「医師の管理下のスイッチOTC医薬品」要望が認められた
オンラインで会見した日本OTC医薬品協会会長の佐藤誠一氏(佐藤製薬社長)は、新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年は、受診控えもあり、「自分の健康は自分で守るという環境に置かれ、改めてセルフメディケーションの重要性が認識された」と総括した。
政策においては昨年末から「方向性が見えてきた」と指摘し、「産業として早期に実現することが重要」と話した。
具体的には協会が進めてきた3つの政策を挙げた。「セルフメディケーション税制の推進」、医療用から一般用医薬品へ転用する「スイッチOTCの促進」、そして「厚生労働省の体制整備」だ。
1つ目の「セルフメディケーション税制」については、昨年末の政府の税制大綱でセルフメディケーション税制が5年間延長となり、対象も一部拡大、手続きも簡素化されたことを歓迎した。ただし、上限額・下限額の変更要望については認められなかったとして、恒久化と併せ、さらに使いやすい税制を目指していく意向を示した。
2つ目のスイッチOTCの促進については、このテーマを議論している厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」が昨年12月24日に公表した「中間とりまとめ案」について言及。
スイッチの可否を議論するのではなく、厚労大臣に意見具申する場であることが確認されたことについては協会の要望が取り入れられたとした。一方で、中間とりまとめ案の「チェックシート等を用いた確認の徹底や記録の管理」については、協会の要望にはなかったものだとした。
スイッチOTCの領域・範囲については同会議の10月28日開催の場で協会が示した主に4つの考え方を改めて説明した。「自覚症状により自ら、服薬の開始・中止等の判断が可能な症状に対応する医薬品」、「再発を繰り返す症状であって、初発時の自己判断は比較的難しいが、再発時においては自ら、症状の把握、服薬開始・中止等の判断が可能なものに対する医薬品」、「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」、「無侵襲または低侵襲の簡易迅速自己検査薬」だ。
中でも「医師の管理下」のスイッチOTCについては、「新たな範囲はそのまま受け入れていただいたものと思っている」と評価した。
こうした新たなOTC医薬品の領域について佐藤会長は、「実現されれば慢性疾患で受診を重ねている忙しいビジネスパーソンに貢献できる」との価値を強調した。
一方で、「安全に実践するにはかかりつけ医や専門医のチェックが受けられるシステムを構築する必要がある」とし、環境整備も同時に進める必要性を指摘した。
さらに、「OTC医薬品で対応可能な薬効別潜在的医療費」の試算を示した。昨年11月に開いた「セルフメディケーションの日シンポジウム2020」では、東京大学 大学院薬学研究科医薬政策学 客員准教授の五十嵐中氏が試算を公表していたもの。今回の会見では、その中で「高血圧」に試算が改めてされており、823億円の医療費がOTC医薬品で対応可能とした。既存領域のOTC合計では2362億円の医療費が置き換え可能とした。
3つ目の「厚生労働省の体制整備」に関しては、規制改革推進会議でも部局横断的な体制を厚労省に構築することが要請されているもので、佐藤会長は、「これまでOTC医薬品の担当部署がなかった」として、体制強化を要望した。
そのほか、後発医薬品で用いられた数値目標を、OTC医薬品の政策にもKPIとして定めてもらうことなどを引き続き要望した。
佐藤会長は、「当協会は健康リテラシーの向上を目指しており、これはOTC医薬品だけにかかわらず、診療を受ける際にもなくてはならないものだ」と語り、学校教育の場などでの拡充も必要だと強調した。また、オンラインが医療用医薬品でも活用される中、セルフメディケーションにおいてもオンラインの活用の在り方を模索していきたい考えも示した。