【OTC医薬品協会】高血圧の医療費823億円がOTCで対応可能

【OTC医薬品協会】高血圧の医療費823億円がOTCで対応可能

【2021.01.12配信】市販薬(OTC医薬品)メーカーで構成する日本OTC医薬品協会は、1月12日に会長会見を開き、「OTC医薬品で対応可能な薬効別潜在的医療費」の試算を示し、その中で「高血圧」について、823億円の医療費がOTC医薬品で対応可能とした。高血圧は既存のOTC医薬品にはない領域で、OTC医薬品産業が高血圧に代表される慢性的な疾患について市場を拓こうとしている意欲がのぞく。同協会は、「必要に応じてかかりつけ医や専門医に相談できる仕組みも必要だ」とした。


「医師の管理下のスイッチOTC医薬品」要望が認められた

 オンラインで会見した日本OTC医薬品協会会長の佐藤誠一氏(佐藤製薬社長)は、新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年は、受診控えもあり、「自分の健康は自分で守るという環境に置かれ、改めてセルフメディケーションの重要性が認識された」と総括した。
 
 政策においては昨年末から「方向性が見えてきた」と指摘し、「産業として早期に実現することが重要」と話した。
 具体的には協会が進めてきた3つの政策を挙げた。「セルフメディケーション税制の推進」、医療用から一般用医薬品へ転用する「スイッチOTCの促進」、そして「厚生労働省の体制整備」だ。
 
 1つ目の「セルフメディケーション税制」については、昨年末の政府の税制大綱でセルフメディケーション税制が5年間延長となり、対象も一部拡大、手続きも簡素化されたことを歓迎した。ただし、上限額・下限額の変更要望については認められなかったとして、恒久化と併せ、さらに使いやすい税制を目指していく意向を示した。

 2つ目のスイッチOTCの促進については、このテーマを議論している厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」が昨年12月24日に公表した「中間とりまとめ案」について言及。
スイッチの可否を議論するのではなく、厚労大臣に意見具申する場であることが確認されたことについては協会の要望が取り入れられたとした。一方で、中間とりまとめ案の「チェックシート等を用いた確認の徹底や記録の管理」については、協会の要望にはなかったものだとした。

 スイッチOTCの領域・範囲については同会議の10月28日開催の場で協会が示した主に4つの考え方を改めて説明した。「自覚症状により自ら、服薬の開始・中止等の判断が可能な症状に対応する医薬品」、「再発を繰り返す症状であって、初発時の自己判断は比較的難しいが、再発時においては自ら、症状の把握、服薬開始・中止等の判断が可能なものに対する医薬品」、「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」、「無侵襲または低侵襲の簡易迅速自己検査薬」だ。

 中でも「医師の管理下」のスイッチOTCについては、「新たな範囲はそのまま受け入れていただいたものと思っている」と評価した。

 こうした新たなOTC医薬品の領域について佐藤会長は、「実現されれば慢性疾患で受診を重ねている忙しいビジネスパーソンに貢献できる」との価値を強調した。

 一方で、「安全に実践するにはかかりつけ医や専門医のチェックが受けられるシステムを構築する必要がある」とし、環境整備も同時に進める必要性を指摘した。

 さらに、「OTC医薬品で対応可能な薬効別潜在的医療費」の試算を示した。昨年11月に開いた「セルフメディケーションの日シンポジウム2020」では、東京大学 大学院薬学研究科医薬政策学 客員准教授の五十嵐中氏が試算を公表していたもの。今回の会見では、その中で「高血圧」に試算が改めてされており、823億円の医療費がOTC医薬品で対応可能とした。既存領域のOTC合計では2362億円の医療費が置き換え可能とした。

 3つ目の「厚生労働省の体制整備」に関しては、規制改革推進会議でも部局横断的な体制を厚労省に構築することが要請されているもので、佐藤会長は、「これまでOTC医薬品の担当部署がなかった」として、体制強化を要望した。
 そのほか、後発医薬品で用いられた数値目標を、OTC医薬品の政策にもKPIとして定めてもらうことなどを引き続き要望した。

