【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


厚労省「患者の経過観察又は治療中の疾患等から予見することができる症状を緩和するための処方であれば、その疾患等の病名を診療報酬明細書に記載の上、処方する」

 同WGではこれまで、「在宅医療における円滑な薬物治療の提供について」を議題としてきており、訪問看護ステーションに配置できる薬剤の拡大についても要望してきた。

 今回の委員からの質問と、厚労省の回答は以下の通り。

■委員からの質疑・意見
1、風邪の症状がない者に対して、処方箋に保険病名として「感冒」と記載し事前に感冒薬を処方・調剤するなど、
症状がない者に対して、処方箋に保険病名を記載して事前に処方・調剤することは適切か、貴省の御見解を御教示いただきたい。
2、(症状がない者に対して、処方箋に保険病名を記載して事前に処方・調剤することが適切である場合、)在宅患者に想定されるあらゆる症状に対して、事前に処方・調剤し対応することについて、
・ 大量の薬剤が使用されず使用期限を迎え破棄される可能性があり、結果として社会保障費の増大に繋がるため、医療経済の観点から不適切である
・ 認知症患者の誤薬や、患者家族の不適切使用や紛失等のおそれがあることから、多くの薬剤を患者宅で安全に管理することは医療安全の観点から困難であるとの指摘が想定されるが、医療経済及び医療安全の観点から、症状がない者に対して、処方箋に保険病名を記載して事前に処方・調剤することは合理的な方策か、貴省の御見解を御教示いただきたい。

■厚労省の回答
 健康保険法においては、被保険者の疾病又は負傷に関して、薬剤の支給等の療養の給付を行うこととしており、疾病に罹患していない者に対して、処方・調剤をすることは適切ではない。
 「症状がない者」の指している患者像がはっきりせず、一概には言えないが、
・患者の経過観察又は治療中の疾患等から予見することができる症状を緩和するための処方であれば、その疾患等の病名を診療報酬明細書に記載の上、処方する。
・病名付与のみでは、当該処方の正当性を説明できない場合には、診療報酬明細書の症状詳記欄に当該処方の正当性を詳記した上で処方することは適切な保険診療の範囲内と言える。
 一方で、2に記載の「在宅患者に想定されるあらゆる症状」について、上述の「患者の経過観察又は治療中の疾患等」から予見することができる症状以外の症状を含んでいるとすれば、その症状を緩和する目的の処方は医学的に妥当適切とは言えず、不適切な請求である。
 また、ご指摘の「保険病名」が虚偽の病名であるいわゆる「レセプト病名」のことを指すのであれば、ご指摘のような症状のない患者に対してそれを傷病名欄に記載して処方・調剤し診療報酬の請求をすることは、不正請求と認定される可能性がある。

この記事のライター

関連する投稿


【厚労省_薬局検討会】「議論のとりまとめ」公表/在宅医療における薬剤提供で

【厚労省_薬局検討会】「議論のとりまとめ」公表/在宅医療における薬剤提供で

【2025.03.31配信】厚生労働省の「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」は3月31日、「これまでの議論のまとめ」 を公表した。「在宅医療における薬剤提供のあり方について」に関するものとなっている。 同検討会は2024年9月にも「地域における薬局・薬剤師のあり方に関するテーマで議論のとりまとめを公表している。今回は、同検討会でのとりまとめ第2弾となり、「在宅医療における薬剤提供のあり方について」に関するものとなっている。


【地域における医薬品提供】岩手県薬剤師会の視点/畑澤博巳会長に聞く「“リスト化”は次のステップへの基盤づくり」

【地域における医薬品提供】岩手県薬剤師会の視点/畑澤博巳会長に聞く「“リスト化”は次のステップへの基盤づくり」

【2025.03.24配信】在宅領域など、地域への医薬品提供に課題があるのではないかとの指摘が社会から挙がっている。こうした中、地域薬剤師会や都道府県薬剤師会では地域ごとの薬局の体制について「リスト化」し地域に向けて公表している。進行する取り組みに各地の薬剤師会はどのように考えているのか。岩手県薬剤師会会長の畑澤博巳氏に聞いた。


【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【2025.03.14配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が3月14日に開かれた。


【厚労省_中医協】訪問看護への「指導要領」改定/不適切な請求事案受け

【厚労省_中医協】訪問看護への「指導要領」改定/不適切な請求事案受け

【2025.03.12配信】厚生労働省は3月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、訪問看護ステーションの指導要領の改定を了承した。昨今の不適切な請求事案の報道を受けた対応。


【規制改革推進会議WG】提案「調剤前に薬局で登録医師の確認が必要な医薬品の確認方法の統一」

【規制改革推進会議WG】提案「調剤前に薬局で登録医師の確認が必要な医薬品の確認方法の統一」

【2025.03.06配信】3月6日に規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が開催された。その中で、規制改革ホットラインの提案事項、およびそれに対する令和6年10月18日から令和6年12月16日までの関係省庁の回答、加えてWGとしての処理方針が報告された。


最新の投稿


【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【2025.06.15配信】ヘルスケア卸大手の大木ヘルスケアホールディングスは6月11日に、事業部説明会を開催した。来る6月17日(火)~6月18日(水)にTRC 東京流通センターで開く「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会2025 年 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」の事前説明会の位置付け。OTC医薬品に関しては、“推し活”市場の拡大を背景に、“推し活”をきっかけに需要に気付きを与える提案を実施することを説明した。


【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【2025.06.13配信】政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、いわゆる骨太方針を閣議決定した。医療・介護に関連しては、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と記載した。これまでは、社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針がとられてきた。薬剤師で参議院議員の神谷政幸氏はXで「税収増を踏まえた経営の安定化や確実な賃上げに繋がる対応がついに反映」と投稿。医療介護業界の声が届いたとの考えを示唆した。


【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【2025.06.12配信】奈良県薬剤師会(後岡伸爾会長)は、「健康ハートの日 2025」に協賛する。


【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。


【日本医師会】自公維3党合意に見解公表/病床削減と医療DXに「総論賛同」

【日本医師会】自公維3党合意に見解公表/病床削減と医療DXに「総論賛同」

【2025.06.10配信】日本医師会は6月9日、自由民主党、公明党、日本維新の会の3党合意についての見解を公表した。