院外調剤市場における選定療養対象薬剤の推計調剤金額トップはヒルドイド約23億円
医療情報分析サービスを手がける株式会社インテージリアルワールド(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:佐藤 暢章氏)は、独自に運用する統合医療データベース Cross Fact の 2024 年 10 月データを基に、医療用医薬品の処方動向を調査・分析した。
2024年10月1日より「後発医薬品がある先発医薬品(長期収載品)の選定療養」がスタート。これは医療保険制度上の仕組みのひとつで、医療上の必要性がある場合を除いて患者の希望により先発医薬品の調剤を受ける場合には、「特別料金」の負担が必要となるもの。医療上の必要性がないにも関わらず、患者が使用感など薬の有効性に関係のない理由で先発医薬品を希望する場合には、先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1相当を患者が負担することになる。
2023年9月時点での全国の後発医薬品の使用割合は 80%を超えているが、選定療養の導入はどの程度先発医薬品の調剤に影響を与えているのか、院外調剤市場における医療用医薬品の動きを見た。
その結果、2024年9月の院外調剤市場における選定療養対象薬剤の推計調剤金額はヒルドイドが最も高く約 23 億円、10 位のアジルバで約 4 億円だった。10 月に選定療養が導入されると多くの薬剤で調剤金額が減り、上位10製品のうち6製品が3割以上減少していた。
10月は9月に比べ平日が多く、診療日が多いことから調剤量が多くなりやすいことを考えると、選定療養の影響はもっと大きい可能性もある。
2024年10月の治療薬変更患者数は前年同月比55%増/選定療養導入で後発薬への切替進展が明らか
次に、選定療養が導入されることで薬剤を変更する患者がどの程度増えているかを、患者数の多い高血圧治療薬市場の治療薬変更患者数の動きで見た。
高血圧治療薬は院外調剤市場で毎月 60 万人前後の患者が治療薬を変更している。2023年7月には患者数が急増し 110 万人(前年同月比 77%増)を超えているが、これはアジルバの後発医薬品が2023年6月に発売となり、先発医薬品から後発医薬品への切替が急激に進んだ影響だ。2024年10月の治療薬変更患者数は100万人(前年同月比 55%増)を超え、後発医薬品発売に匹敵する規模で切替が進んだことが見受けられる。
患者の自己負担が増える仕組みを導入することにより、先発医薬品から後発医薬品への切替が進んだことが明らかになった。
今後も切替は進んでいくのかについて、同社では、慢性疾患治療薬の場合1~3カ月分の処方をもらうことが多いため、選定療養導入前の来院患者の多くは12月までに再来院することが想定される中で、後発医薬品は発売後 3 ヵ月程で変更患者数が落ち着く傾向にあり、選定療養導入による後発医薬品への切替も同じような期間で落ち着くことも想定されるとしている。