【東京都薬剤師会】“女性”に関する専門医療機関連携薬局があってもよい/安部好弘理事が質疑応答

【東京都薬剤師会】“女性”に関する専門医療機関連携薬局があってもよい/安部好弘理事が質疑応答

【2022.03.30配信】東京都薬剤師会は3月26日に「第100回臨時総会」を開いた。質疑応答・討議の中で、宮原富士子薬剤師が女性医学に関わる薬剤師研修実態について質問を行った。回答の中で、東京都薬剤師会理事の安部好弘氏は、日本薬剤師会としても「薬剤師のかかりつけ機能強化のための研修シラバス」の中で生殖医療に関わる領域もまとめていることを紹介。その上で、「薬剤師への期待はあり、現在はがんだけが対象になっている専門医療機関連携薬局に関してもさまざまな疾患もあり得ると思っており、その中で女性の健康という要素も入ってきてもいいのではないか」との考えを示した。


宮原富士子薬剤師「女性医療に関して真摯な発言を」

 宮原富士子氏は次のように質問した。
 「緊急避妊薬のスイッチOTC化の議論に関しては8月ぐらいまで続くことになっていますが、日本薬剤師会(日薬)が提出したデータでは在庫していない薬局も一定数あるということで準備不足も指摘されました。また、昨年の秋に日薬が発表された資料では薬剤師は女性の健康相談も受けており、資質向上に資する研修も行っているとされました。この資料に関し、本当に薬剤師はこのような研修をしょっちゅうやっているのかという質問を受けました。薬剤師全員が女性医学を学んで女性医学の専門である必要はないと思っています。医師が専門性を持つように薬剤師もそれぞれがジェンダーなど専門を持ち地域貢献することが正しいと思っているからです。今私たちが直面しているのはHPVワクチンの勧奨が始まる中、店頭で相談を受けた薬剤師が回答できる研修をしているのかということです。また中絶薬の承認をめぐるさまざまな議論がされている中で薬剤師は適切な回答をしているのか。さらに不妊治療の薬がこれだけ通った中でそれについて薬剤師が勉強できているのだろうか。周産期の事故の背景にある陣痛促進剤について理解できているのだろうか。様々な緊急の課題の薬剤がある中で、女性医療に関してもう少し真摯な発言ができるようしてほしいという切なる思いがあります。日薬の執行部メンバーでもある安部(好弘)先生に状況をお聞きしたいと思います」

 安部氏は次のように回答した。

 「ご指名ですので回答させていただきます。先生のご質問は大きく3つあったと理解をしています。1つ目は転用評価検討会議での資料や発言内容がどういったものかということ。2つ目が女性の医学について体系的・包括的な研修をどのようにするのかということ。3つ目は女性医療に係る薬剤師への期待というのをどういうふうに考えるかということです。

 1つ目の10月開催の転用評価検討会での資料につきましては、オンライン診療に基づく調剤の研修を当時、1万1000人の薬剤師が修了した、まずそういった体制ができているということを報告しました。それからそもそも薬剤師はすべての医薬品を適切に供給する専門性を持っていること、さらに日常業務の中で女性の患者さんもいらっしゃいますので、薬局は月経や妊娠、授乳、更年期などの相談の支援も行っているということを報告しております。また、発表した岩月常務理事の地元である愛知県薬剤師会で行っている妊娠・授乳サポート薬剤師養成講座、性犯罪対応研修など事例を挙げて説明をしているものでした。先生がご指摘のように、じゃあ全国的に統一してそういったことが実行できるかということでありますけれども、すべてが愛知県薬剤師会と同じように実行しているわけではありませんが、この検討会においては緊急避妊薬をスイッチ化するのかしないのかという特定の議題に対して、その別を問わず薬剤師は医師と連携をしかつフォローアップをし、必要な情報を提供するということを、薬剤師の研修が不可欠であるというようなことも含めて発言したいうふうに理解しています。先生からすると不十分に感じるかもしれませんがご理解いただきたいと思います。スイッチ化に関しては、もしもスイッチ化するのであれば、その際にはどのような研修が必要かという議論を深めるというふうに思いますのでまたアドバイスをいただけたらと思います。

 2つ目の女性医学についての体系的・包括的な研修プログラムについてです。日薬も令和2年の薬剤師のかかりつけ機能強化事業として研修シラバスをまとめましたが、その中で生殖医療に関わる領域や産婦人科領域の薬物治療などにフォーカスした項目が示されています。ただ、これはこの領域において薬剤師が標準的かつ適切な薬物治療をするためにどのように研修すればいいのかというプログラムでありまして、女性医学への深い専門性を突き詰めたものではないものだとご理解いただきたいと思っています。これも宮原先生からみると物足りないとお感じになるかもしれませんが、日薬としてはより多くの薬剤師が女性の医学、健康に対して十分な対応ができるようにという意図とご理解いただきたいと思います。また、今後、専門医療機関連携薬局は、今、がんしかありませんけれどもが、がん以外にさまざまな疾患に対して認定をし、専門的な薬局を認定することもあり得ると思っていますので、その中には女性医学、女性の健康というファクターも入ってきてよろしいのではないかというふうに思っております。先進的な活動を展開する学会活動を通じて、ご発言もをいただければと思います。

 それから最後に女性の医療に関わる薬剤師への期待です。ご承知の通り、薬局に従事する18万人のうち、12万人が女性薬剤師であります。女性特有の問題に対して、緊急避妊薬の調剤応需事例のように、地域で大きな力を発揮している女性の薬剤師が適切な関与を担うということの期待は当然、今後もあるというふうに思っております。ただ宮原先生が相談対象として事例に挙げられた問題については、一つ一つが非常にデリケートで社会学的、医学的見地や個々の倫理観になり価値観に基づくような議論まで必要な項目かと思いますので、薬剤師が主体的に何か議論するというよりは、国や学会等の議論の中で薬剤師としての意見を求められた際にしっかりと慎重かつ丁寧な議論を会内で行い、こういった会議の場に臨みたいというふうに考えています」

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