OTC検査薬の追加には慎重意見も
業界団体である日本一般用医薬品連合会はセルフメディケーション税制改正に関して、対象医薬品の拡大やOTC購入費から差し引く金額・上限額の変更、制度の恒久化などを要望している。
このうち、同日の検討会では対象範囲について主に議論した。実際には骨太方針やそれを受けた税制大綱における政府の方針が大きく影響するが、検討会としてはその基礎情報としての関係者の意見集約を進める位置付けとなる。例年夏頃の厚労省からの税制要望の基礎とする。
事務局は、税制対象範囲について主に2点の論点を示した。1つは、新たに対象として追加するもの、もう1つは新たに税制対象から除外するものだ。
この論点に関しては、構成員からは胃腸薬を追加すること、痩身や美容目的のものを対象外とすることの意見が出た。
健康保険組合連合会の構成員(代理出席)は、胃腸薬の追加に賛成意見を表明。「医療費適正化効果の観点からも対象品目を拡大することは必要」とした上で、胃腸薬・止瀉薬、鎮咳去痰薬については「国民の関心も高い症状だと思うので対象として追加するべきものではないか」とした。
胃腸薬は前回見直しの令和3年度の税制改正では、国民生活基礎調査における国民の有訴者数が特に多い症状(上位3症候群)に含まれなかったことから、対象医薬品に含まれなかった。ただ、事務局は「薬局でよく聞かれる症状」のアンケート調査の結果を示し、便秘、下痢、腹痛といったいわゆる胃腸症状が上位に入ることを示し、セルフケアの観点で関心が高い症候群であると考えられると提示していた。
一方、追加候補として日本OTC医薬品協会はOTC検査薬の追加を強く要望した。日本薬剤師会も追加を要望した。
しかし、日本医師会からはコロナ禍での検査薬活用は「困窮する医療の状況がバックグラウンドにあった」とした上で、「検査の精度をしっかり上げていかないと薬剤師の法的責任が問われることになるので、厚生労働省もしっかりとさせていただきたい」と述べ、慎重姿勢を示した。
これに対し、日本薬剤師会常務理事の富永孝治氏は「新型コロナウイルスの感染拡大があって(薬局薬剤師は)緊急避難的に医療用の検査薬を薬局でお出しした。自宅療養やホテル療養に薬を運んで行った。検査薬と治療薬、これがセットでないと先ほどの責任を果たすということにおいては非常に片手落ちになると思っている。そういう武器といいますか、そういう道具、アイテムを与えていただきたいと薬剤師としては思う」と述べ、OTC検査薬の位置付けの大きさを強調した。
美容・痩身目的は除外する意見
痩身・美容目的のものを対象から除外することに関連しては健康保険組合連合会は、「セルフメディケーションを推進する観点としては対象医薬品を積極的に除外することを想定しないということが基本的なスタンス」としながらも、「対象品目数を制約する必要があるとするならば痩身や美容といった、そもそも保険給付の対象ではない、医療費の適正化に直接つながるものではないので除外することは考えられるのではないか」とした。
日本OTC医薬品協会の磯部総一郎理事長は、「胃腸の状態を良くする医薬品も肌荒れが改善することなどにつながっていく」といった事例を示し、「痩身・美容目的を明確に謳っているものについてはこのような(除外)議論が当然あるんだろうと思うが、直接的に薬理作用ではなく副次的なものは実質的には痩身・美容目的の医薬品とみなされない」との見解を表明。「基本は薬効群で考え方を整理していくということではないか」と述べた。
税制の延長や恒久化視野に、対象範囲は延長した場合の対象範囲で令和9年1月からの対象の議論
セルフメディケーション税制は現在、令和8年12月末までの延長措置となっている。
同検討会では令和9年1月からの延長、もしくは恒久化を視野に議論する。そのため、胃腸薬など今回の対象範囲追加についてはこのまま進展すると、令和9年1月からの税制の対象となる見込み。ただ税制内容の決定から実際の対象適用までには通常、さらに経過措置期間が設けられる。