組むなら弱点を補完できる相手が“吉”
マツモトキヨシHDは全国の薬局に、医療用医薬品を中心に、その他OTC医薬品や健康食品をはじめとしたヘルスケア商品、プライベートブランド商品を供給する「調剤サポートプログラム」を展開している。
2016年12月の開始から5年が経っているが、ここにきて注目が高まっている。現在、122店舗が利用している。
理由はいくつか考えられる。
1つは、サービス自体がもともとはエリア限定だったものが全国展開に広がったこと。それから、当初は「ドラッグストアと薬局」という、多少“畑違い”のマツモトキヨシHDと組むということが薬局経営者の中でハードルが高かったことも考えられる。
「“サポート”とは名ばかりで、そのうち買収を持ち出されるのではないか」、「システムの入れ替えを伴うフランチャイジーではないのか」。そんな“疑いの目”を向ける薬局経営者は少なくなかっただろう。
それがサービス開始から年を追うごとに、「どうやら本当に買収やフランチャイズではないらしい」「導入した知り合いの薬局の物販売り上げが伸びたらしい」といった実績が疑念の解消、ひいては関心につながっていった。
それに加えて、コロナ禍の受診抑制で処方箋枚数の減少が薬局をおそった。ヘルスケア商品調達や売れ筋情報、販売ノウハウに長けたマツモトキヨシHDと組んでみよう、と考える薬局経営者が増えたのもうなずける。
これまで薬局では、他社と手を組むときに、主力である調剤領域で手を組むことが多かった。例えば医療用医薬品の共同購入によるスケールメリット発揮などがそれだ。
しかし、医療用医薬品の共同購入を含め、“保険財政内のビジネス”そのものが、次第にメリットを生みづらい、厳しいものになっていくことを多くの薬局経営者が感じている。
むしろ、物販の弱みを補完できる相手と組む方にメリットが出てくる可能性がある――。その時の選択肢として浮上してくるようになったのがマツモトキヨシHDの調剤サポートプログラムなのだ。
厳密にいうと、前述の商品供給プログラムは、同サービスに設けられた3つのプランのうち、「ライトパッケージ」のこと。「フルパッケージプラン」や「マツモトキヨシ看板パッケージ」もあり、中でも「マツモトキヨシ看板パッケージ」はフランチャイズ形態であることが、ややこしいのだが、実際は「看板パッケージ」利用は現在、同サービスのうち1%程度。ほとんどがライトパッケージの利用となっているため、本稿では「ライトパッケージ」を前提として話を進める。
もちろん、「看板パッケージ」を同社が無理に勧めることは全くなく、薬局側が自社のメリットに応じてプランを選ぶことができる。
商品供給のほか、棚割り、販売データ分析から売り上げ増の棚変更提案まで
それでは、実際に、同プランの基本的な内容を改めてみてみたい。
サービス内容は主に「調剤薬」と、健康食品やヘルスケア関連商品を含めた「OTC医薬品」。
「調剤薬」はいわゆる医療用医薬品の共同購入と同じスキームだ。マツモトキヨシHDが医薬品卸への支払い等は代行するが、発注や納品は、通常通り薬局と医薬品卸間で行われる。
不動在庫の移動機能もあり、不動在庫を他店で活用してもらうことも、逆に少ない量を他店から分割販売を受けることも可能だ。
この共同購入のメリットも、同サービスの拡大とともに薬局側に提案できる内容が充実してきている。マツモトキヨシHDは今年10月にココカラファインとの統合を予定しており、調剤分野にも強いココカラファインとの統合シナジーによりボリュームディスカウント効果はさらに生まれると考えられる。このメリットは加盟社も享受することになるだろう。
「OTC医薬品」では、マツモトキヨシHDから薬局に納品となる。
料金もとても分かりやすい体系で、加盟金や保証金は一切なく、ランニングコストも毎月わずかな定額制で、ヘルスケア商品の売り上げ増や医療用医薬品の仕入れコストの低減で吸収できる薬局が多い。
実際の導入には、現状の薬局の実態と、導入した場合の差益をシミュレーションではじき出してくれ、そのデータを見てから導入の判断ができる。
運営に関しては、スーパーバイザーに相談が可能で、それぞれの薬局に適した商品選定(棚割り)をしてくれるほか、販売拡大につながる価格設定、POP作成までノウハウを提供してくれる。
当初の棚割りから、販売データを分析し、よりリピート率の高い商品への入れ替えも提案してくれる。
こうしたアドバイスにより、薬局の商品売り上げが格段に伸び、加盟店からは喜びの声が多く届いている。大手ドラッグストア企業であるマツモトキヨシHDとの連携によって、これまでの調剤薬局では取り扱いが厳しかった介護用品からヘルスケア商品に至るまで多彩な品揃えと、魅力的なプライスで地域住民の買物ニーズを引き出すことが可能になっているのだ。
実際に、調剤サポートプログラム事業部には、健康サポート薬局や地域連携薬局を意識する薬局オーナーから物販の取り扱いのお問い合わせが多くなっている。これは、従来の調剤偏重薬局を抜け出したいという危機感を抱く薬局オーナーが非常に多いことを映し出していると言えるのではないだろうか。
商品回り以外のサービスも充実している。研修・教育機能や薬剤師派遣サポート、DI機能相談などがある。
定額ランニングコスト以外に薬局が支払う必要がある料金は、マツモトキヨシHDのヘルスケア商品仕入れ額に対して定率のマージン。しかし、これも薬局単独で仕入れるよりも十分にメリットが出る内容といえる。あとは、ほぼ実費レベルで、スーパーバイザーの対面経営相談を受けたい場合は、交通費などの支払いが必要となる。教育・研修も外部の有料のものの割引提供の場合、実費がかかる。これらも薬局側の必要に応じて利用すればよい。
