【薬剤師会】医療用薬の供給不足「モラルハザード起こさない仕組みを」/山本会長が見解

【薬剤師会】医療用薬の供給不足「モラルハザード起こさない仕組みを」/山本会長が見解

【2021.12.16配信】日本薬剤師会は12月16日に定例会見を開き、この中で後発医薬品を中心とした医療用医薬品の供給不足問題について山本信夫会長が見解を示した。山本会長は「(医薬品製配販は)人の命を預かる仕事であり、モラルハザードが起きない仕組みが必要だ」との考えを示した。


 同日の会見では、安部好弘副会長が通知「医療用医薬品の供給不足に係る対応について」の発出に関して説明していた。
■当メディア関連記事
https://www.dgs-on-line.com/articles/1302

 その後、記者からの質疑応答で、さらに同通知の内容に関しての見解を問われると、安部副会長は次のように補足した。

 「薬局での現場から言うと、以前はなかなか入ってこなかった医薬品が最近は入ってくるようになったというものもあれば、逆に最近になって入ってこなくなったものもあるので、製品ごとにばらつきがあると感じている。その原因が本当に供給不足にあるのか、さまざまなところで在庫に偏在があるのか。心理的な影響もあるので、どうしても安全策で在庫を置きたいということが当然起きますので、そういったことで足りなくなっているのか、それぞれの製品によって違っているのだと思う。ただそれが今までは全くブラックボックスだったものが、今回はいくつかの製品ではマクロとして足りているということがわかった。現場の実質の供給不足は変わらないかもしれないが、心理的なところではブラックボックスだったところが少しずつ見えてくるということに対して、今後、いつそれが終わるかわからないという心理面では一歩前進したのではないかと思う。
 メーカーさんも自分のところはプラス5%ではなく、マイナス50%とか、いや空っぽですよというところは出荷調整解除もできないと思う。そういったところを年末に向けてどういうふうな状況になるのかというところが少し明らかになってきたところで、じゃあ次はどうするんだということになるのではないかというふうに思っている」(安部副会長)

 加えて、山本会長が次のように発言した。

 「実態の進行と調査の把握は(時間軸に)違いができることは、この調査に限ったことではない。
それぞれが医薬品供給の責任を持っているので、後発医薬品調剤体制加算があるかないかではなくてモラルハザードを起こさないようにすることが大切だ。そのために在庫を考えていかなくてはいけないし、調査の結果が実態をどれだけ把握しているかについては、調査はどうしても遅くなるので、現場の方が早いので、出た結果について違っていると言うのも誤った判断でしょうし、それが全て正しいと言うのもミスリードになる。現場の我々も含めて、モラルハザードが起きないようにしていかないといけないのではないかと思っている。人の命を預かる仕事なので、だれかが売る分を決めている、モノがあるのに売り惜しみをしている、そういったことがあれば大きな問題だ。そういったことが起きないことが大事なので、それができるシステムをつくらないといつになっても同じことが起きる」と話した。

編集部コメント/なぜ奥歯にものの挟まった言い方になるのか

 山本会長も、安倍副会長も、発言はどこか奥歯にものの挟まった表現だと感じる。
 それは何故か。
 
 後発医薬品の供給不足が叫ばれて1年近くになるが、多くの業務負担を被っているメーカー、卸、医療機関・薬局のほとんどが何の責任もないからである。だからこそ、供給不足を少しでも緩和するための前向きな検討であっても、その過程で供給不足の原因を語ろうとすると、「私が悪いとでも言うのか」と、ある意味で過剰な反応が出る可能性があるからではないかと感じる。

 しかし、それで本当にいいのだろうか。

 誰もが気を遣って、原因探究と対策に及び腰になることは、供給不足の長期化に甘んじるだけではないだろうか。

 その中にあって、山本会長の「モラルハザードの起きないシステム」という一言は、今後のあるべき姿を言い当てている。

 今般の経済課通知の内容は、刻々と状況は変化しているなど、時期のずれなどの指摘はあるものの、「供給は不足していないものもある」というファクトを示した。
■通知内容
https://www.dgs-on-line.com/articles/1294

 この通知は、最終的な対応ではなく、スタートであると受け止めるべきだ。

 一定の期間で区切った時に、これだけ供給不足が叫ばれながら、供給量はマクロとしては減っていないものもある。そうであるなら、それを受け止めた上でさらなる対策を検討すべきだろう。

 今、起きている現象、あるいはここまでに起きた経緯は、次のように整理できるという指摘もある。
(1) ある製品の供給が止まる
(2) 医療機関・薬局が代替のために同成分製品を発注(多め・あるいは通常より早め)
(3) 実需を超える一時的需要が発生し、混乱に拍車がかかる
(4) 卸各社は実需に応じた納品に努めているが、卸間の情報共有はできないので、複数卸に発注した場合は実需を超えた販売が起きる
(5) 他製品も品薄となり、さらに混乱が増す・・・

 ここで、注目すべきは、薬局が発注する量(言い方を変えれば卸が受注する量)、あるいはメーカーが出荷調整をかける前提が、各々の個別判断に委ねられてしまっていることだ。モノが豊富な時はそれでよかったが、ここをそろそろ公平な基準、客観的基準を設けるべき局面にきている。

 まず、メーカーが出荷調整を出す基準を明確化し、それに準ずるべきだろう。
 その上で、現状について各製品ごとに
・青:通常受注量に100%応えられている
・黄:通常受注量の70%以上に応えられている
・赤:通常受注量の70%未満しか応えられていない
といった「深刻度」を開示し、それをメーカー横断的に成分別で並び変えて公的なサイトなどで情報共有することはできないだろうか。
 
 この情報には、今後の見込みについても、
・++:現状を継続でき、かつ増産余力(見込み)あり
・+ :現状を継続できる、早期に回復見込みあり
・無印:悪化する可能性あり、回復に時間がかかる
・- :回復の見込み無し
といった情報も付加する必要がある。この開示もなるべくタイムリーに見直すことが必要だ。

 その上で、今度はそれに基づいて薬局の発注に関しても制限をすべきだ。例えば黄・赤の製品については実消化の115%を超える発注を控える事、といった目安を設けることなどだ。卸もこうした基準以外の受注を受けないということだ。

 つまり、みなが疑心暗鬼となり、民・民取引の中でビジネス原則を排除できない懸念も抱かれる中で、モラルハザードの起きない、公平な基準をみなでつくり、厳守する姿勢を生み出す必要がある。

 日本薬剤師会は10月8日、都道府県薬剤師会に対し、「引き続き必要量以上の発注を控えること」等を依頼している。供給不足の際には、発注制限をかける道理があるということだ。
 ある薬局業界の重鎮も、薬局の発注に一定の制限をかける案については「良いと思う」と話している。

 多くが「被害者」の中で、理にかなった基準を構築できるのか。これからの議論を見守りたい。

最も知ってほしいのは、供給不足の中で責務を全うしている製配販の姿

 なお、問題の根幹は供給不足であることは大前提だ。
 上記の厚労省通知やそれに呼応する対応などは、供給が回復するまでの間、「極めて限られたできることの議論」である。
 あまりに通知とその対応に目が向けられて、供給不足の中で懸命に責務を全うするメーカー・卸・医療機関・薬局の姿が軽んじられては本末転倒である。
 

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