主催したのは都薬の「会員委員会」。主に会員の増強対策を検討している委員会だが、メンバーに若手が多いことも特徴で、企画力、実行力が今回の都薬初の取り組み実現までつながった。
当日は、27人の都内在住、もしくは都内の薬学部に通う薬学生が集まった。スモールディスカッション形式をとり6班に分けて、それぞれの班で都薬メンバーがファシリテーターを務めた。内容は薬学生から自由に質問を受けるなど、いたってフランクな内容だった。
冒頭の挨拶では、開催の背景について、「薬局は適正流通が重視された成長期から成熟期に移っている。薬局でも患者の個別のQOLに関わる細かな対応が必要になる中で、薬剤師会もそれに対応しなくてはいけない。世代間の意見を聞いて、それに対応していく、今がそのタイミング」と説明された。その上で、「率直な意見を聞くことが目的」とされた。
最後にはそれぞれの班のファシリテーターや学生から発表があった。
発表内容や会場でのやり取りでは、薬学生から要望としては進路に関わることが多かったようだ。参加学生が5年次が多かったことも関係しているとみられるが、スポーツファーマシストや科捜研の仕事、薬学知識を生かした起業への質問なども出ていた。多様な場で働く薬剤師の人に会って話を聞きたいという要望も多かった。
また、地域に密着した、いわゆる中小規模の薬局に就職したいとの要望を持っている学生もいたが、その際に、就職イベントの多くには大手薬局企業しか参加しておらず中小薬局の情報がないこと、それぞれの薬局の特徴なども分からず選びづらいといった意見が出ていた。
実社会への質問では、「零売についてどのように考えているか」などの質問のほか、「アマゾン薬局の脅威について」などの意見があり、薬学生が薬局に関わるニュースにも触れている様子がうかがえた。また、薬剤師が「薬を渡す人」と思われていることなどを変えるために、薬剤師の広報をもっとしてほしいとの意見も多く聞かれた。
薬剤師会への質問では「学生の入会についてどのような働きかけをしているのか」という質問が出たほか、「大学のメールマガジンに一言、薬剤師会への会員の登録について記載してもらうことで登録が増えるのではないか」との学生からの提案も出ていた。
「薬剤師会は何をしているのか?」との学生からの質問
記者も自由に会場を歩きまわれたが、その際にテーブルに「薬剤師会は何をしているのか?」とのファシリテーターのメモ書きがあった。その学生からの質問に、その班のファシリテーターがどう答えたかは不明だが、この質問を会場にいた都薬幹部にぶつけると、「実は薬剤師会が何かをするんではなくて、彼ら彼女たちのすることを支援するのが薬剤師会なんだよね」と話していた。
いみじくも、厚労省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」でも、地域における薬剤師活動の主体としての地域の薬剤師会の存在が議論されている。薬剤師という専門家の職能団体という“群れ”がどのような役割を果たすかは、実は個々の薬剤師が国家資格者としての自律的な立場として、何を行動するかに拠っているのかもしれない。
今回のイベントを主催した「会員委員会」は、「会員になることのメリット」を模索する委員会でもあるが、とどのつまり、薬剤師自身が「自分のために」入会するということが最大のメリットといえるだろう。一方、薬剤師会には、こうした場での意見をどう受け止め、活動に反映させるかが問われる。
「今後生き残る薬剤師像は」との質問
そのほか、学生からは、「今後、生き残る薬剤師像をどう考えるか、教えてほしい」との質問が出ていた。
この質問に都薬理事の髙松登氏は「覚悟をもって自分で判断すること」と回答していた。
「生き残るかどうかは自分が能力をもっているかによる。自分で解決できることが重要。誰かの意見を聞くのはいいが、最後は自分で覚悟をもって判断する。誰かに頼ると、大きな壁が来た時にそれを回避するようになる。それを回避すると、薬剤師としては成長しない。ぜひ皆さんは資格をとったら、その資格を精一杯使って、自分を成長させてほしい」(髙松氏)
今後も継続方針
都薬では、今後も薬学生向けのイベントを継続開催したい方針。
開催後の薬学生からの声も好評で、「話を聞けて面白かった」「また来たい」との声が聞かれた。
薬学生の評価が口コミで広がれば、さらに参加者が増えていく可能性もありそうだ。