【日本薬剤師会】次期調剤報酬での“外枠”回避を提案/敷地内薬局に対しては徹底抗戦の構え

【日本薬剤師会】次期調剤報酬での“外枠”回避を提案/敷地内薬局に対しては徹底抗戦の構え

【2021.12.02配信】日本薬剤師会は12月2日に定例会見を開いた。その中で、記者から現時点での次期調剤報酬改定への方針を聞かれると、会長の山本信夫氏は「“外枠”を避け公平な改定になるよう話をしている」と述べた。また、敷地内薬局を持つ同一グループの評価引き下げを提案したことについては「あくまで改定の中の話として出たが、薬局として認めていいのかという思いがあり、引かない」と徹底抗戦の構えをみせた。


 2018年度改定などでは大型門前薬局などの適正化目的で外枠で調剤報酬が引き下げられたことがある。
 2020年度改定ではこの“外枠”を解消していた。

 次回2022年度改定での“外枠”の行方に注目が集まる中、会見で次期改定への現時点での方針を聞かれた山本信夫会長は、予算の大枠が決まらないうちは議論に限界があるとの見方を示した上で、「今はあらゆるものをひろって議論しているという感じを受けているが、言えることは薬剤師会・薬剤師として評価してほしいという項目と、社会的にみてここは何なんだという項目がある」と述べた。

 加えて、「われわれとして申し上げておきたいことはいろいろ議論はあるが、技術料率に合わせた各科バランスを維持した改定と、それから外枠で2回ほど大変大きな額を下げられたことがあるが、財務的にはいいのかもしれないが、あの手はもう使ってほしくないということが基本的な線だ。(外枠は)やり方としてはフェアではないと思っている」と述べた。

 「薬局のあるべき姿を目指しながら点数配分を求めていきたい。調剤料についてもずっと言われてきた中で、2024年度、2026年度に向けて少しずつ方向転換をしていくことになるのだろうと思っている」(山本会長)と述べた。
 「公平な医科・歯科・調剤の1:1.1:0.3という比率の維持、また外枠は避けていただきたいという話についてはしている」とした。

 一方、中医協で「敷地内薬局を持つ同一グループの評価引き下げ」を提案したことについては、森昌平副会長は「そもそも敷地内薬局には反対している。さまざまな対応をしてきて、基本料を下げるという対応をしてきたが、その流れが止まらない中で、ビジネスモデルをとめるための方策として同一グループの引き下げだけでなくあらゆる手段を使ってという趣旨の中で発言したもの。日本薬剤師会としてしっかりそれを止めたい。そのために何ができるかはまだわからないところもあるが、手をつけていきたいということ」とした。

 加えて山本信夫会長は、「昭和49年に薬価差依存からの脱却と薬づけの医療をなおそうという謳い文句の中で今の医薬分業の形がスタートした。その後、50年代の半ばに第2薬局問題が浮上した。その時の最大のターゲットは国立病院の財団だった。何度とない意見の中で、平成元年に一定の終止符が打たれたが、そこから30年経って元に戻っているというのが私の偽らざる心境だ。こんなものを作っていること自体が間違っている。間違ったことなので、ここは引かない。ただ費用としてどうするのかと、状態としての敷地内薬局というのはまた別の議論。これを改定の中で話そうとすると評価を引き下げるということしかないのかもしれないが、そもそも薬事として、こういう形態を薬局として認められるのかという議論をしっかりしないといけない」と述べた。

 グループに勤務する薬剤師からの抵抗感もあるとの指摘については、「働いている方々は悪いと思っていないで働いていると思う。問題はそういう形態をつくること。それはしっかり私どもとしては言わないといけない。同一グループの引き下げについては診療報酬上の問題であり、どこまでできるかはわからない。その前に存在していること自体、いかがなものかと。そういう意味でまさに不快である」(山本会長)と述べた。

<編集部コメント>是々非々の姿勢をみせた「“外枠”回避」の発言

 大型門前薬局の引き下げとなる“外枠”を回避すべきだと山本会長が語ったことに、「意外だった」といえば失礼になるだろうか。

 「個人薬局の集まり」と揶揄されることの多い日本薬剤師会だが、そうであるなら、易々と外枠引き下げを受け入れる選択肢もあるはずだからだ。

 しかし山本会長は「外枠はフェアでない」と述べ、一方で敷地内薬局については理念に反することで徹底抗戦の姿勢を示した。「是々非々」の姿勢を見せたように思う。

 日本薬剤師会のミッションは、時代の変化の中でも薬剤師という職能が社会から評価される環境をつくることだと思っている。短期的に勤務薬剤師を苦境に置くように見える敷地内薬局の評価引き下げ提案の施策も、もしかしたら長期的には勤務薬剤師にプラスとなる施策になる可能性はないだろうか。
 本当に是々非々で進められるのか。“外枠”の行方を見守りたい。

この記事のライター

関連する投稿


【厚労省】連携強化加算の要件の見直し/コロナ治療薬の対応を要件に

【厚労省】連携強化加算の要件の見直し/コロナ治療薬の対応を要件に

【2023.03.27配信】厚生労働省は3月24日付けで事務連絡「調剤報酬点数表における連携強化加算の施設基準等の取扱いについて」を発出し、4月からの要件としてコロナ治療薬への対応などを含めた。適用は4月1日からだが、9月30日までの経過措置も設けている。


