【セルフメディケーション税制】新たな対象「サリチル酸グリコール(鎮痛消炎成分)」「アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)」、「コデインリン酸水和物(鎮咳成分)」「ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗ヒスタミン成分)」など非スイッチ成分の追加で調整

【セルフメディケーション税制】新たな対象「サリチル酸グリコール(鎮痛消炎成分)」「アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)」、「コデインリン酸水和物(鎮咳成分)」「ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗ヒスタミン成分)」など非スイッチ成分の追加で調整

【2021.03.10配信】厚生労働省は3月10日に「第2回セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を開催し、セルフメディケーション税制の新たな対象範囲等について議論した。税制大綱で「3薬効程度を追加する」としていたもの。新たな対象として、「サリチル酸グリコール(鎮痛消炎成分)」「アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)」、「コデインリン酸水和物(鎮咳成分)」「ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗ヒスタミン成分)」など非スイッチ成分が挙がった。3薬効にこだわらず会議としては3症状を対象に薬効に落とし込むことを要望する。今後、財務省など関係機関と調整する見通し。


薬効ではなく3症状「腰痛、関節痛、肩こり」「風邪の諸症状(熱・頭痛、咳や痰が出る、喉の痛み等)」「アレルギーの諸症状 (鼻づまり・鼻汁、くしゃみ、かゆみ等)」対象に

 2021年度税制改正大綱では、「スイッチOTC成分の中でも効果の薄いものは対象外とする」とした一方、「とりわけ効果があると考えられる薬効(3薬効程度)については、スイッチOTC成分以外の成分にも対象を拡充する」としていた。

 その方向性に則り、会議では主に次の4点が議論された。
⒈ セルフメディケーション税制に追加する対象範囲
⒉ 同税制から除外する範囲
⒊ 除外する成分の経過措置期間
⒋ その他の議論

 1つ目の追加する対象に関しては、前回でも提案が出ていた通り、生活者が分かりやすいことを優先し、薬効ではなく、症状で対象を追加する案が取りまとめられた。
 
 座長の菅原 琢磨氏(法政大学経済学部経済学科 教授)は委員の意見を踏まえた上で、「1つに“腰痛、関節痛、肩こり“、2つ目に“風邪の諸症状(熱・頭痛、咳や痰が出る、喉の痛み等)”、3つ目に“アレルギーの諸症状(鼻づまり・鼻汁、くしゃみ、かゆみ等)”を追加するのが妥当ではないか」と総括した。
 
 事務局は症状に応じた成分をリスト化し、最終的には商品を特定し、J A Nコードなどを事務連絡していくことになるのではないかと今後の工程を見通した。
事務局の資料の表では、それぞれの対象を以下のようにまとめている。

症状群:腰痛、関節痛、肩こり
対応する主な薬効群: 鎮痛・鎮痒・収斂・消炎剤
対応する有効成分の例(非スイッチ):サリチル酸グリコール(鎮痛消炎成分)
対応する主な疾患名:背部痛

症状群:風邪の諸症状(熱・頭痛、咳や痰が出る、喉の痛み等)
対応する主な薬効群:解熱鎮痛剤、総合感冒剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮咳去痰剤
対応する有効成分の例(非スイッチ): アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)、コデインリン酸水和物(鎮咳成分)
対応する主な疾患名:急性鼻咽頭炎、急性咽頭炎

症状群: アレルギーの諸症状(鼻づまり・鼻汁、くしゃみ、かゆみ等)
対応する主な薬効群:耳鼻科用剤、抗ヒスタミン剤、その他アレルギー用薬
対応する有効成分の例(非スイッチ):ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗ヒスタミン成分)
対応する主な疾患名:アレルギー性鼻炎

 こうした症状、及び成分が新たに対象として追加される公算が大きくなった。
ただし、税制改正大綱では「3薬効程度の追加」と記載されているため、財務省等との折衝が必要となる見通し。

 成分選定にあたっては国民生活基礎調査で有訴者数が特に多い症状(上位3症状群)を選定したほか、O T Cの置き換えによる医療費適正効果の大きい症状、さらに安全性を考慮したという。

 この案に対し、黒川 達夫氏(日本OTC医薬品協会 理事長)は、3症状を対象とする案では、事務局資料に記載があり対象の条件に当てはまる4つ目の症状である「胃腸の症状」が抜け落ちてしまうとして、「胃腸の症状」も追加範囲に入れて欲しいと要望を出した。
 これに対し座長は「意見として承り、今後の進捗については事務局から報告してもらう」と話した。