薬剤師派遣も同様に実費支払いが必要だが、職員の急病などで手当てが必要となった薬局に最大限の支援をしたことで、とても喜ばれた事例などがあるという。マツモトキヨシHDには、薬局事業を行うマツモトキヨシファーマシーズがあり、人材派遣・紹介業を行っていることからバックアップできる体制がある。
個人薬局の多くはオーナー単独の経営が少なくなく、突発的かつ不測の事態に、調剤サポートプログラムの多彩なサービスで様々な要望に応えてくれることは、加盟社に大きな安心を生んでいる。
PB「matsukiyo」が意外にも人気
これまでの利用薬局からはどんな声があるのか。
まず気になったのが、マツモトキヨシHDといえばPB「matsukiyo」ブランドが有名だが、さすがに薬局からの注文は少ないのではないか、と。
これに対しては意外なことに、「matsukiyo」ブランドの注文が多いという。
「薬局でmatsukiyoブランドを販売すると、『matsukiyoグループになったのですか』などと指摘されることを気にする経営者の方はいないのか」と質問すると、調剤サポートプログラム事業部の回答は、「これまでそういったお声はいただいた記憶がないです」とのこと。
「実際に、当社から加盟店への商品供給実績の4割がプライベートブランドで大変ご好評いただいております。加盟店ではPB商品のリピーターが多いというのも品質の良さで選ばれているのかもしれません・・・。当社としてはナショナルブランドのご発注もスケールメリットが発揮できるので、NBでもPBでもどちらをご注文いただいても構わないのですが、比較的PBのご注文が多いです。売れ筋を置く、というビジネスライクな考え方の方が多い印象です」(同事業部 岡田SV)。
同サービスを利用しようとする薬局経営者は、経営メリットを重要視する考えなのかもしれない。また、コロナ禍でマスクや消毒薬が不足した際にもマツモトキヨシHDのPBは比較的調達がしやすく、これも利用薬局に喜ばれたという。
それから、これまで物販売上が小さかった薬局がヘルスケア商品を置いたからといって、売れるのかという疑問もある。
この疑問に関して同事業部企画課 板倉リーダーは次のように答える。
「売上が伸びない薬局さんがないとは言いません。特に地域の方から薬局さんの存在が見えづらい立地などの場合、処方箋を持ってきてくれる患者さんが購入しやすいヘルスケア商品を揃えるという意味で伸びしろが狭まってしまうことになります。しかし、多くの薬局ではヘルスケア商品棚をつくっていくことで『買えるんだね』という認識がお客さまに浸透していくことで物販売り上げが伸びていきます。そして、ただ棚をつくるのではなく、その中身も販売データに照らして改善していくことで、さらに売り上げは伸びていきます。具体的にはリピートがない商品はその薬局の特性には合っていないということなので見直していきます。過去には、健康食品は伸びなかったので、オーラルケアと介護関連に重点をおいたことで物販売り上げが順調に伸びていった薬局もあります。また、地域から存在が見えづらい薬局の場合も、健康相談会などをこまめに開いていくことで、例えば女性のヘルスケアに役立つ商品などが売れていくケースなどもありました。典型的な事例として、調剤業績の伸び悩んでいる加盟店で、物販商品を充実したことで処方せんが増えたという副次的な効果もありました。やはり処方せん以外に気軽に立ち寄れる薬局構築こそ、調剤サポートプログラムが得意とするところであります」
いたれり尽くせりの感もあるが、そこまでしてマツモトキヨシHDのメリットはあるのか。
「定額のランニングコスト以外に、供給させていただいた商品のスケールが拡大すれば全体にメリットがあります。当社は都市型出店を得意としているため、全国の津々浦々の地域で当社のPBを販売できるわけではありません。地域密着の薬局にしかできないことと、当社のようなチェーンドラッグストアの強みをすみわけをしていくことができるのではないかということが、そもそもの調剤サポートプログラムの構想にあります。例えば健康サポート薬局の届け出なども、ノウハウの構築が当社は得意なので、それを地域の薬局にご提供していくことができます。最近では地域で診療所の開業のお話がある時に薬局さまにご紹介したり、逆に薬局さまで医師の方から開業のお話をいただいていても開局できないご事情の時に当社をご紹介いただく事例などもあります」(同事業部企画課 板倉リーダー)
もともと「個店とチェーンが互いに競合しているだけでは新しい価値は生まれにくい」という思いが、同プログラム発足の背景にある。「個店には個店の役割があり、チェーンにはできない特有の商品やサービス提供、例えば地域に根差した地域住民一人ひとりの健康管理などの地域と密着した連携がある。一方、商品(品揃え)、価格(安さ)を提供することはチェーンドラックだからこそできる利点」という理念だ。双方がシナジーを発揮することで“競争”から“協創”を実現していくことが、結果的に地域生活者のきめ細かな新しい満足と、双方の事業発展を同時にかなえることに繋がるのではないかとの期待感がある。
同事業部では、「シミュレーションまでは全くの無料ですので、ぜひお気軽にお声がけいただければ」としている。
■「調剤サポートプログラム」へのお問い合わせ、シミュレーションのご依頼は下記までお願いいたします。
定期的に説明会も行なっております。
・お電話によるお問い合わせ窓口 フリーダイヤル0120-783-310(平日10時~17時)
・メールによるお問い合わせ窓口 chouzaispt@matsukiyo.co.jp
・調剤サポートプログラムHP https://www.matsukiyo-p-support.com/
「個店とチェーンドラッグストアがお互いにシナジーを発揮することで“競争”から“協創”を実現していきたい」として、調剤サポートプログラムを推進するマツモトキヨシホールディングス常務取締役の大田貴雄氏