【東京都薬剤師会】薬学生との交流会を開催/“零売”や“アマゾン薬局の脅威”など、活発な質疑

【東京都薬剤師会】薬学生との交流会を開催/“零売”や“アマゾン薬局の脅威”など、活発な質疑

【2022.07.04配信】東京都薬剤師会(都薬)は7月2日(土)、薬学生との交流会を開催した。「薬剤師のリアルを聴いてみよう!」と題した学生会員向け企画で、都内在住や都内の薬学部に通う薬学生を対象としたもの。会員以外でも参加を可能とした。都薬としては初の試みで、都道府県薬剤師会としても学生との交流会開催は珍しいケースとみられている。


 主催したのは都薬の「会員委員会」。主に会員の増強対策を検討している委員会だが、メンバーに若手が多いことも特徴で、企画力、実行力が今回の都薬初の取り組み実現までつながった。

 当日は、27人の都内在住、もしくは都内の薬学部に通う薬学生が集まった。スモールディスカッション形式をとり6班に分けて、それぞれの班で都薬メンバーがファシリテーターを務めた。内容は薬学生から自由に質問を受けるなど、いたってフランクな内容だった。

 冒頭の挨拶では、開催の背景について、「薬局は適正流通が重視された成長期から成熟期に移っている。薬局でも患者の個別のQOLに関わる細かな対応が必要になる中で、薬剤師会もそれに対応しなくてはいけない。世代間の意見を聞いて、それに対応していく、今がそのタイミング」と説明された。その上で、「率直な意見を聞くことが目的」とされた。

 最後にはそれぞれの班のファシリテーターや学生から発表があった。

 発表内容や会場でのやり取りでは、薬学生から要望としては進路に関わることが多かったようだ。参加学生が5年次が多かったことも関係しているとみられるが、スポーツファーマシストや科捜研の仕事、薬学知識を生かした起業への質問なども出ていた。多様な場で働く薬剤師の人に会って話を聞きたいという要望も多かった。

 また、地域に密着した、いわゆる中小規模の薬局に就職したいとの要望を持っている学生もいたが、その際に、就職イベントの多くには大手薬局企業しか参加しておらず中小薬局の情報がないこと、それぞれの薬局の特徴なども分からず選びづらいといった意見が出ていた。

 実社会への質問では、「零売についてどのように考えているか」などの質問のほか、「アマゾン薬局の脅威について」などの意見があり、薬学生が薬局に関わるニュースにも触れている様子がうかがえた。また、薬剤師が「薬を渡す人」と思われていることなどを変えるために、薬剤師の広報をもっとしてほしいとの意見も多く聞かれた。

 薬剤師会への質問では「学生の入会についてどのような働きかけをしているのか」という質問が出たほか、「大学のメールマガジンに一言、薬剤師会への会員の登録について記載してもらうことで登録が増えるのではないか」との学生からの提案も出ていた。

「薬剤師会は何をしているのか?」との学生からの質問

 記者も自由に会場を歩きまわれたが、その際にテーブルに「薬剤師会は何をしているのか?」とのファシリテーターのメモ書きがあった。その学生からの質問に、その班のファシリテーターがどう答えたかは不明だが、この質問を会場にいた都薬幹部にぶつけると、「実は薬剤師会が何かをするんではなくて、彼ら彼女たちのすることを支援するのが薬剤師会なんだよね」と話していた。

 いみじくも、厚労省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」でも、地域における薬剤師活動の主体としての地域の薬剤師会の存在が議論されている。薬剤師という専門家の職能団体という“群れ”がどのような役割を果たすかは、実は個々の薬剤師が国家資格者としての自律的な立場として、何を行動するかに拠っているのかもしれない。

 今回のイベントを主催した「会員委員会」は、「会員になることのメリット」を模索する委員会でもあるが、とどのつまり、薬剤師自身が「自分のために」入会するということが最大のメリットといえるだろう。一方、薬剤師会には、こうした場での意見をどう受け止め、活動に反映させるかが問われる。

