「目標達成のためには後発医薬品の安定確保へ実効性ある取り組みのほか、引き続きの評価が必要ではないか」と述べた。

 日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は「後発医薬品推進は国の政策や現場の努力、とくに薬剤師の努力によって進んできたと自負している。相次ぐ問題や物流センターの火災によって後発医薬品の出荷調整などは悪化している状況だ。薬局の負担は非常に重くなっている。安定確保の回復が大前提。推進という観点ではメリハリのある評価はあり得るが、今は大きく変更すべきではないと考える」と述べた。

 こうした意見に対し、全国健康保険協会(協会けんぽ)理事長の安藤伸樹氏は後発医薬品調剤体制加算の厳格化を求める発言をした。
 安藤氏は「加算・減算のあり方を検討すべき時期だ」と述べた。同協会の現状では全体では使用率は80%に達しているが、80%に達していない支部が20ほどあると説明し、「20の支部が80%に達した場合の適正化額は60億円だが、一方で加算として支払っているのは325億円になる。すでに使用割合が高くなり、患者にも後発医薬品を選ぶことが考えられる状況を踏まえると段階的に廃止する時期にきていると思う」と述べた。
 その上で具体的には使用割合が80%より低い実績での加算を廃止することや減算の対象を拡大すること、歯科を含めて医療機関への減算規定を創設することなどを提案した。さらに「段階的に廃止していくことを検討すべきではないかと考えている」と述べた。

 健康保険組合連合会理事の松本真人氏も、「国の目標に向かっていくためには加算の基準値は最低でも80%にして引き上げるべき。また薬局の減算基準を引き上げるとともに医療機関についても減算の仕組みを検討してはいかがか。さらに同等の効果が得られるのであれば新薬より後発薬を使用する合理性はあるのでカットオフ値の引き上げを検討してもいいのでは」と述べた。

 こうした議論の中、日本薬剤師会の有澤氏は再び発言を求め、「減算、ペナルティのような発言がされているが、これまでの努力は何だったのか。現場の意欲を高める施策をお願いしたい。メリハリのある評価は考えられるが、今は大きく変更をすべきではないと改めて意見を述べさせていただく」とした。

編集部コメント/協会けんぽと健保連に薬局現場の窮状は伝わっていないのか?

 後発医薬品促進の役割を終えたのであれば、加算の厳格化や段階的な廃止があることに心構えをしていた薬局関係者は少なくない。
 しかし、「今は待ってほしい」というのが薬局関係者の偽らざる心境だろう。

 不適切事案を発端に後発医薬品の供給は不安定になっており、現状の後発医薬品使用割合の維持だけでも従来の労力の数倍かかっている薬局が少なくない。「加算の増額を求めたい」、あるいは「減算や厳格化はもってのほか」というのが多くの薬局の心情ではないか。

 足下の後発医薬品の使用割合が維持されているとしたら、薬局の業務負担の元に成り立っている。保険者と薬局はこれまで後発医薬品使用を推進してきたパートナーではないか。表面の数字だけ見て水面下の努力に目を向けないとしたら、パートナーとして適切な振る舞いだろうか。

 また、一歩引いて、今後の行方を予想すると、医師会や事務局も現在の薬局の窮状には理解を示しており、ゆるやかな改善になるのではないか。支払い側の意見もあるため、まったくの据え置きは難しくとも若干の指標見直しで決着する見込みは大きいのではないだろうか。

この記事のライター

関連する投稿


【厚労省】カットオフ値“算出リスト”改定/令和7年4月調剤分から適用可

【厚労省】カットオフ値“算出リスト”改定/令和7年4月調剤分から適用可

【2025.05.26配信】厚生労働省は5月26日、カットオフ値の算出に含める品目リストを改定した。当該リストは令和7年4月調剤分から1月単位で適用可能。後発医薬品調剤体制加算算定の要件であるカットオフ値をめぐっては、令和7年度薬価改定で多数の品目で薬価の下支え措置が講じられたため、算定できない薬局が生じているとの指摘があった。


【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、物価上昇および賃上げ分を含めたプラス改定を求めている。


【日本保険薬局協会】敷地内薬局基本料の変更求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】敷地内薬局基本料の変更求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、いわゆる敷地内薬局を対象とした基本料である「特別調剤基本料A」に設けられている「7種類以上の内服薬を調剤した場合には薬剤料が90/100 に減算」となる報酬体系を撤廃することを求めている。


【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【2025.04.23配信】厚生労働省は4月23日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、後発医薬品調剤体制加算の要件である「カットオフ値」が急減している店舗があることを説明し、問題視。対応を求めた。


【後発薬加算】除外リスト、カットオフ値リスト更新/4月16日から適用/後発薬有無情報も更新

【後発薬加算】除外リスト、カットオフ値リスト更新/4月16日から適用/後発薬有無情報も更新

【2025.04.16配信】厚生労働省は4月15日、診療報酬における加算等の算定対象から除外する品目の一覧、及びカットオフ値の算出に含める品目リスト、その他 (各先発品の後発医薬品の有無に関する情報)リストを更新した。4月16日から適用となる。


最新の投稿


【販売中止】「フルナーゼ点鼻液」/グラクソ・スミスクライン

【販売中止】「フルナーゼ点鼻液」/グラクソ・スミスクライン

【2025.06.16配信】グラクソ・スミスクラインは6月16日、同社が販売する「フルナーゼ点鼻液」について、年内を目途に販売を中止することを公表した。


【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【2025.06.15配信】ヘルスケア卸大手の大木ヘルスケアホールディングスは6月11日に、事業部説明会を開催した。来る6月17日(火)~6月18日(水)にTRC 東京流通センターで開く「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会2025 年 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」の事前説明会の位置付け。OTC医薬品に関しては、“推し活”市場の拡大を背景に、“推し活”をきっかけに需要に気付きを与える提案を実施することを説明した。


【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【2025.06.13配信】政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、いわゆる骨太方針を閣議決定した。医療・介護に関連しては、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と記載した。これまでは、社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針がとられてきた。薬剤師で参議院議員の神谷政幸氏はXで「税収増を踏まえた経営の安定化や確実な賃上げに繋がる対応がついに反映」と投稿。医療介護業界の声が届いたとの考えを示唆した。


【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【2025.06.12配信】奈良県薬剤師会(後岡伸爾会長)は、「健康ハートの日 2025」に協賛する。


【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。