除外する対象案に「ナボリンEB錠(エーザイ)」「 ナボリンS(エーザイ)」「 アリナミンEXゴールド(武田コンシューマーヘルスケア)」

 除外する薬効に関しては、事務局は次の4薬効群を提示した。

薬効群:強心薬
成分名: ユビデカレノン
効能・効果: 動悸、息切れ、むくみの緩和
考え方:
・左記症状は、安全性の観点から慎重に考えるべきか
・一方で、当該成分は、エネルギー産生を高め、血流を良くするものであり、健康増進目的で
も使用されうる
・類似の効能を謳う健康食品(コエンザイムQ10)もある


薬効群:ビタミン主薬製剤
成分名: メコバラミン
効能・効果: 筋肉痛・関節痛、神経痛、手足のしびれ、眼精疲労
考え方:
・他のビタミン成分と一緒に配合されていることが多く、栄養補給等の目的でも使用されうる

薬効群:カルシウム主薬製剤
成分名: L-アスパラギン酸カルシウム
効能・効果: 低カルシウム血症、カルシウム補充
考え方:
・効能効果にカルシウム補充目的を含んでおり、健康増進目的でも使用されうる


薬効群:歯科用材(う蝕予防)
成分名: フッ化ナトリウム
効能・効果:う蝕予防
考え方:
・効能効果がう蝕予防であり、当該薬剤のみでは特定の保険給
付を代替しないと考えられる


 この案に対し、黒川氏は、メコバラミンの対象除外に強く反対した。
 メコバラミンは、「ナボリンEB錠(エーザイ)」「 ナボリンS(エーザイ)」「 アリナミンEXゴールド(武田コンシューマーヘルスケア)」に配合されているなど、根強い人気のある商品が少なくない。
 黒川氏は「メコバラミンは薬理作用として、神経修復作用を有しており、医療用医薬品では末梢性神経障害の治療薬として効能効果が認められている。栄養補給目的ではなく、治療薬である」と指摘した。
 平野健二氏(日本チェーンドラッグストア協会理事)も、残して欲しいと要望した。
 
 これに対し、座長の菅原氏は、「医療上の治療を代替しているのかについては慎重に考えるべき」と話し、除外としない意見には否定的な立場をとった。

 3つ目の除外対象の経過措置については、2022年1月を起点として4年とする方向で意見が取りまとめられた。

税制以外の政策も今後議論

 4つ目には今後の議論の方向性も話され、主に「そもそも医療費の適正化効果はどのように検証可能か」についてや、「セルフメディケーションを推進するために税制以外に政策のツールとしてどのような観点があるか」、また「ステークホルダーの連携」などについて検討されることとなった。事務局は厚労省内の部局横断的に検討していく方向を示した。

 
*******
 追加する対象は思った以上に多くなりそうな気配だ。
 そもそも対象の上限額等が引き上がらない限り、セルフメディケーション税制の利用が拡大するかは不透明ではあるが、対象成分が増大することは好ましいといえるだろう。

 議論の中で印象的だったのは、平野氏がセルフメディケーションの基礎はヘルスリテラシーであり小中学校での教育が必要だとのべたシーンだ。
 その意見に対し、宮川 政昭氏(日本医師会 常任理事)が共感を示し、「ただ販売するだけで
なくドラッグストアが健康サポート薬局やヘルスリテラシーの部分を担うということであれば、ご支援していく」と語った。
 日本医師会がドラッグストアの機能向上に期待をかけるシーンだった。
 こうしたシーンでしっかり岩月進氏(日本薬剤師会 常務理事)は発言を求め、「ドラッグストアだ、健康サポート薬局だということではなく、自分の健康に関心を持って対処することをこの機会に見直してくださいというのがこの税制でもあり、薬剤師の機能が重要となるセルフメディケーションもあると認識しているので、これを進めるということに異議はない」と話した。

 一方、最も気になったのは、規制改革会議で求められたスイッチOTCの「目標のあり方」について、最後の取りまとめでも座長は触れなかったことだ。
 次回、「目標設定」が議論されるのか注視していきたい。

【規制改革会議】スイッチ促進の目標を設定へ。ジェネリック薬のような数量目標なるか

https://www.dgs-on-line.com/articles/754

【2021.02.24配信】内閣府の規制改革推進会議は2月24日、医療・介護ワーキング・グループを開催し、「一般用医薬品(スイッチOTC)の選択肢の拡大」を議論した。その中で、厚労省は、「スイッチ化を進めうる分野や目標の在り方等について検討を進めたい」と回答。規制改革推進会議では「進捗をKPIとして管理する」ことを求めていたが、いまだKPIが定まっていないとの批判が出たようだ。ジェネリック医薬品ではKPIとして数量ベースでの目標値などが定められたことから推進した経緯があり、KPI設定には政策推進力があることが知られている。こうした数値目標が設定されるのかどうか、注目される。

この記事のライター

関連する投稿


【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【2025.12.19配信】自民党と日本維新の会がまとめた税制大綱が公表された。セルフメディケーション税制について期限延長と対象の変更等を記載。薬局製造販売医薬品についても、税制の対象となる一般用医薬品等と同じ成分を有効成分として含有するものを対象に加える。


【厚労省】セルメ税制の対象薬拡大を議論/胃腸薬を追加方針

【厚労省】セルメ税制の対象薬拡大を議論/胃腸薬を追加方針

【2025.05.26配信】厚生労働省は5月26日、「第3回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を開き、セルフメディケーション税制の在り方についてを議論し、現在は対象となっていない胃腸薬などを対象とする方向が示された。


【セルメ税制】OTC薬協、全てのOTC薬への対象拡大要望

【セルメ税制】OTC薬協、全てのOTC薬への対象拡大要望

【2025.03.24配信】日本OTC医薬品協会はセルフメディケーション税制について、対象を全てのOTC医薬品やOTC検査薬に拡大することや、控除上限額を20万円まで引き上げることなどを要望した。3月24日に厚生労働省が開いた「セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」で表明したもの。同検討会は夏までに同税制見直しに関するとりまとめを行う予定。


【ドラッグストア協会】セルメ税制、「OTC薬協とタッグ組み推進を決定」/店頭のデータに基づく資料提示予定

【ドラッグストア協会】セルメ税制、「OTC薬協とタッグ組み推進を決定」/店頭のデータに基づく資料提示予定

【2025.01.30配信】日本チェーンドラッグストア協会は1月30日に会見を開き、セルフメディケーション税制に関して、日本OTC医薬品協会とタッグを組んで推進することを決めたと説明した。


【ドラッグストア協会】「本丸はスイッチOTC」/セルフメディケーション有識者会議へ期待

【ドラッグストア協会】「本丸はスイッチOTC」/セルフメディケーション有識者会議へ期待

【2021.06.03配信】日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は6月3日に定例会見を開き、JACDSから委員も参加している厚労省の「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」でセルフメディケーション税制の対象品目が決まったことを報告した。「今後は全OTC医薬品が対象になるよう活動していく」とした。関連して、「本丸はスイッチOTC(の推進)だ」として同会議の進展に期待を寄せた。


最新の投稿


【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【2025.12.19配信】自民党と日本維新の会がまとめた税制大綱が公表された。セルフメディケーション税制について期限延長と対象の変更等を記載。薬局製造販売医薬品についても、税制の対象となる一般用医薬品等と同じ成分を有効成分として含有するものを対象に加える。


日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」新発売/第一三共ヘルスケア

日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」新発売/第一三共ヘルスケア

【2025.12.18配信】 第一三共ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、社長:内田高広氏)は12月18日、日本初となるOTC緊急避妊薬「ノルレボ」(要指導医薬品)を2026年2月2日(月)に発売すると公表した。価格(メーカー希望小売価格)は1錠 6800円(税込み 7480円)。


【厚労省】長期収載品の選定療養「患者負担2分の1以上」提案/中医協

【厚労省】長期収載品の選定療養「患者負担2分の1以上」提案/中医協

【2025.12.17配信】厚生労働省は12月17日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、長期収載品の選定療養についてを議題とし、「患者負担2分の1以上」を提案した。


【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【2025.12.11配信】日本保険薬局協会は12月11日に定例会見を開き、会長の三木田慎也氏が次期調剤報酬改定の要望事項を説明した。調剤基本料に紐づいて区分のある地域支援体制加算について、「基本料1」と「それ以外」での要件や点数を統一することを求めた。


【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【2025,12.10配信】日本病院薬剤師会(日病薬)は12月10日に定例会見を開き、厚労省中医協で議論の進んでいる次期診療報酬改定について、期待できるとの見方を示した。日病薬が要望事項に挙げていた転所時の情報共有への評価などが俎上にのっていることなどを評価した。


ランキング


>>総合人気ランキング