【スイッチOTC検討会議】スイッチ可能な医薬品を議論、「医師の関与・管理」が急に浮上

【スイッチOTC検討会議】スイッチ可能な医薬品を議論、「医師の関与・管理」が急に浮上

【2020.12.02配信】12月2日、厚生労働省は医療用から一般用医薬品への転用を話し合う「第13回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)を開催した。今回の議論の焦点は、「スイッチが可能な医薬品とはどのようなものなのか」。ここで「医師の関与」や「医師の管理下」でのスイッチ化がとりまとめ案に急に記載となった。これに対し、日本医師会から反論が出た。


 事務局は中間とりまとめ案を会議に提示したが、前回の案から主に追記となったのは、「スイッチ OTC 化が可能と考えられる医薬品の考え方」の項目だ。

 とりまとめ案では、「これまでの議論を踏まえたスイッチ OTC 化する上で満たすべき基本的要件」として、以下の3点に整理した。
① 使用者の状態やその変化に応じて、医師による薬剤選択や用量調整等(他剤との併用も含む)を必要としない薬剤であること。
② 使用する際に使用者自身が症状を判断することが可能であり、使用者自身の判断で適正に短期間使用することが可能な医薬品、または使用者による自己判断が難しい疾患であるものの、医師、薬剤師の一定の関与により、使用者自身が適正に購入し使用できる薬剤であること。また、原疾患以外の症状をマスクするリスク等を含め、医療機関への受診が遅れることによって生じるリスクについて、講じる対策により許容可能なリスクにできること。
③ スイッチ OTC 化した際に懸念される公衆衛生上のリスク(医薬品の濫用等)について、講じる対策により許容可能なリスクにできること。

 この3点において、前回のとりまとめになかったのが、②の「医師、薬剤師の一定の関与により、使用者自身が適正に購入し使用できる薬剤であること」の文言だ。10月28日に開かれた前回の案では「消費者自身の判断で適正に使用することが可能な医薬品であること」とだけになっており、「医師と薬剤師の関与により」との文言を加えることで、スイッチに妥当な医薬品を拡大する意向がにじむ。

 さらに、②に関して、具体例を以下の3つ挙げた。
1、自覚症状により自ら、服薬の開始・中止等の判断が可能な症状に対応する医薬品(例:アレルギー性鼻炎薬、解熱鎮痛薬等)
2、再発を繰り返す症状であって、初発時の自己判断は比較的難しい症状であるものの、再発時においては自ら、症状の把握、服薬開始・中止等の判断が可能なものに対する医薬品(例:過敏性腸症候群治療薬)
3、医師の管理下での処方で長期間状態が安定しており、対処方法が確定していて自己による服薬管理が可能な医薬品

 こうした案に対し、日本医師会は以下のような意見を述べた。
 「(スイッチは)まず成分として安全性が高いことが第一条件になっている。短期間というのも一つの条件。使用の開始、改善を本人が判断できるということ、例外として初発時は使用の判断が困難であるが近い過去の診断からその症状が再発によるものと本人が判断できる再発症状。そして受診の遅れによって早期治療や重症化予防が妨げられないということが必要だ」(日本医師会常任理事の長島公之氏)
 「近い診断」との文言を求めたのには、スイッチOTCにおいても短いスパンでの診察を必要とする意向がのぞく。

 さらに、この中で、特に3の「医師の管理下で」という一文に関して、「これはこれまでの議論には出ていない医薬品だ。これまでの議論ということでいうと適切ではない」と述べた。

****
 スイッチOTCの拡大は規制改革実施計画の中でも閣議決定されているものであり、国民に選択肢を提供し利便性を高める上でも、推進に大きな意義があるのは疑いがない。
 
 ただし、その推進に向けて設けられている会議体が軽視されるのは議論のやり方として適切なのかどうか。
 
 強い内閣、規制改革会議の後押しが強くなるのは福音だが、それをもってして議論自体にこれまでなかった文言が急浮上し、短い期間でとりまとめとなる手法には疑問が残る。

 今回の会議の約2時間でも、事務局による資料の読み上げと、医師と薬剤師の情報共有として検査値の共有という文言を入れるかどうかで長い時間が費やされた。

 今回の焦点であった「スイッチ可能な医薬品とはどのようなものか」の議論に集中し議論されるべきではなかったのだろうか。

 要指導医薬品・一般用医薬品の販売は薬剤師の重要な役割である。日本薬剤師会の発言が限定的であったことも気にかかる。

 出席していた日本薬剤師会常務理事の岩月進氏が発言したのは主に2回で、1回目は「情報共有としてやはり検査値の文言は記載してほしい」ということと、2回目は「スイッチに関わるステークホルダーの欄で薬剤師と登録販売者が1つになっているがそれぞれに役割があるのでカラムを分けることが適切」というものだった。

 スイッチ可能な医薬品の本質の議論として、「医師の関与」「医師の管理下」のスイッチに関する薬剤師会としての見解を聞くことはできなかった。これまでも医療関係者の反対でスイッチ候補の複数が「スイッチの妥当性 否」と判断されてきた背景を考えると致し方ない面もあるが、公的会議の位置づけは何なのか、と問いたくなる。医療関係者の声が大きい時には医療関係者の意見が通り、規制改革推進会議の声が大きくなればその意見が通る。国民の安心・安全を軸にした正論はどこにあるのか。それを導くのは薬剤師会であってほしい。

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【一変したスイッチOTC検討会議】今後はドラッグストアも参画か

https://www.dgs-on-line.com/articles/473

【2020.10.30配信】10月28日、厚生労働省は医療用から一般用医薬品への転用を話し合う「第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)を開催した。第12回の模様を一言でいうならば、「一変した」といっても過言ではない。現実的な推進へ舵を切った。政府の規制改革実施計画に対する対応については、ほぼ異論が出ず、これまでスイッチの可否を握ってきた検討会が、スイッチ促進へ向けた課題解決案を話し合う場へと姿を変える見通しとなった。一般用医薬品における服薬フォローアップや医師への情報フィードバックなどが課題として話し合われる見込みだ。

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