後発医薬品使用の数値目標については、令和6年3月14日開催の社会保障審議会(医療保険部会)において、令和6年度からの新目標が決定されていた。一方で、後発医薬品産業がいまだ品質や安定供給の観点から脆弱性を抱えていることが明らかとなっている状況でもある。
厚労省では、こうした状況を踏まえ、このほど、現下の後発医薬品を中心とした医薬品の供給不安に係る課題への対応を基本としつつ、後発医薬品を適切に使用していくための取組を整理するため、2013年(平成25年)に策定した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を改訂。「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」(ロードマップ)を策定した。
また、新目標においてバイオ後続品の数値目標が新たに副次目標の1つとして設定されたことを踏まえ、ロードマップの別添として、「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」も策定した。
なお、数値目標は主目標として「医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上(旧ロードマップから継続)」。副次目標①は「2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上」。副次目標②は「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」。
新目標の達成に向けた取組施策/金額ベースでの薬効分類別等の後発医薬品置換率情報の提供など
ロードマップでは、新目標の達成に向けた取組施策として、以下の「使用環境の整備に係る取組」を掲げる。
・的を絞った使用促進を可能とするため、数量ベースに加え、金額ベースでの薬効分類別等の後発医薬品置換率情報の提供【令和6年度開始】
・都道府県協議会を中心として、金額ベースでの薬効分類別等の後発医薬品置換率も参考に、後発医薬品の使用促進を実施【令和6年度開始】
・都道府県医療費適正化計画への、後発医薬品の数量・金額シェア、普及啓発等の施策に関する目標や取組の設定等による、後発医薬品の使用促進【引き続き実施】
・差額通知事業の推進による、患者のメリットの周知【引き続き実施】 等
「医療保険制度上の事項に係る取組」は以下の通り。
・長期収載品について、保険給付の在り方を見直し、選定療養の仕組みを導入【令和6年10月から開始】
・後発医薬品の供給状況や医療機関や薬局における使用状況等も踏まえ、診療報酬における後発医薬品の使用に係る評価について引き続き中央社会保険医療協議会等で検討【引き続き実施】 等
「安定供給・国民の信頼確保に向けた取組」/供給不安報告の令和6年度からの実施など記載
一方、「安定供給・国民の信頼確保に向けた取組」も掲げた。
「品質確保に係る取組」は以下の通り。
・医薬品医療機器総合機構と都道府県による、リスクの高い医薬品製造所に対する、合同による、無通告立入検査の実施【令和5年度開始】
・全ての後発医薬品企業による、製造販売承認書と製造実態に係る自主点検の実施【令和6年度実施】
・日本ジェネリック製薬協会を中心とした、外部研修や人事評価等による、クオリティカルチャー醸成に向けた、企業の人材育成【令和6年度開始】 等
「安定供給に係る取組」は以下の通り。
・供給不足が生じるおそれがある場合(供給不安報告)又は生じた場合(供給状況報告)に、企業が厚労省へ報告する制度を整備【令和6年度開始】
・後発医薬品企業による、安定供給に係る情報の公表【令和6年度開始】
・自社の供給リスクを継続的に把握・分析することを可能とする、医薬品企業向けのマニュアルの作成【令和6年度実施】
・市場参入時に安定供給確保を求め、医薬品の需給状況の把握・調整を行うほか、供給不安発生時には供給不安解消策を講じる「安定供給確保に係るマネジメントシステム」の法的枠組の検討【令和6年度結論】
・日本ジェネリック製薬協会は、安定供給責任者会議を開催し、安定供給に係る各企業の好事例や競争政策上の観点に留意しつつ供給不安解消に向けた企業間での情報共有等を促す【令和6年度開始】 等
「後発医薬品産業の在るべき姿」は別途策定予定
各取組に加え、取組の実施状況や数値目標の達成状況は定期的にフォローアップするとともに、令和8年度末を目途に状況を点検し必要に応じ目標の在り方を検討する。
「後発医薬品産業の在るべき姿」を実現するための対策に係る取組については、引き続き検討が必要であることから、別途、本ロードマップの別添として策定予定とした。
2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上
他方、「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」では、主目標は「医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上(旧ロードマップから継続)」、副次目標①は、2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上。副次目標②は、後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上。
各種取り組み施策の中では、保険者インセンティブ制度において、保険者によるバイオ後続品の普及啓発に係る指標の追加を検討(令和7年度結論)なども掲げた。