【敷地内薬局の薬学教育への影響も指摘】岐阜薬科大学附属薬局が今春に閉局へ

【敷地内薬局の薬学教育への影響も指摘】岐阜薬科大学附属薬局が今春に閉局へ

【2023.03.14配信】敷地内薬局の問題を指摘する声が大きくなる中で、薬学教育への問題を指摘する声も挙がってきた。中部薬品は2021年9月1日に、岐阜大学医学部附属病院の敷地内薬局となる岐阜大学病院前薬局を開局。この大学病院前には実務実習や地域の薬学教育において役割を果たしてきた岐阜薬科大学附属薬局があったが、コロナ禍と敷地内薬局の影響で経営状態が悪化したことを理由に今年3月末をもって閉局されることになったという。日本薬剤師会の臨時総会の一般質問で、敷地内薬局が薬学教育にも影響をもたらしているとの指摘が出た。


【在宅医療対応】「認定薬局の方が実績が高い」/日本保険薬局協会調査

【在宅医療対応】「認定薬局の方が実績が高い」/日本保険薬局協会調査

【2023.03.09配信】日本保険薬局協会は3月9日、定例会見を開き、在宅訪問や無菌調剤、麻薬応需の現状に関する会員調査結果を公表した。それによると、在宅訪問や無菌調剤、麻薬応需に関しては全体平均と比べ、認定薬局の方が実績が高い傾向が見られた。在宅訪問に関しては薬剤師配属人数とも相関している傾向が見られ、薬剤師2人未満の薬局においては在宅訪問を増やす余裕がない割合が高い結果となった。麻薬応需においては、実績が高いほど廃棄金額も膨らんでいく傾向が見られた。協会では「本調査結果を協会内で共有し、地域医療のニーズに応じた薬局機能の整備に貢献していきたい」としている。


【日病薬】令和6年診療報酬で「保険薬局との連携」の評価要望へ

【日病薬】令和6年診療報酬で「保険薬局との連携」の評価要望へ

【2023.02.18配信】日本病院薬剤師会は2月18日に第66回臨時総会を開催した。この中で「令和 6 年度 診療報酬改定要望事項」を議論し、重点要望事項として、「地域包括ケアシステムの充実に関する評価」を一番目に挙げ、保険薬局との連携に関する評価も求めた。保険薬局との連携に関する評価では、保険薬局からの院外処方箋に関する問い合わせへの対応や、保険薬局からトレーシングレポート等により提供された患者の服用薬や服用状況、副作用に関する情報等を、薬剤部が一元管理し、医師等の医療従事者に情報提供する体制の評価を要望している。


【東京都薬剤師会】“施設在宅”の問題指摘/「薬の配置だけでよいという施設もある」/永田会長

【東京都薬剤師会】“施設在宅”の問題指摘/「薬の配置だけでよいという施設もある」/永田会長

【2023.01.18配信】東京都薬剤師会は1月18日に定例会見を開いた。この中で、高齢者施設を対象とした、いわゆる「施設在宅」の現状認識について記者から質問が出ると、永田泰造会長は「薬の配置だけでよいという施設もある」と問題意識を示した。薬剤師を含めた多職種連携が重要であるとのコンセンサスを醸成するために協議する場をつくっていくことが1つの手法になるとの見方を示すとともに、薬剤師も介入の価値を認識してもらえるきっかけを提供していく必要性もあると話した。


最新の投稿


【サプライチェーン全体の在庫の可視化】日本IBMが製薬企業・卸などと運用検証を開始

【サプライチェーン全体の在庫の可視化】日本IBMが製薬企業・卸などと運用検証を開始

【2023.03.27配信】日本アイ・ビー・エムは3月27日、サプライチェーン全体の在庫の可視化に関して、4月からプラットフォームの運用検証を開始すると発表した。製薬企業や卸、物流企業が参加・協力する。


【大木製薬】夜用スポットケア「アバンタイム トーンショットクリーム」 3月から女優の奥菜恵さんを店頭販促、Web・SNSのPRに起用

【大木製薬】夜用スポットケア「アバンタイム トーンショットクリーム」 3月から女優の奥菜恵さんを店頭販促、Web・SNSのPRに起用

【2023.03.27配信】大木製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:松井 秀正氏)から発売している夜用スポットケア「アバンタイム トーンショットクリーム」は、 3月から女優の奥菜恵さんを店頭販促、Web・SNSのPRに起用した。


【厚労省】連携強化加算の要件の見直し/コロナ治療薬の対応を要件に

【厚労省】連携強化加算の要件の見直し/コロナ治療薬の対応を要件に

【2023.03.27配信】厚生労働省は3月24日付けで事務連絡「調剤報酬点数表における連携強化加算の施設基準等の取扱いについて」を発出し、4月からの要件としてコロナ治療薬への対応などを含めた。適用は4月1日からだが、9月30日までの経過措置も設けている。


【ウエルシアHD】全社全店でたばこ製品の取り扱いを終了/2026年2月までに

【ウエルシアHD】全社全店でたばこ製品の取り扱いを終了/2026年2月までに

【2023.03.24配信】ウエルシアホールディングスは3月24日、2026年2月までに全社全店でたばこ製品の取り扱いを終了すると公表した。 同社が策定・公表した「ウエルシア グループ健康宣言」の一環。


【ツルハHD2023年5月期 第3Q決算】鶴羽社長、調剤事業は「額をとりにいく戦略」

【ツルハHD2023年5月期 第3Q決算】鶴羽社長、調剤事業は「額をとりにいく戦略」

【2023.03.23配信】ツルハホールディングスは3月23日、2023年5月期第3四半期(2022年5月16日~2023年2月15日)の決算説明会を実施した。


ランキング


>>総合人気ランキング