「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大」に関する「規制改革実施計画」の文言と、厚労省が示した「対応方針案」の文言を、あえて全文掲載する。なお、「規制改革実施計画」は7月17日に閣議決定されているもの。
■規制改革の内容①
「厚生労働省は、一般用医薬品の安全性・有効性の視点に加えて、国民の健康の維持・増
進、医薬品産業の活性化なども含む広範な視点から、スイッチOTC化の取組をはじめとするセルフメディケーションの促進策を検討するため、同省における部局横断的な体制構築を検討する。また、上記体制において、経済性の観点も含め、スイッチOTCの推進策を検討する。具体的には、業界団体の意見も聞きながらスイッチOTC化の進んでいない疾患領域を明確にする。上記に基づき、スイッチOTCを促進するための目標を官民連携して検討・設定し、その進捗状況をKPIとして管理する。促進されていない場合は原因(ボトルネック)と対策を調査し、PDCA管理する。
■厚労省の対応方針案
「●セルフメディケーションの促進のため、スイッチOTCによる選択肢の拡大に加えて、セルフメディケーション税制などによる国民の経済的インセンティブ、OTC薬の適正な選択・使用に関する薬剤師等の専門家による相談体制の推進などの取り組みを総合的に進める。●セルフメディケーションの促進策を部局横断的に検討する体制を厚労省内に構築すべく、現在、検討・調整を進めている。●上記体制においては、本施策に関する進捗管理を含む総合調整、国民への施策の周知広報、業界団体との連携などの機能を具備することを検討している。」
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業界団体とも連携できる部局横断的な体制整備については、これまでにない踏み込んだ施策といえる。一方で、実施計画が示した「スイッチOTC化の進んでいない疾患領域を明確にする」や「スイッチOTC化を促進するための目標を設定」などには触れておらず、微妙なニュアンスの違いを残している。
■規制改革の内容②
「●評価検討会議の役割は、提案のあった成分のスイッチOTC化を行う上での課題・論点等を整理し、薬事・食品衛生審議会に意見として提示するものであり、スイッチOTC化の可否を決定するものではないことを明確化する。●消費者等の多様な主体からの意見が反映され、リスクだけではなく必要性についても討議できるよう、消費者代表を追加するなどバランスよく構成されるよう評価検討会議のメンバー構成を見直す。●スイッチOTC化するにあたって満たすべき条件、スイッチOTC化が可能と考えられる疾患の領域、患者(消費者)の状態や薬局・薬剤師の役割についても議論・検討し具体化する。●全会一致が原則とされている評価検討会議の合意形成の在り方を見直し、賛成、反対等多様な意見があり集約が図れない場合は、それらの意見を列挙して、薬事・食品衛生審議会に意見として提示する仕組みとする」
■厚労省の対応方針案
「●評価検討会議では、要望成分のスイッチOTCかを行う上での課題・論点を整理し、評価検討会議としての意見をまとめ、薬事・食品衛生審議会に意見として提示することとし、可否の決定は行わないこととする。●多様な意見があり数役が図れない場合は、それらの意見を整理して提示することとする。●より多様な主体からの参加を求めることとし、消費者代表をはじめ、産業界や流通・販売の関係者などから複数名の委員の追加を行う。●評価検討会議においてこれまでの共通課題・ポイント等を整理し、薬局・薬剤師等による販売体制、スイッチOTCの満たすべき要件等を取り纏める」
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この部分に関しては、10月28日に開かれた「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」でも提示、合意されている部分であり、厚労省案も「可否の決定は行わないこととする」など、断定的な言い回しを用いている。
海外に比べ、遅れが指摘されるわが国のスイッチOTCの現状。今回の厚労省案でも、どこまで実効性を伴うか、測りきれないものがある。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が提言するように、「骨抜きではなく、実効性を伴う」施策が求められる。JACDSは11月4日に開かれた自民党の「予算・税制等に関する政策懇談会」で、厳選した5成分の早期スイッチを要望している。吐き気改善薬「ナウゼリン」のほか、片頭痛治療薬「イミグラン」、胃潰瘍薬であるPPI「オメプラゾン」「オメプラール」、食後過血糖改善剤「ベイスン」、アレルギー性結膜炎薬「パタノール」だ。
これらのスピード感ある上市という結果をもって、施策の「実効性」を測る以外にないだろう。
【ドラッグストア協会がスイッチOTC化要望】吐き気改善薬「ナウゼリン」や片頭痛薬「イミグラン」のほか胃潰瘍薬のPPI、食後過血糖改善剤
https://www.dgs-on-line.com/articles/492日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は医療用医薬品からOTC医薬品への転用(スイッチOTC)の拡大を求めている。11月4日に開かれた自民党の「予算・税制等に関する政策懇談会」では、厳選した5成分の早期スイッチを要望した。吐き気改善薬「ナウゼリン」のほか、片頭痛治療薬「イミグラン」、胃潰瘍薬であるPPI「オメプラゾン」「オメプラール」、食後過血糖改善剤「ベイスン」、アレルギー性結膜炎薬「パタノール」だ。JACDSはOTC医薬品業界とも意見調整済み。政府、厚生労働省にもスイッチOTC推進の機運が高まる中、これまでにないスピード感の発売に期待がかかる。生活習慣病関連薬も挙げられており、発売となれば市場へのインパクトも大きい。
【一変したスイッチOTC検討会議】今後はドラッグストアも参画か
https://www.dgs-on-line.com/articles/473【2020.10.30配信】10月28日、厚生労働省は医療用から一般用医薬品への転用を話し合う「第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)を開催した。第12回の模様を一言でいうならば、「一変した」といっても過言ではない。現実的な推進へ舵を切った。政府の規制改革実施計画に対する対応については、ほぼ異論が出ず、これまでスイッチの可否を握ってきた検討会が、スイッチ促進へ向けた課題解決案を話し合う場へと姿を変える見通しとなった。一般用医薬品における服薬フォローアップや医師への情報フィードバックなどが課題として話し合われる見込みだ。