他社との協業で「原薬調達の効率化にも」
東和薬品の田中氏は、講演の中で、医薬品安定供給に向けて業界ができることの1つが企業間協業であるとし、推進していく方針を示した。
「企業間の連携・協力」に関しては、厚労省「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方 に関する検討会」の報告書でも対策の方向性の1つとして記載されていたが、当事者である企業としても推進していく方針を示した格好。
田中氏は現在は自社複数工場による生産のバックアップ体制のために、必要な一変申請などを進めているとし、柔軟性、増産可能体制確保が進展していると説明。一方、2026年度以降については、こうしたバックアップ体制を他社間でも整備したいとした。
企業間協業が原薬の調達効率化にもつながるとの見方も示した。
「調達・生産・販売と見ていくと、今後はどうやって“ロジスティクス”を構築していくのかという時代に入ってくる」(田中氏)とした。さらに、「販売・流通を共にやることによって、変革をもたらすことができるのではないか」とも述べた。
具体的なイメージとしては、あくまで例としつつ、例えば4社で製造をまとめて屋号を統一することなどが考えられるとした。その場合、売上をどうするのかについては、複数社で新たな製造販売企業を立ち上げることもあり得るとした。
「基金を導入など官民でモノづくり強化のための協働はできないか」/クオリティカルチャーと製造技術、分析能力を持っている会社だけが国内で製造する体制を
“再生企業”へ、金融の支援も求めた。「自主点検の結果、問題が出てきた会社をすべてつぶしてしまって日本の医薬品産業が成り立つのか。再生すべき企業を見極めて、金融的な支援、例えば基金を導入していただくことで官民でモノづくり強化のための協働はできないか」と提案した。モノづくり強化の視点は、今後のバイオシミラーの国内生産増強のためにも必要だとした。
企業間協業も含めて「クオリティカルチャーと製造技術、分析能力を持っている会社だけが国内で製造する体制を整えることで、社会インフラである後発薬の役割を果たしていく」と話した田中氏。
この“技術”の保有に関しては、同じシンポジウムに登壇した関係者の多くが供給問題の最大の理由として挙げた。座長の小山信彌氏(日本私立医科大学協会)が「供給不足の問題の理由を1つだけ挙げるとしたら何か」と問うと、坂巻弘之氏(一般社団法人医薬政策企画 P-Cubed)は「技術力がないこと」と回答。医薬品開発・製造における技術支援を行っているネクスレッジ社の安本篤史氏も、「技術力が1つの問題だと思う。後発薬は特許が切れてから製造を始めるため、開発と製造の間での技術移転、ナレッジマネジメントが効いていない問題がある」と指摘し、それらが品質問題、そして不祥事へとつながったとの見解を示した。
東和薬品では1年前に比べて出荷量が110%を超えている「Aプラス」が今年4月からは495品目に
なお、足下の供給状況について田中氏は、東和薬品では1年前に比べて出荷量が110%を超えている「Aプラス」が今年4月からは495品目に至っていると説明。出荷量通常の「A」については156品目になっているとした。出荷量減少も49品目あるとし、今後、同社としては「少しでも出荷量通常ではなくAプラスにしたい」とした。
一方で、「Aプラス」であっても、出荷状況が「通常出荷」のわけではないことにも触れた。例えばメジコンについては同社では出荷量が1年前に比べて140%であるのに対し、いまだに限定出荷を解除できていない。他社事情でこうした限定出荷状況にある190品目あるとし、「これらが医療現場の皆さんにご迷惑をおかけしている状況ではないか」とした。
前述の供給情報は、厚労省から公開されている供給状況報告リストから分析できるものだとし、各社が安定供給に対応できているのか、可視化していくことも必要だと指摘した。
なお、田中氏も製造のGMPと製造販売のGQPの関係について、製造所を持たなくても製造販売業者が成り立つ薬機法改正以降、製造販売業者が製造業者を監督する必要性が十分浸透されてこなかったことも問題点に挙げていた。