通知は50ページにわたる広範な内容を網羅しているが、中でも注目されるのは、電子処方箋と電子版お薬手帳の連携は不可欠としていることだ。
通知では、処方箋について「医師・歯科医師から薬剤師への処方内容の伝達だけでなく、医師・歯科医師から患者に交付され、患者自らが処方内容を知ることができる、患者にとって最も身近な医療情報の一つといえる」とした上で、処方箋の電子化に関しては「医療機関と薬局の連携や服薬管理の効率化等に資するだけでなく、電子版お薬手帳等との連携等により、患者自らが服薬等の医療情報の履歴を電子的に管理し、健康増進への活用(ポータルサービス)の第一歩になる」など、多くのメリットがあるとした。
できるだけ早く国民がそのメリットを享受できるようにするためにも、運用ルールや医療情報等を連携するためのネットワーク整備・普及等を進める必要を記載している。
フリーアクセスを確保し、患者が自身の服用する薬剤について知ることを担保したうえで、2023 年1月より、全国的な電子処方箋の仕組みが整備されることとなったとする。
中でも電子版お薬手帳等との連携については不可欠と明記。「処方箋の電子化は、医療機関・薬局の連携や処方内容の一元的・継続的把握の効率化等に資するが、患者が電子化された処方や調剤の内容等を可視化して知り、活用するためには、マイナポータルや電子版お薬手帳等との連携等が不可欠」とした。
電子処方箋の処方・調剤情報はリアルタイムでマイナポータルにおいて閲覧できる仕組みである一方、当該情報を API(Application Programming Interface)連携により電子版お薬手帳にダウンロードできる仕様となる。
加えて、通知ではお薬手帳について、「患者本人のものである」と整理。電子処方箋にはない「患者個人の健康情報や要指導・一般用医薬品の服薬情報など」について連携することで、情報の電子化のメリットを患者が享受できるようにすることが重要としている。
お薬手帳の意義と役割については、「患者自身が、自分の服用している薬剤について把握するとともに正しく理解し、服用したときに気づいた副作用や薬剤の効果等の体の変化や服用したかどうか
等を記録することで、自らの薬物療法に対する意識を高める」ことに資するしている。
そのほか、通知ではフリーアクセスを確保するため、患者が電子処方箋に対応していない薬局で調
剤を受けることを希望する場合や電子処方箋を望まない場合には、紙の処方箋を交付することも記載した。
■厚労省通知
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001006251.pdf
■以下サイトの中ほど「電子処方箋の運用通知」「電子処方箋管理サービスの運用について(令和4年10月28日)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
■編集部コメント
服薬履歴が確認できるオンライン資格確認や電子処方箋が登場することによって、「お薬手帳はいらなくなるのではないか」との声を聞くことがある。
しかし、オンライン資格確認は月に一度アップデートされるレセプト情報であるためにタイムラグが生じること、電子処方箋はリアルタイム確認ができるが保存期間が100日間と限定されるなど、それぞれが特徴のあるものであり、これらを患者本人の情報として有機的に管理するためには電子版お薬手帳と連携していくことは非常に有用だろう。
加えて、いうまでもなくOTC薬や健康食品の情報などは電子処方箋などには含まれないため、重複投薬確認や飲み合わせのチェックにはお薬手帳は有効だ。
さらには、それだけでなく、服薬後のフォローアップが義務化されている中、そういった医薬品を飲んだあとの体の変化についても記録していくことは患者状態に応じた効果的な薬物療法の実践になるほか、医薬品の価値を最大化していく“育薬”への貢献にもなる知見構築につながる可能性があるといえるだろう。

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