【厚労省検討会】後発医薬品企業の体制評価で余剰生産能力などの項目案提示/厚労補助金調査事業報告

【厚労省検討会】後発医薬品企業の体制評価で余剰生産能力などの項目案提示/厚労補助金調査事業報告

【2023.08.21配信】厚生労働省は8月21日、「第2回 後発医薬品の安定供給等の実現に向けた 産業構造のあり方に関する検討会」を開催。検討会は非公開だが、資料を開示している。その中で、厚労補助金調査事業の結果として、研究代表者・成川衛氏(北里大学薬学部)の研究資料を提示。後発医薬品の安定供給に係る企業体制の評価について、自社製品の出荷停止事例のほか、他社出荷停止製品に対する増産対応事例などの項目を示した。


「薬価改定時の乖離率」も項目案に

 検討会では、「後発医薬品の安定供給等に係る企業体制の評価について(現状報告)」として資料を提示。
 令和5年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)の「適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究」(研究代表者:北里大学薬学部 成川 衛氏、研究分担者 城西国際大学薬学部 小林江梨子氏)を提示した。
 昨今の後発品を中心とした医薬品の供給不安の問題を背景に、品質が確保された後発品を安定的に市場に供給するための活動に適正に取り組んでいる企業に対する評価のあり方等について検討を行ってきたもの。

 その中では、「後発医薬品の安定供給等に係る企業体制の評価指標(案)」として、主に以下の8項目を示した。
【製造能力、実績、計画の透明化】
1.供給計画・実績等の公表
2.製造所等に関する情報の公表
【緊急事態への備えと事例】
3.緊急事態に備えた対応
【安定供給体制】
4.自社製品の出荷停止事例等
5.他社の出荷停止製品等に対する増産対応等
6.医療関係者等への情報提供
7.供給不安発生時の事後対応
【薬価からの大きな乖離率の実態】
8.薬価改定時の乖離率

 そのうち、1の「供給計画・実績等の公表」については、(ア)企業としての年間の製造実績及び供給実績並びに供給販路の公表、のほか、(イ)個別品目の年間の供給計画の公表、(ウ)個別品目の月次の供給実績の公表などを挙げた。

 また、2の「製造所等に関する情報の公表」においては、製造販売する後発品(製剤)及びその原薬の製造所等に関する情報の公表を挙げ、製剤については製造業者名、原薬については製造国の情報を公表の対象とすることを挙げた。

 3「緊急事態に備えた対応」では(1)緊急事態時の予備対応力を挙げ、医療上の必要性が高い後発医薬品について、(ア)余剰製造能力の確保のほか、(イ)在庫量(完成在庫)の確保を挙げた。確保の方法では、生産ロット数を増加可能、大スケールの製造設備への切り替え可能、製造ラインの複数保有、製造拠点の複数保有ーーなどを項目にする。確保の程度は、「平時との比較で〇倍」などの項目を想定する。そのほか、(2)原薬の複数ソース(購買先)も記載する。

 4の「自社製品の出荷停止事例等」では、出荷停止又は出荷量の制限、5の「他社の出荷停止製品等に対する増産対応等」では、他社が出荷停止又は出荷量の制限を行った医薬品について、増産又は追加供給を実施したかを挙げる。

 6の「医療関係者等への情報提供」では、(ア)ジェネリック医薬品供給ガイドラインに準拠した安定供給マニュアルの作成・運用、(イ)厚生労働省ウェブサイト「安定供給体制等を指標とした情報提供項目に関する情報提供ページ」での安定供給体制等に関する情報の公表などを挙げる。

 7の「供給不安発生時の事後対応」では、重大な供給不安(業務停止処分相当)を引き起こした場合、第三者委員会による検証及び結果の公表、8の「薬価改定時の乖離率」では、新規後発品及び不採算品再算定品目に係る価格の乖離状況を求める。


 後発医薬品の安定供給等に係る企業体制の評価指標の検討については、今年6月9日に取りまとめられた厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」報告書において、医薬品の安定供給を行う企業の評価として、「医薬品の安定供給等に係る企業情報(製造能力、生産計画、生産実績等)の可視化(ディスクロージャー)を行った上で、これらの情報を踏まえた新規収載時及び改定時の薬価の在り方を検討すべき」という指摘がされていたもの。

この記事のライター

関連するキーワード


後発医薬品

関連する投稿


【選定療養の影響調査】ヒルドイドの調剤額が4割超減/インテージリアルワールド社

【選定療養の影響調査】ヒルドイドの調剤額が4割超減/インテージリアルワールド社

【2024.11.15配信】株式会社インテージリアルワールドはこのほど、長期品の選定療養導入による後発医薬品への切替の影響を調査した。その結果、選定療養対象薬剤の推計調剤金額トップ10の薬剤のうち、ヒルドイド、プログラフ、グリベック、シムビコート、ネキシウム、アジルバなど、6製品において調剤金額が前月比で3割以上減少していた。ヒルドイドでは4割超減少している。同社データベース Cross Fact の2024年10 月データを基に、院外調剤市場における医療用医薬品の動きを見たもの。


【厚労省】後発薬の「ロードマップ」策定・公表

【厚労省】後発薬の「ロードマップ」策定・公表

【2024.09.30配信】厚生労働省は9月30日、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」及び「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」を策定・公表した。


【医薬品の安定供給へ】後発薬業界ができること/東和薬品が講演

【医薬品の安定供給へ】後発薬業界ができること/東和薬品が講演

【2024.05.28配信】5月25日に名古屋で開かれた「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 学術大会」で、東和薬品執行役員の田中俊幸氏が「ジェネリック医薬品産業のあるべき姿の構築に向けて」と題して講演した。


【先発薬と後発薬の薬価が同等になると?】先発薬の処方量最大1.9倍/民間調査

【先発薬と後発薬の薬価が同等になると?】先発薬の処方量最大1.9倍/民間調査

【2023.10.19配信】日本システム技術株式会社は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ「REZULT」を基に、薬価改定による先発品医薬品の薬価が後発品と同額となったときの影響について独自調査を実施した。その結果、先発薬の処方量は最大1.9倍で、後発薬の処方量も下がらなかった。


【医薬品供給状況】7月調査、通常出荷は78%/前月から大きな変化なし

【医薬品供給状況】7月調査、通常出荷は78%/前月から大きな変化なし

【2023.08.22配信】厚生労働省は8月22日までに、医薬品供給状況にかかる調査の2023年7月分調査結果をホームページに掲載した。それによると、「限定出荷」 と 「供給停止」 の品目は全体の22%。通常出荷は78%だった。前月から大きな変化はなかった。


最新の投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。


【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。


【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。


【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング