【ドラッグストア協会がスイッチOTC化要望】吐き気改善薬「ナウゼリン」や片頭痛薬「イミグラン」のほか胃潰瘍薬のPPI、食後過血糖改善剤

【ドラッグストア協会がスイッチOTC化要望】吐き気改善薬「ナウゼリン」や片頭痛薬「イミグラン」のほか胃潰瘍薬のPPI、食後過血糖改善剤

 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は医療用医薬品からOTC医薬品への転用(スイッチOTC)の拡大を求めている。11月4日に開かれた自民党の「予算・税制等に関する政策懇談会」では、厳選した5成分の早期スイッチを要望した。吐き気改善薬「ナウゼリン」のほか、片頭痛治療薬「イミグラン」、胃潰瘍薬であるPPI「オメプラゾン」「オメプラール」、食後過血糖改善剤「ベイスン」、アレルギー性結膜炎薬「パタノール」だ。JACDSはOTC医薬品業界とも意見調整済み。政府、厚生労働省にもスイッチOTC推進の機運が高まる中、これまでにないスピード感の発売に期待がかかる。生活習慣病関連薬も挙げられており、発売となれば市場へのインパクトも大きい。


ベイスンは食後過血糖に限定で重症化予防に

 緊急避妊薬のほか、高脂血症用剤等の生活習慣病関連治療薬など、「生活者からの要望の高い医薬品」の迅速なスイッチOTC化を求めている。
 ナンバリングの振られた要望成分は1~5まで、以下の通りの成分。

1.製品名 ナウゼリン(協和キリン)
成分名 ドンペリドン
薬効分類名 消化管運動改善剤
効果効能 悪心・嘔吐・胸やけ
ジェネリック発売有無 有
剤形 内服
薬価(円)  5mg:8.6/錠、10mg:13.2/錠
背景 1982年医療用医薬品として発売。海外ではスイッチOTC化(英国、イタリア、スイス他)。
スイッチ化要望理由 吐き気、胸やけ等で使用されているが、現在OTC医薬品では代替薬は無い。吐き気を伴う疾患は多く、患者からの求めは多い。家庭に常備することで患者QOLの向上に繋がる

2.製品名 イミグラン(GSK)
成分名 スマトリプタンコハク酸塩
薬効分類名 片頭痛治療剤
効果効能 片頭痛
ジェネリック発売有無 有
剤形 内服
薬価(円)  50mg:646.4/錠
背景 2001年医療用医薬品として発売。片頭痛薬の第一選択薬。片頭痛患者は約840万人。
スイッチ化要望理由 最初に発売された第一世代の片頭痛薬であり、エビデンスも十分にある。片頭痛薬のOTC医薬品は現在無く、患者は効き目の弱い鎮痛薬で緊急時に対応している

3.製品名 オメプラゾン(田辺三菱)、オメプラール(アストラゼネカ)
成分名 オメプラゾール
薬効分類名 プロトンポンプ・インヒビター(PPI)
効果効能 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎
ジェネリック発売有無 有
剤形 内服
薬価(円)  10mg:58.7/錠、20mg:90.5/錠
背景 ・1991年医療用医薬品として発売。海外ではスイッチOTC化(米国、英国、フランス他)
スイッチ化要望理由 H2ブロッカーの売上は衰退し、世代交代が必要。胃潰瘍、十二指腸潰瘍患者は多く、減少する傾向は無い。医療用では漫然と処方されることも多く、OTC化する事で医療費の削減に繋がる。

4.製品名 ベイスン(武田テバ)
成分名 ボグリボース
薬効分類名 食後過血糖改善剤
効果効能 糖尿病の食後過血糖の改善
ジェネリック発売有無 有
剤形 内服
薬価(円)  0.2mg:26.7/錠、0.3mg:37/錠
背景 1994年医療用医薬品として発売。・予備軍含めて国内の糖尿病患者は約1600万人
スイッチ化要望理由 薬局での血糖値検査後の結果に対応できる。食後過血糖の改善に限定して使用することで、重症化予防に繋がる。重症化による人工透析リスクの軽減、医療費の削減に繋がる

5.製品名 パタノール(ノバルティス)
成分名 オロパタジン
薬効分類名 抗アレルギー点眼剤
効果効能 アレルギー性結膜炎
ジェネリック発売有無 無
剤形 外用(点眼)
薬価(円)  176.3/mL
背景 2006年医療用医薬品として発売。抗アレルギー点眼薬の第一選択薬
スイッチ化要望理由 抗アレルギー点眼薬として最も処方頻度が高く、広く使用されている。現在、抗アレルギー点眼薬のOTC医薬品は古い世代が主流で、患者QOLの向上に繋がっていない。

骨抜きではなく、実効性を

 JACDSは、「医療機関任せの医療から脱却し、国民一人ひとりが自らの健康に責任を持ち、軽度な不調は薬剤師、登録販売者のサポートとともに自ら手当てするというセルフメディケーションの実践を促すことが、拡大を続ける国民医療費の抑制を図る新時代の適正な医療制度実現のカギを握っている」と主張。

 スイッチOTC化はグローバルでの医薬品市場獲得を目指す上でも重要とした上で、「スイッチOTC化実績は、過去低調」と指摘。「国民の選択肢拡大を図るべく、その促進について強く要望する」とした。規制改革実施計画に記載のある「厚生労働省の部局横断的な体制構築」、「スイッチOTCの開発目標設定」を含め、「骨抜きではなく、実効性を伴うもの」になることを要望した。

検査薬活用など店頭の機能向上も不可欠

 スイッチOTCをめぐっては、10月28日に開かれた「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、規制改革実施計画に基づき、「スイッチOTC化の可否を決定するものではない」ことが確認されるなど、動きが活発化している。同会議ではスイッチ化の課題抽出や改善策が話し合われることになる一方、実際のスイッチ化は薬機法にのっとり、「製薬企業が厚生労働大臣に申請し、薬事・食品衛生審議会での議を経て取り扱いが決まる」ことになるため、実際の企業の申請意欲も一つのカギとなると考えられる。こうした中、産業界側から意欲的な5成分が提示された意味は小さくなく、今後、スピード感の持った上市、市場創造に期待がかかる。
 
 そこに向けては、検査薬活用など、生活者の状況を継続的に把握できる薬局・ドラッグストアの機能向上も不可欠だ。

 なお、自民党には上記スイッチOTC推進のほか、「デフレ化の一因となる総額表示義務に反対」、「セルフメディケーション税制の拡充と延長」、「類似市販薬の保険適用除外」を要望した。

【一変したスイッチOTC検討会議】今後はドラッグストアも参画か

https://www.dgs-on-line.com/articles/473

【2020.10.30配信】10月28日、厚生労働省は医療用から一般用医薬品への転用を話し合う「第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)を開催した。第12回の模様を一言でいうならば、「一変した」といっても過言ではない。現実的な推進へ舵を切った。政府の規制改革実施計画に対する対応については、ほぼ異論が出ず、これまでスイッチの可否を握ってきた検討会が、スイッチ促進へ向けた課題解決案を話し合う場へと姿を変える見通しとなった。一般用医薬品における服薬フォローアップや医師への情報フィードバックなどが課題として話し合われる見込みだ。

規制改革会議、スイッチOTC促進で答申。「検討会議の役割は可否の決定ではないことの明確化を」

https://www.dgs-on-line.com/articles/168

【2020.07.02配信】 規制改革会議は7月2日、「規制改革推進に関する答申」をまとめ、公表した。スイッチOTC促進に関して、一定の紙幅がとられており、現在の評価検討委員会の役割について「意見提示するものであり、スイッチOTC化の可否を決定するものではないことを明確化する」とするなど、踏み込んだ記載となっている。今後、厚生労働省内で部局横断的な体制構築と、目標設定、KPI管理などが必要とした。

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