【規制改革推進答申】「調剤業務の効率化」明記/「令和3年度検討開始」/調剤外部委託の議論開始か

【規制改革推進答申】「調剤業務の効率化」明記/「令和3年度検討開始」/調剤外部委託の議論開始か

【2021.06.02配信】6月1日、「第3回規制改革推進会議 議長・座長会合」が開かれた。会議後、小林喜光議長が菅義偉首相に「規制改革推進に関する答申」を提出した。答申では、「調剤業務の効率化」を明記した。(写真出典:https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202106/01kiseikaikaku.html)


 「規制改革推進に関する答申」の中で、「調剤業務の効率化」を明記した。

 「薬局における薬剤師の対人業務を充実させるため、調剤技術の進歩や医薬品の多 様化等の変化を踏まえ、調剤に係る業務プロセスの在り方を含め、医療安全を確保しつつ調剤業務の効率化を進める方策を検討し、必要な見直しを行う」とした。

 令和3年度検討開始、早期に結論を目指す。

 「調剤業務の効率化」の事項は前回にはなかったもの。
 前回の12月から今回の6月までの間に開かれた、「第12回 医療・介護ワーキング・グループ」(4月20日開催)の議題、「調剤の外部委託」が影響を及ぼしていると考えられる。ここでは企業間で調剤業務の委受託を可能とする規制緩和、それに起因する「処方箋40枚規制」の緩和が提案されていた。

 「調剤の外部委託」「処方箋40枚規制緩和」をめぐっては、日本薬剤師会が「当該患者に提供する薬物治療全体の責任が果たせない」「調剤業務の委受託を前提とした40枚規制の見直しは不要」として反対している。

 4月20日の議事録はすでに公開されており、その中で、提言者の狭間氏は、薬剤師の職能に関して、「薬を渡した後を見てもらう」ことだとした上で、「いろいろ全部やることはキャパの問題から難しい」と指摘。「店舗の後方支援的に一包化であるとか機械でできるところの部分を集約化したところをつくって、そこを担う。それが同一法人内のケースもあるかもしれないし、発展していくとそれを企業間を超えて外部から受託するような薬局も出てくるのかもしれない」としていた。

 また、こうした提案に対し、厚生労働省は、「調剤業務の一部を外部委託していくことについては、まず処方箋を応需した薬局の責任がある中で医療安全を確保していくことが可能か。そして、それが対人業務の充実に貢献していくことに資するかということなどの検討を、大きな視点で検討していくことが必要」と回答していた。

 また厚労省は、「40枚の規制について紹介すると、薬局において調剤する調剤従事の薬剤師の員数を、薬局における薬剤師の業務が一体、一人の患者さんの処方箋に応需して必要な服薬指導までやって、どのぐらい業務量が時間としてかかるのかというあたりを織り込んで、その員数の最低基準を定めさせている。さらに、平成27年度の研究班の結果を踏まえつつ、現在、1日平均の処方が40枚まででお一人となっている」と説明。「業務全体がかかる薬局が二手になって、処方箋を応需した薬局で基本的に対人業務もしていき、薬を用意するところについて外部に委託することは仮によしとできるのであれば、またそういった員数の規制もそれに沿ってしかるべきものがあり得ると思う。一方で、外部委託するからには責任ある薬局と薬剤師からそこの外部委託するところとの、どういった取り決めでどういった手順、ないしは責任の持ち方で業務分担をしていただくか。果たしてそれで、安全確保あるいは調剤の質を上げていくことができるかといったことを十分、検討を織り込んでいくことが必要」と述べていた。

 「医療安全」の観点から検討することは、規制改革推進会議と厚労省の見解は一致している。
 
 検討には専門家の意見は不可欠と考えられるため、どこの場で、どのように議論を進展させるかに注目が集まる。

 なお、4月20日の議事録では、病院の調剤業務の外注化についても触れられている。

 武藤正樹氏(社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役)が、狭間氏に対して、「病院や診療所の院内調剤の業務の外注化も必要だと思うが、どう思うか」と質問。
 これに対し、狭間氏は、「物理的には可能だと思うが、薬剤師さんが調剤した薬剤にどこまで責任が持てるのかというところがかなり揺らぐため、依頼した薬剤師さんが受託した側にきちんと指示ができるシステムが欠かせない」と回答した。

 また、武藤氏は、「まずは特区ではどうか」、「処方箋は原本でなければいけない点もポイント」とした。
 これに対し、厚労省は、処方箋の原本に関しては、「今、電子処方箋の仕組み構築に動いている。そうなると紙よりも電子の原本を確認していただくことで調剤をしていく時代が近々来る。それを前提に今後のあるべき論を議論したほうがいい」と話した。特区の可能性については、「特区というよりは、調剤業務あるいは薬局の責任、薬剤師の責任について、今後どういうやり方が医療の質を上げる意味において良いのかを前向きに検討はぜひ我々としてもしたいと思っている」とした。

 こうした議論ののち、河野太郎行政改革担当大臣は、調剤の議論に関して、「菅内閣が進めようと
しているデジタル化。これは、デジタル化によって省力化できるところは省力化しながら、本当に人に寄り添わないといけないところに人が寄り添う、人のぬくもりが感じられるという社会をつくるための規制改革が必要だということを申し上げてきた。全国に約6万件、薬局があると思うが、そのうちの半分以上は常勤の薬剤師が1人という小さな規模の薬局だが、こういう薬局でもデジタル化によって調剤業務の効率化ができるところは効率化をする。そして、患者さんに寄り添った服薬指導です
とか服薬後の患者さんのフォローといった、人がやらなければいけない業務に今まで以上に力を注いで、患者に寄り添ったサービスを提供することがデジタル化でできるようになるのではないかと思っている」とコメントしている。

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