「今後生き残る薬剤師像は」との質問

 そのほか、学生からは、「今後、生き残る薬剤師像をどう考えるか、教えてほしい」との質問が出ていた。

 この質問に都薬理事の髙松登氏は「覚悟をもって自分で判断すること」と回答していた。

 「生き残るかどうかは自分が能力をもっているかによる。自分で解決できることが重要。誰かの意見を聞くのはいいが、最後は自分で覚悟をもって判断する。誰かに頼ると、大きな壁が来た時にそれを回避するようになる。それを回避すると、薬剤師としては成長しない。ぜひ皆さんは資格をとったら、その資格を精一杯使って、自分を成長させてほしい」(髙松氏)

今後も継続方針

 都薬では、今後も薬学生向けのイベントを継続開催したい方針。

 開催後の薬学生からの声も好評で、「話を聞けて面白かった」「また来たい」との声が聞かれた。
 薬学生の評価が口コミで広がれば、さらに参加者が増えていく可能性もありそうだ。

この記事のライター

関連するキーワード


東京都薬剤師会 薬学生

関連する投稿


【東京都薬剤師会】緊急避妊薬の研究協力薬局を追加募集

【東京都薬剤師会】緊急避妊薬の研究協力薬局を追加募集

【2024.06.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は6月7日、定例会見を開いた。


【東京都薬剤師会】夜間・休日対応のリスト化で地区薬にアンケート調査実施

【東京都薬剤師会】夜間・休日対応のリスト化で地区薬にアンケート調査実施

【2024.04.05配信】東京都薬剤師会は、「地域における夜間・休日の医薬品提供体制リスト化」に関して、地区薬剤師会に対してアンケート調査を実施する。


【東京都薬剤師会】薬事衛生自治指導、“調剤ポイント”不適178件

【東京都薬剤師会】薬事衛生自治指導、“調剤ポイント”不適178件

【2024.02.09配信】東京都薬剤師会は2月9日の会見で、「薬事衛生自治指導員巡回指導実施件数及び遵守状況について」を報告した。


【東京都薬剤師会】緊急避妊薬の“研修”、申し込み増

【東京都薬剤師会】緊急避妊薬の“研修”、申し込み増

【2024.02.09配信】東京都薬剤師会は2月9日の会見で、同会が主催する緊急避妊薬の調剤に関する研修申込が増加している状況を明かした。


【東京都薬剤師会】調剤報酬改定にコメント

【東京都薬剤師会】調剤報酬改定にコメント

【2024.02.09配信】東京都薬剤師会は2月9日に会見を開き、この中で2024年度調剤報酬改定についてコメントした。


最新の投稿


【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【2024.07.25配信】厚生労働省は7月25日に「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」を開催し、体外診断用医薬品の特性を踏まえた制度の見直しについて議論した。その中で「研究等の医療以外の用途を標榜する試薬の提供業者への対応」を議題とした。


【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【2024.07.24配信】日本薬剤師会は7月24日、都道府県会長協議会を開催した。


【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【2024.07.19配信】厚生労働省は、現在3年間となっている処方箋の保存期間について見直す方針を示した。「第7回薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で提示した。診療録の保存期間が5年となっている中、電子処方箋については処方箋を調剤済みとなった日から5年間保存するサービスを提供しているなどの環境変化を挙げている。今後、制度部会で議題とする方針。


【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【2024.07.19配信】薬局DX推進コンソーシアムは7月19日、大阪市から調剤業務一部委託事業の確認通知を受け取ったと公表した。


【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【2024.07.19配信】日本保険薬局協会は7月19日に開かれた厚労省「第7回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で意見書を提出した。「健康サポート薬局、地域連携薬局、地域支援体制加算届出薬局が描く薬局像は、小異こそあれ、分立させるほどの違いはない」とした。


ランキング


>>総合人気ランキング