4月26日では、岩手県気仙郡住田町の神田謙一町長が登場。人材の少なさを理由に、タスクシフトを進めないと地域の医療提供が継続できないとし、訪問看護ステーション(訪看ST)への薬剤ストックを求めた。輸液が処方されたが、薬局の営業時間が終わっていたために翌朝まで待つしかなかったという具体的な事例も添えられていた。要望内容はWGで繰り返されてきたものだが、問題は、この町には薬局が1軒しかないこと。薬局が特定された状態で、薬局における夜間・休日対応が困難であると指摘された格好だ。
その薬局とは、総合メディカルが運営する「そうごう薬局住田店」で、地域支援体制加算2を算定している。事実なら、同加算算定薬局では少なくとも夜間・休日対応はできるという厚労省の説明も崩れることになる。
しかし、同社関係者によると、「少なくともここ1〜2年の間に夜間・休日対応の依頼があったことはない」というのだ。依頼がないので、断ったという事実もない。「WGでの発表を受けて、前任の薬局長にまで遡って確認したが、対応を依頼されたという事実は確認できなかった」(同社)という。実際は同店では夜間・休日のオンコール実績がある。
町長からこのような報告があったことに対しては、「さまざまな意見があると思うので、考え方は否定するものではない」とした上で、「当社としても周知不足という反省点はある。今後、お声をかけていただき、協力していけるようにしたい」(同)とする。現在も参加している「在宅医療連絡会議」等において情報提供していきたいとする。当該薬局に事前にすり合わせがなく発表があったのは残念な事例となった。
一方、課題も指摘できる。例えば同店関係者に「住田町にがんで在宅療養している方はいるのか?」と聞くと、「自局の患者以外を把握するのは簡単ではない。前掲の連絡会議等などで情報共有する仕組みが必要」という回答。地域の医療ニーズの共有は課題となろう。厚労省の「薬局機能検討会」においても、日薬は、普段からの訪看と薬局の連携を促す政策が必要と訴えている。処方箋や在宅医療という接点に限らず、医療のニーズをともに共有し、薬局の対応を検討できる素地がこれからは必要になってくるだろう。
思わぬ形で取り上げられることになった同社に、「今後、どのような解決策があると思うか」と問うと、夜間・休日対応や無菌製剤についても隣町にある同社薬局と連携してローテーションを組んでおり、これらの周知も必要との見方を示す。「訪看STに薬剤を置けば解決、という単純なことではなく、その前に連携によりできることはあるのではないか」と話した。今回の発表を受け、さっそく町長や訪看に面会し、引き続き連携を図りたいとする。調剤報酬改定で在宅対応薬局への評価が見直されるなどの政策も進んでいることから、対応を拡充したい考えだ。

【規制改革推進会議】規制緩和求めた「住田町」 / “町唯一の”薬局「夜間休日対応、連携で可能」
【2024.05.08配信】4月26日に開かれた内閣府の規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」(WG) では、「在宅医療における円滑な薬物治療の提供について」が議題の1つとなり、岩手県気仙郡住田町の町長から訪問看護ステーションへの薬剤ストックの提案がされた。同町で唯一である薬局が本紙取材に応えた。
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