独自インタビュー【後発薬の供給問題】厚労省医政局・安藤公一経済課長に聞く

独自インタビュー【後発薬の供給問題】厚労省医政局・安藤公一経済課長に聞く

【2021.11.18配信】後発医薬品の供給問題の展望について、厚生労働省医政局経済課長の安藤公一氏に聞いた。現在、供給不安に陥っている品目数は3000品目以上ともいわれており、足下でも供給停止や出荷調整の情報が出る状況にある。状況の改善に向けて、どのような施策を考えているのか。安藤課長は生産回復までの短期的な施策、そしてこうした事態を招かない市場にしていくための中長期的な施策のあり方について、率直な意見を語ってくれた。


定量的な現状調査を開始

 ――後発医薬品の供給に支障が出ている品目数が3000品目ともいわれています。一方で、これらは「出荷調整」などの情報が出ている品目を含んでおり、実際に供給困難にまで陥った事例がどの程度なのかについて判然としない印象を持っています。マクロでみた時に、現在の後発医薬品にかかわる供給状況をどのようにとらえていますか。

 安藤 後発医薬品の安定供給をめぐる問題については、人によって、あるいはお立場によって、様々なご指摘をいただいております。その中で、ご指摘の通り、定量的な状況について調べなければいけないと思っており、われわれの方でも動き始めている状況です。
 現場の方々からお聞きしていることを踏まえると、今回の後発医薬品の問題は、小林化工や日医工、最近では長生堂製薬といった企業で製造工程での問題が発覚し、薬機法に基づき一定の行政処分が行われ、当該個社の製造している医薬品の供給がストップしたことを端緒として、これらの医薬品の同一成分の代替医薬品にまで影響が及んでいる状況にあると認識しております。その影響の規模については、3,000品目以上と伺っており、後発医薬品の全体の品目数が約1万品目であることを踏まえると、もはやこれは看過できない規模であろうと考えております。
 一方で、3000品目以上の全てが完全に供給が止まっているということではなく、もちろんそのような医薬品もあると思いますが、その多くは、出荷調整が行われていることにより、通常ベースに比較して供給量が減少しているということだと理解しています。ただ、必要な医薬品が不足しているという状況であることには変わりはありませんので、まず重要なことは、マクロ面だけでなく、それこそ品目ごとといったミクロ面でも、しっかりと定量的な状況を把握することだと思っております。
先ほども申し上げたとおり、「もはや看過できない状況になっている」と考えており、国としてもその実態把握に乗り出したということです。

 ――今のお話をお聞きすると、供給量は減っていないのに入手困難となっている医薬品もある可能性があるということですね。それはどのような理由が考えられるのですか。

 安藤 まだ結果が出ていませんので、仮定でお話することは適切ではないと思いますが、例えば、出荷調整等により、特定の医薬品が不足しそうだという情報があったときに、「先々が不安だからしっかり確保しておこう」と通常以上の注文が行われている可能性はあると思います。メーカーでは、一定の増産も行われていると承知しているので、同一成分でみると、実は平時と供給量がそこまで大きく変わらないという品目も中にはあるのかもしれないと思いますが、そのような場合でも、少しずつでも多めの注文が行われることによって、必要な医療機関や薬局全てに行き届かないということも起きている可能性もあるのではないかと。
 
 ――薬局が困る状況を薬局自ら生み出してしまっている可能性があるのですね。

 安藤 私はそれは薬局として自然な行動だと思っています。医薬品を必要とされている患者さんが目の前におられる中で、薬局に渡す医薬品がない、それは最も困ることであり、それを回避するための行動を取ることはむしろ当然のことだろうと。しかし、それが一つ一つの薬局で見ると「少しづつ」であったとしても全体でみるとそれなりの量の発注となってしまい、そのことで結果的に薬局によっては「渡す薬がない」という事態、そのような医薬品の偏在が生じている可能性もあるのではないかと思っております。

 ーーそうですね。「モノがない」という情勢の時には、マクロでみると問題はなくても不思議と不均衡が起こるということが往々にしてありますね。それは誰かが意識して何かをしているということではなく。

マクロでみても足りない後発薬を処方医に情報提供

 ――調査の結果、どのような対応をとることが考えられますか。

 安藤 それは品目ごと、その状況により、講ずべき対策は変わってくると思っています。一つは、マクロで見たときに、代替品も合わせて同一成分の医薬品でみれば、実は通常時の供給量と同等程度の供給が確保されているもの。いわば、マクロで見れば供給量が充足されているにもかかわらず、正確な情報がないが故に、出荷調整がかかり、先行き不安感もあって、先ほど申し上げた医薬品の偏在が生じている場合です。そのような品目については、何よりも正確な情報を提供させていただくとともに、これらの品目の出荷調整については、一斉に解除するよう依頼することが必要だろうと考えております。
 一方、マクロでみても、「全然足りない」という品目については、そのような現状について、正確な情報提供を行うことは当然ですが、それに加えて、特に出荷調整の原因となったおおもとの品目について、いつ頃から出荷再開できそうなのか、今後の出荷に向けた見通しをメーカーから聴き取ってお伝えしていくことも重要であると考えております。
 その上で、出荷再開まで時間を要する品目については、その他のメーカーに対して、可能な範囲での増産を依頼することも必要ですし、医療機関に対して、現状を丁寧にお伝えしつつ、処方の変更を検討いただくようお願いすることも必要であろうと考えています。その際、国が行うことなので、もちろん一つ一つの医療機関にお願いすることは困難ですが、薬局の方々とも情報共有させていただき、現在、現場で行っていただいている医療機関との調整に少しでもお役に立てればと考えているところです。
 現在、現場において、必要な医薬品を患者さんに提供するために、メーカー、卸業者、薬局、医療機関の方々が大変なご苦労をされていると承知しており、そのようなご負担を少しでも軽減するという姿勢で対応してまいりたいと考えております。

 ――調査結果はいつごろ公表されますか。

 安藤 状況は日々刻々と変わっているので、遅くなっては意味がなくなってしまいます。実態把握は速やかに行い、不十分でも、できることから申し上げた対応も行っていきたいと考えております。 

 ――場合によっては、調査の結果で供給量は平時から減っていないと判明した医薬品についてですが、「規模の大きなところが買い占めているのではないか」と、言葉は悪いですが、薬局さん内で犯人探しみたいになったらいやですね。

 安藤 それはないと思っていますし、申し上げたとおり、知りたいのは、その後の対応との関係で、欠品している品目とその代替品について、通常時と比較して供給量がどうなっているのかという情報です。個別の薬局等への医薬品の供給量がどうなっているのかまで調べることは考えておりません。

後発医薬品の薬価のあり方は考えていかなければいけない

 ――お話しいただいた内容は比較的、この数年間をどう乗り切るかという短期的な戦略のお話だと思います。一方で、中長期的に、今回起きた後発薬の問題を解消していくためにはどのような施策が必要だと考えていますか。

 安藤 中長期の対策を考える上では、そもそも今回の問題の本質は何かをまずは考える必要があると思っています。今回の問題がどこまで構造的な問題なのか、私自身、もう少し頭を整理したいと考えておりますが、医薬品産業ビジョンにもあるように、これまで国の使用促進策もあって、後発医薬品の使用割合8割を目指す中で、メーカーとして、価格競争によるシェア獲得にかなりの力が注がれ、過剰な生産が行われることで、その結果として、品質確保が疎かになってこなかったか。もし、そうであるならば、やはり問題の本質は後発医薬品メーカーのこれまでのビジネスモデルにあると思いますし、少なくとも使用割合として8割をほぼ達成し、「価格が低い分、数量で」ということが、今後は難しくなってくることを踏まえると、ますますこのようなビジネスモデルでは厳しい状況になると思われます。即ち、この点を改善していかないと、構造問題として、今般の後発医薬品の供給問題が再び起こりうるのではないかということです。
 こうした課題に対して、行政として何をすべきかという点についてですが、なかなか業界としてのビジネスモデルという話になると、行政として、直接的に関与することは難しいとは思います。ただ、少なくとも、品質確保と安定供給という二つの命題を満たす企業が市場から適切に評価されるよう、薬価の在り方も含めて、そのための環境整備を行っていくことは行政として考える必要があると思っています。
 それと、こうしたビジネスモデルへの転換は一朝一夕では難しいことを考えると、今般のような供給問題が再び起こりうることも想定していくことも必要だと思います。今般の問題も踏まえて、よく整理したいと思いますが、安定供給という観点で、一定の法的な枠組みを検討することも考えていくことが必要であると思っています。

 ――ここまで一斉に問題が噴出したのは、小林化工を発端に、行政として「ここは膿を
出しきろう」という考えが働いたのでしょうか。

 安藤 行政の処分だけでなく、企業による自主点検などもありました。企業がGMPなどと照らして点検した結果、自社の製造工程が不適切であることがあったということで、出荷を停止したり、場合によっては自主回収したところもあったと聞いています。医薬品の安定供給を所管する立場として、その状況は十分に留意する必要があると思いますが、この際として、後発医薬品メーカーにおいて、品質確保の重要性を再認識いただき、問題があった場合には、その改善を図ることは当然ですが、そのような問題が生じた背景までよく検証いただいて、企業のガバナンス体制の在り方も含めて、しっかりと見直していただくことは私も賛同いたします。
 ただ、やはり、企業に全てお任せするということではなく、先ほども申し上げたように、行政としても、優良な企業を下支えできるような環境整備について、検討していくことも当然必要だと思っています。
  
 ――最後ですが、薬局薬剤師さんへメッセージをお願いできますか。

 安藤 今回の医薬品供給問題において、患者さんと一番身近で相対されているのが薬局薬剤師さんであり、その分、大変ご苦労されていると承知しております。患者さんに必要な医薬品を届けるという思いは薬局も行政も同じだろうと思っています。全ての製造が復活するまで、以前通りの状況になるにはまだ少し時間がかかると思いますが、それまでの間、薬局の皆さんの業務負担が少しでも軽減できるよう、そのような視点で行政としても取り組んでいきたいと思っておりますので、引き続き、ご協力をいただけたらと思います。

 ――分かりました。ありがとうございました。

「薬局をはじめ関係者の方々の業務負担が少しでも軽減できるような視点で取り組んでいきたい」と語った安藤経済課長

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