【薬局における後発薬の流通実態調査】「供給問題で調剤業務に影響経験」65%/東京都薬剤師会調べ

【薬局における後発薬の流通実態調査】「供給問題で調剤業務に影響経験」65%/東京都薬剤師会調べ

【2021.06.19配信】東京都薬剤師会は会員の薬剤師に対し、「後発医薬品に関する流通及び対応状況に関する調査」を実施している。6月17日までに回答数が1000件に達したことを機に途中経過を集計し、公表した。その結果、「納品が滞り、調剤業務に影響が出る場合がある」との回答は65%あった。


「希望数通りに納品」はわずか1%

 2月に発覚した睡眠薬混入事件を皮切りに、製造販売業者の一連の不祥事が起こり、その不祥事に係る行政処分として小林化工に業務停止命令が出されたほか、日医工にも業務停止命令が通達されている。小林化工の虚偽申請に関連しては12品目が取り消しになっている。
 こうした結果、後発薬への患者からの不安のほか、相次ぐ製品回収や操業停止による製品の流通不足、出荷調整に伴う代替後発薬の入手困難など、薬局においては患者への事象説明のほか、選定・入手に時間を費やす事態となっている。
 
 こうしたことから、東京都薬剤師会は6月11日から「後発医薬品に関する流通及び対応状況に関する調査」を実施。6月18日時点で回答数が1000名となったことを受け、途中経過を集計し公表した。

 自局で採用している後発医薬品について、「現在の卸の納入状況」については、「希望した後発医薬品が発注数通りに納品されている」との回答はわずか1%。
 「希望した発注数通りではないが、調剤業務に影響が出ない範囲で納入されている」が17%。
 「納品が滞り、調剤業務に支障が出る場合がある」との回答が65%と過半だった。
 「製品が流通していないため発注ができない場合が多くある」との回答も17%あった。

「販売実績を理由にした納品不可」1000人中348人が経験

 納品・発注できないことに対する卸からの説明内容については、納品や発注に支障があるとした人のうち、「卸に在庫はあるが、販売実績などで販売先が指定されており貴局には納品できない」とされたのが348人。
 「発注量の一部は納品できるが、不足分は入荷次第となる」が467人。
 「卸に在庫がないので納品できない」が511人。
 「発注時に説明がなく、納品日に欠品があることを説明された」が227人。
 「製造メーカーが得意先への割り当て数を決めているので一定量の納品しかできない」が386人。
 「新規採用品の注文を受けたが、出荷調整のため納品できない」は433人という結果だった。

 「現在納品が滞っている品目数」では「4品目超」が63%と最多だった。

 自由記述の品目数回答では10品目が72人と最多だった。

 「納品が滞り、調剤業務に支障が出る場合がある」と回答した646名の対処方法では、「先発医薬品に変更した」ことがある人は533人だった。

 対処方法への患者の反応では「納得した」が592人、「先発品への変更に同意した」が419人である一方、「負担金額が変わることへの不満を訴えた」150人、「製品が変わることに不安を持たれた」320人だった。

東京都薬剤師会調べ

******
<編集部コメント>
 同種同薬効への変更などに関しては、海外の薬局では薬剤師の裁量で変更が可能な国もあると聞く。

 供給不安やコロナで薬局の業務負担が増す中、例えば「医療機関からの一定のルールの許容範囲の発出に基づく」などの条件下であってもよいので、一部の薬効の代替を認めるなどの工夫や緩和が求められているのではないだろうか。

この記事のライター

関連する投稿


【東京都薬剤師会】独自eラーニングに連携強化加算対応コンテンツを追加

【東京都薬剤師会】独自eラーニングに連携強化加算対応コンテンツを追加

【2025.04.04配信】東京都薬剤師会(都薬)は4月4日、定例会見を開いた。この中で、都薬独自eラーニングであるt-MYLSに連携強化加算対応のコンテンツを追加したと説明した。


【東京都薬剤師会】髙橋会長「若い人がやってくれたら嬉しいと思っていた」/会長選で

【東京都薬剤師会】髙橋会長「若い人がやってくれたら嬉しいと思っていた」/会長選で

【2025.03.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は3月7日に定例会見を開いた。この中で髙橋正夫会長は、2期目続投を決めた都薬会長選挙について語った。


【東京都薬剤師会】賃上げと物価高騰の状況調査実施/骨太方針や改定基礎資料に

【東京都薬剤師会】賃上げと物価高騰の状況調査実施/骨太方針や改定基礎資料に

【2025.03.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は3月7日に会見を開き、「薬局経営における賃金引き上げ状況及び物価高騰の影響に関する調査」を実施することを明らかにした。薬局の賃上げ対応については令和6年度調剤報酬改定で調剤基本料に含める形で対応されたが、十分な評価になっていないとの指摘も上がっている。


【東京都薬剤師会】緊急避妊薬調査事業、協力医療機関数が250に

【東京都薬剤師会】緊急避妊薬調査事業、協力医療機関数が250に

【2025.02.07配信】東京都薬剤師会は2月7日に定例会見を開いた。この中で、緊急避妊薬販売にかかる環境整備のためのモデル的調査事業の協力医療機関リストを公開した。250の医療機関から協力を得た。


【東京都薬剤師会_カスハラ調査結果】「漂白剤かけられた」/事件性疑われる事例も複数確認

【東京都薬剤師会_カスハラ調査結果】「漂白剤かけられた」/事件性疑われる事例も複数確認

【2025.01.10】東京都薬剤師会(都薬)は1月10日に定例会見を開いた。その中で都薬が進めていたカスハラに関する調査結果を公表した。「ハイターをかけられた」などの事件性が疑われる案件も複数明らかとなり、薬局・薬剤師が苦しめられている状況がわかった。一方で、医療従事者として我慢して対応している薬剤師の姿も浮かび上がった。また、きっかけに医薬品不足や選定療養などの社会環境や制度変更もあった。


最新の投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。


【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。


【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。


【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング