同日の中医協で事務局は、「新規に大型の後発医薬品が収載された直後は、一時的に使用割合が低下することがあるため、使用割合を維持するだけでも一定の医療費適正効果があると考えられる」とのデータを示した。さらに後発医薬品の不適切事例や薬局での業務負担の現状に関するデータや、年平均で1600億円の医療費適正効果があるとのデータも示した。
日本医師会常任理事の城守国斗氏は、「後発医薬品推進には一般名処方と後発医薬品体制加算が鍵」との考えを示し、一般名処方に関して算定率は上昇しているものの50%程度にとどまっているとし、「引き続きの評価が必要」と述べた。「後発医薬品メーカーの不適正事案によって銘柄処方をした場合に一般名処方の加算が算定できなくなってしまうことは不合理であるため改善が必要」と述べた。
後発医薬品調剤体制加算については、「出荷停止や出荷調整が頻発しており、最近では物流センターでの火災もあり安定供給の確保に解決の見通しが立っていない。メーカーや卸からの情報収集などこれまで以上の労力が生じている」とし、「目標達成のためには後発医薬品の安定確保へ実効性ある取り組みのほか、引き続きの評価が必要ではないか」と述べた。
日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は「後発医薬品推進は国の政策や現場の努力、とくに薬剤師の努力によって進んできたと自負している。相次ぐ問題や物流センターの火災によって後発医薬品の出荷調整などは悪化している状況だ。薬局の負担は非常に重くなっている。安定確保の回復が大前提。推進という観点ではメリハリのある評価はあり得るが、今は大きく変更すべきではないと考える」と述べた。
こうした意見に対し、全国健康保険協会(協会けんぽ)理事長の安藤伸樹氏は後発医薬品調剤体制加算の厳格化を求める発言をした。
安藤氏は「加算・減算のあり方を検討すべき時期だ」と述べた。同協会の現状では全体では使用率は80%に達しているが、80%に達していない支部が20ほどあると説明し、「20の支部が80%に達した場合の適正化額は60億円だが、一方で加算として支払っているのは325億円になる。すでに使用割合が高くなり、患者にも後発医薬品を選ぶことが考えられる状況を踏まえると段階的に廃止する時期にきていると思う」と述べた。
その上で具体的には使用割合が80%より低い実績での加算を廃止することや減算の対象を拡大すること、歯科を含めて医療機関への減算規定を創設することなどを提案した。さらに「段階的に廃止していくことを検討すべきではないかと考えている」と述べた。
健康保険組合連合会理事の松本真人氏も、「国の目標に向かっていくためには加算の基準値は最低でも80%にして引き上げるべき。また薬局の減算基準を引き上げるとともに医療機関についても減算の仕組みを検討してはいかがか。さらに同等の効果が得られるのであれば新薬より後発薬を使用する合理性はあるのでカットオフ値の引き上げを検討してもいいのでは」と述べた。
こうした議論の中、日本薬剤師会の有澤氏は再び発言を求め、「減算、ペナルティのような発言がされているが、これまでの努力は何だったのか。現場の意欲を高める施策をお願いしたい。メリハリのある評価は考えられるが、今は大きく変更をすべきではないと改めて意見を述べさせていただく」とした。
編集部コメント/協会けんぽと健保連に薬局現場の窮状は伝わっていないのか?
後発医薬品促進の役割を終えたのであれば、加算の厳格化や段階的な廃止があることに心構えをしていた薬局関係者は少なくない。
しかし、「今は待ってほしい」というのが薬局関係者の偽らざる心境だろう。
不適切事案を発端に後発医薬品の供給は不安定になっており、現状の後発医薬品使用割合の維持だけでも従来の労力の数倍かかっている薬局が少なくない。「加算の増額を求めたい」、あるいは「減算や厳格化はもってのほか」というのが多くの薬局の心情ではないか。
足下の後発医薬品の使用割合が維持されているとしたら、薬局の業務負担の元に成り立っている。保険者と薬局はこれまで後発医薬品使用を推進してきたパートナーではないか。表面の数字だけ見て水面下の努力に目を向けないとしたら、パートナーとして適切な振る舞いだろうか。
また、一歩引いて、今後の行方を予想すると、医師会や事務局も現在の薬局の窮状には理解を示しており、ゆるやかな改善になるのではないか。支払い側の意見もあるため、まったくの据え置きは難しくとも若干の指標見直しで決着する見込みは大きいのではないだろうか。