 佐藤会長は、「当協会は健康リテラシーの向上を目指しており、これはOTC医薬品だけにかかわらず、診療を受ける際にもなくてはならないものだ」と語り、学校教育の場などでの拡充も必要だと強調した。また、オンラインが医療用医薬品でも活用される中、セルフメディケーションにおいてもオンラインの活用の在り方を模索していきたい考えも示した。

この記事のライター

関連する投稿


【東京都医師会】「高額療養費制度の凍結」の声明公表/OTC医薬の活用政策も提案

【東京都医師会】「高額療養費制度の凍結」の声明公表/OTC医薬の活用政策も提案

【2025.03.05配信】東京都医師会は3月5日、「緊急声明 高額療養費制度の凍結について」を公表した。


【ドラッグストア協会】セルメ税制、「OTC薬協とタッグ組み推進を決定」/店頭のデータに基づく資料提示予定

【ドラッグストア協会】セルメ税制、「OTC薬協とタッグ組み推進を決定」/店頭のデータに基づく資料提示予定

【2025.01.30配信】日本チェーンドラッグストア協会は1月30日に会見を開き、セルフメディケーション税制に関して、日本OTC医薬品協会とタッグを組んで推進することを決めたと説明した。


【OTC薬協】小学校に出前授業、「健康とくすり」

【OTC薬協】小学校に出前授業、「健康とくすり」

【2025.01.15配信】日本OTC医薬品協会は1月15日、小学校向けに「健康とくすり」の出前授業を行ったと公表した。


【東京都薬剤師会】要指導薬などの取扱店が増加/自主点検で判明

【東京都薬剤師会】要指導薬などの取扱店が増加/自主点検で判明

【2025.01.10配信】東京都薬剤師会は1月10日に定例会見を開いた。この中で、会員薬局において要指導薬・一般用薬の取り扱い薬局が増加していることがわかった。薬局へのセルフメディケーションにおける役割が注目されていることなどが影響しているとみられる。


【セルフケア・セルメ有識者検討会】「推進に関する工程表」令和7年夏に公表へ/進捗を管理

【セルフケア・セルメ有識者検討会】「推進に関する工程表」令和7年夏に公表へ/進捗を管理

【2025.01.08配信】厚生労働省は1月8日、「第1回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を開いた。今後、推進に関する工程表を作成し、進捗を管理する方針。


最新の投稿


【渡嘉敷奈緒美・元衆議院議員】次期衆院選へ出馬へ

【渡嘉敷奈緒美・元衆議院議員】次期衆院選へ出馬へ

【2025.03.16配信】渡嘉敷奈緒美・元衆議院議員が、3月15日に開かれた日本薬剤師会臨時総会で挨拶した。


【日本薬剤師会】上野清美氏が専務理事に就任

【日本薬剤師会】上野清美氏が専務理事に就任

【2025.03.16配信】日本薬剤師会の専務理事に上野清美氏が就任した。


【日本薬剤師会】全国薬学部に薬剤師会入会案内チラシを配布/卒業式資料として

【日本薬剤師会】全国薬学部に薬剤師会入会案内チラシを配布/卒業式資料として

【2025.03.15配信】日本薬剤師会は3月15日に臨時総会を開いた。この中で、全国薬学部に薬剤師会入会案内チラシを配布したことを報告した。


【日薬_岩月進会長】「賃上げ・物価高騰に対応した財源を要望」/第105回臨時総会会長演述で

【日薬_岩月進会長】「賃上げ・物価高騰に対応した財源を要望」/第105回臨時総会会長演述で

【2025.03.15配信】日本薬剤師会は3月15日に第105回臨時総会を開いた。この中で会長の岩月進氏は会長演述を行った。医療分野における賃上げ・物価高騰に対応した適切な財源を、引き続き政府に要望していく考えを示した。薬剤師においては、「今後は、処方箋調剤にとどまらず、健康サポート機能のさらなる充実、さらには人口減少地域や山間へき地、島しょ部への対応、休日・夜間や在宅医療等における医薬品提供の確立や、 OTC 医薬品や検査薬や衛生用品などを含めた供給拠点としての地域の薬局が必要な機能を発揮できるよう体制を整えていかなくてはならない」とした。


【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【2025.03.14配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が3月14日に開かれた。