【緊急避妊薬】スイッチOTC化に係る調査事業報告書が公表

【緊急避妊薬】スイッチOTC化に係る調査事業報告書が公表

【2025.05.14配信】厚生労働省は5月14日、緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る環境整備のための調査事業である「令和6年度 緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書」を公表した。令和5年度事業では購入者の約85%において、服用3~5週間後に産婦人科医を受診しておらず、また、避妊の成否を妊娠検査薬で確認していないなどの課題が抽出されていた。そのため令和6年度事業では妊娠の可能性に関しチェックリストやフロー等の資材を見直し。その結果、課題の改善がみられた。購入者の避妊成否確認については、販売後3~5週間後の調査において、6割が「確認した」と回答しており、また、その他2割も「今後確認する」と回答した。


中絶機会の喪失を防ぐための避妊成否確認が格段に向上/R6事業では8割に

 同事業は一定の要件を満たす特定の薬局に限定し、試行的に女性へ緊急避妊薬(処方箋医薬品)の販売を行うことを通じ、緊急避妊薬の適正販売が確保できるか、あるいは代替手段(チェックリスト、リーフレット等の活用等)でも問題ないか等を調査解析するもの。その結果は、緊急避妊薬が要指導・一般用医薬品として薬事承認申請される際の審査・審議における具体的対応策の選択・採否の一助となるとされている。

 同報告書は令和5年度事業報告書に続く2年目の調査報告書となる。

 令和5年度事業では「販売可否に係るチェックリスト」について、「妊娠の可能性」に関する項目を改善すべきと約4割が回答するなど課題が抽出されていた。また購入者の約85%において、服用3~5週間後に産婦人科医を受診しておらず、また、避妊の成否を妊娠検査薬で確認していなかった。

 こうした課題抽出を受け、令和6年度事業では、都道府県によっては販売数量が少なかったことから、協力薬局を増やした。全国339薬局にて実施・解析。期間は2024年9月25日~2025年1月31日。
 また予期せぬ望まない妊娠や中絶機会の喪失を防ぐため、妊娠の可能性に関し、チェックリスト、フロー等の資材の見直し、販売する薬剤師がより理解を深めるための追加的研修を実施するなどした。
 購入者に対し、服用3週間後を目途に避妊成否を確認するよう指導徹底薬剤師・産婦人科医間の連携体制の構築を書面をもって確認した。

 こうしたことから、令和5年度事業において抽出された課題に対する改善がみられた。
  協力薬局に対する「販売可否に係るチェックリスト」に係る調査では、引き続き「妊娠の可能性」に関する項目への改善意見が見られたものの、その割合は低下傾向にあった(令和5年度:90%、令和6年度76%)。
 また、妊娠の判断に係る追加的研修に対しては、9割近くの薬剤師が「役に立った」と回答した。

 購入者の避妊成否確認については、販売後3~5週間後の調査において、6割が「確認した」と回答しており、また、その他2割も「今後確認する」と回答した。その確認方法については、緊急避妊薬と同時に購入した妊娠検査薬において確認した割合が37.5%、別途購入した検査薬での確認が59.3%、産婦人科への受診による確認が3.4%であった。

 その他、協力産婦人科医へのアンケートにおいて、「患者が薬剤師の説明を理解したと考える」は100%(令和5年度:75%)であった。また「薬局からの紹介内容が不適切であった」は0%(令和5年度:0%)、「不適切な紹介はなかった」は91.7%(令和5年度:83.3%)であり、昨年度調査よりもいずれも改善傾向にあった。

 2023年11月28日~2025年1月31日の販売数は「6,813」だった。都道府県によりばらつきがあるが、約半数の都道府県で100件超を販売した(最少は山形県の18件)。

 協力薬局への来局時期及び曜日について大きなばらつきは見られなかったが、来局時間に関しては、概ね9時から19時に集中しており、夜間・早朝(21時から8時まで)の来局は全体の2%程度だった。
 購入者の年齢層は多くが20-39歳であったが、16-19歳も9%程度存在した。
 購入者への満足度調査では「薬剤師の対応」「説明のわかりやすさ」「プライバシーへの配慮」への満足度は高い一方で、「支払った費用」の満足度は低い傾向にあった(本研究では7~9千円の範囲内で各薬局で設定)。
 販売時に個室対応した薬局は約半数程度であり、その他「間仕切りの設置」や「対応時間の工夫」を使用した薬局も多数存在したが、「プライバシーへの配慮」へのアンケート結果では、大きな問題は報告されなかった。
 13薬局では16歳未満者に対する問い合わせがあった。また、11薬局では面前服用を拒否したために販売できなかった人がいた。

若年層への販売を検討事項に指摘

 販売対象者の年齢は検討事項に挙げられている。調査事業は倫理指針の基準である16歳以上を対象としたが、実際には13薬局では16歳未満者に対する問い合わせがあった。販売は 16 歳以上に限っていることをホームページ等で周知していたにもかかわらず15歳以下からの問合せや来局があったことは、実際にその年代からもニーズがあるものと考えられたと報告書では記載。医療用医薬品には年齢制限がかけられておらず、また、医療用医薬品「ノルレボ錠 0.75mg」の再審査報告書( https://www.pmda.go.jp/drugs_reexam/2016/P20160624002/470007000_22300AMX00483_A100_1.pdf )において 13 歳への処方が2例報告されていることも参考にしつつ、実際のスイッチ OTC 化の際には、このような方々への販売をどのように考えるか、検討する必要があると指摘している。

 また、16〜17歳においては「親の同意」を必要としていたが、保護者同伴なしの来局が報告されており(少なくとも5件)、この年代における同意取得の在り方についても併せて検討する必要があるとされている。

 他方、しばしば論点として指摘される「面前服用」については、事業では購入者が薬剤師の面前で服用することで販売。これは、転売等の不適切な使用を防止しつつ、必要な人に必要な緊急避妊薬を薬局から提供するために面前服用としたものとされる。報告書では、面前服用を前提として薬剤師が販売する体制が適切であると考えられたとしている。

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