【中医協】診療報酬改定の施行、6月1日へ後ろ倒しを提案/薬価改定は4月1日/診療報酬改定DX

【中医協】診療報酬改定の施行、6月1日へ後ろ倒しを提案/薬価改定は4月1日/診療報酬改定DX

【2023.08.02配信】厚生労働省は8月2日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、「診療報酬改定DX」を議題の1つとした。その中で事務局は診療報酬・調剤報酬改定の施行時期を6月1日に後ろ倒しすることを提案。薬価改定については4月1日とする案。これについて会議ではおおむね賛同する方向となったが、診療側委員からは後ろ倒しすることの具体的なメリットの明確化を求める声や、4月・6月と改定が2度にわたることへの影響の検証を求める声が出た。


日医「後ろ倒しで最も大きな恩恵を受ける電子カルテやレセコンのベンダーが保守費用やリース料などを大幅に引き下げるなど目に見える形で確実に医療機関に還元する必要がある」

 診療報酬・調剤報酬改定の施行時期を後ろ倒しする「診療報酬改定DX」については、今年6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に記載されていた。
 改定に関わるベンダや医療機関において、短期間で集中的に対応するために、大きな業務負荷が生じていることが指摘されており、後ろ倒しによってこうした負荷を軽減することや、それによるコスト軽減も念頭に置かれているもの。

 中医協では4月26日にも同テーマが議論されていたが、その際、薬価改定については4月施行とすべきとの意見が出ていた。薬価改定については、医療現場において改定後半年程度の価格交渉期間があるため、4月に施行しなければ毎年薬価調査実施への影響、ひいては薬価制度の根幹に関わるとの意見が出ていたもの。一方、薬価収載のタイミングは数か月に1回あるという、診療報酬改定とは異なった特性もあるほか、薬価のシステム改修は、4月施行でも十分対応が可能であるとの認識も示されてきたもの。

 こうした議論を踏まえ、8月2日の中医協では事務局は、令和6年度診療報酬改定より施行時期を6月1日施行とすることを提案した。薬価改定は4月1日とする。したがって改定後の初回の報酬請求は7月10日となることを見込む。従来設けられていた9月末までが多い経過措置については同様に9月末までとする想定。2月上旬中医協答申、3月上旬関係告示等、3月下旬電子点数表提示のスケジュールも変更はない。

 こうした案に対して日本医師会常任理事の長島公之氏は、施行を後ろ倒しすることのメリットの明確化やそのメリットの検証を行うことなどを求めた。次のように述べた。

 「診療報酬改定DXの目的である医療機関の負担の極小化を実現するためには、単に実施時期を後ろ倒しにすることだけでは充分でなく、同時に医療機関の負担軽減や効率化のためのほかの取り組みも必要となります。例えば医療機関の費用負担軽減のためには、後ろ倒しで最も大きな恩恵を受ける電子カルテやレセコンのベンダーが保守費用やリース料などを大幅に引き下げるなど目に見える形で確実に医療機関に還元する必要があります。この実現を担保する具体的な仕組みを作るべきであります。また、これまで改定に際し5月雨式に厚労省から発出されていた多くの疑義解釈は、改定が施行されてから現場で発生する問い合わせに応じながら出されてきた側面もあります。したがって後ろ倒しによる負担軽減を役立てるためには工夫した取り組みが必要となります。今回ご提案の施行後ろ倒しによって医療機関にとってどういうメリットがあるのか明確にしていただく必要があり、これはひいては患者さんにとってのメリットになるものであります。事務局に質問いたします。このように医療機関にとっての負担軽減につながるメリットを最大化するためにどのように実現されるのでしょうか。またそういった効果を検証する予定はあるのでしょうか」(長島氏)。

 これに対し事務局は、診療報酬改定DXの効果が医療機関に還元されるということが重要であるという認識を示した上で、ベンダーの団体とも意見交換を実施しているとし、費用低減分に関して還元されるよう求めていきたいとの考えを示した。2026年度に共通算定モジュールを本格的に提供することなど踏まえ、全体のコストがどのぐらい低くなるか、効果最大化の検証が必要との見方を示した。効果検証の要望に対しては受け止め、今後、提案したいとした。

中医協資料

<関連記事>
【診療報酬改定DX】日薬・森氏、改定が4月と6月の2回になることへの影響を懸念
https://www.dgs-on-line.com/articles/2225

【編集部より】
 ドラビズもPR記事をお手伝いさせていただいた、調剤売上データの収集・集計・分析業務を自動化し、店舗・本部スタッフ・マネージャー・オーナーの負担を軽減する新しい薬局経営見える化ツールの「digicareアナリティクス」は、8月15日〜8月25日までオンラインセミナー(45分間)を開催します。digicareアナリティクスの導入方法やユーザーで主に使われている具体的な活用方法など、普段の薬局経営分析にとっても参考になる内容になっています。ぜひご参加ください。
参加申し込みは下記URL、もしくはバナー広告から。
https://digicare.jp/seminar/dgsonline/?utm_source=dgs-on-line&utm_medium=banner&utm_campaign=seminar202308

この記事のライター

関連するキーワード


調剤報酬改定 医療DX

関連する投稿


【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【2025.10.17配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月17日に定例会見を開き、調剤報酬改定における「300店舗区分」の見直しを求める声明を公表した。


【日本保険薬局協会】中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【日本保険薬局協会】中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【2025.09.11配信】日本保険薬局協会は9月11日、定例会見を開いた。この中で9月10日に開かれた中央社会保険医療協議会総会の「調剤について」の議論の中で病院薬剤師の不足に関して多くの意見が出たことについてコメントした。


【日本薬剤師会】岩月会長、中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【日本薬剤師会】岩月会長、中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【2025.09.11配信】日本薬剤師会は9月11日に定例会見を開いた。その中で岩月進会長は、10日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で、「調剤」の議題の中で「病院薬剤師」について多くの意見が挙がったことについてコメントした。


【厚労省】次期調剤報酬改定へ「現在の薬局の立地に至った経緯」調査

【厚労省】次期調剤報酬改定へ「現在の薬局の立地に至った経緯」調査

【2025.07.10配信】厚生労働省は7月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の調査票案」を提示した。次期調剤報酬改定議論の基礎資料となるもの。


【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。


最新の投稿


【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【2025.11.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月7日に定例会見を開いた。その中で、市販化の見通しとなった緊急避妊薬の販売条件となる「産婦人科医等との連携体制」のリストについて、都薬としても関与していく方針を示した。


【東京都薬剤師会】改定議論、「大手に誤解進むのは怖い」/髙橋正夫会長

【東京都薬剤師会】改定議論、「大手に誤解進むのは怖い」/髙橋正夫会長

【2025.11.07配信】東京都薬剤師会は11月7日に定例会見を開いた。この中で髙橋正夫会長は、調剤報酬改定の議論に触れ、「大手の方々に誤解進むのは怖い」と話した。


【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に会見を開いた。この中で、同日公表された財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会の提言に対し反論した。


【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に定例会見を開いた。その中で、岩月進会長が中医協での敷地内薬局をめぐる議論に対してコメントした。


【石川県薬剤師会】モバイルファーマシー「お披露目式」/スターリンクを搭載でDX対応

【石川県薬剤師会】モバイルファーマシー「お披露目式」/スターリンクを搭載でDX対応

【2025.10.31配信】石川県薬剤師会は10月31日、モバイルファーマシーお披露目式を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング