OTC類似薬の議論、医薬品アクセスの阻害ないよう慎重に判断を
見解は以下の通り。
■「経済財政運営と改革の基本方針 2025」及び「規制改革実施計画」等の閣議決定を受けて(コメント)
政府は 6 月 13 日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」及び「規制改革実施計画」等を閣議決定しました。
これまで本会は、地域医療を守るべく日々の業務に懸命に取り組んでいる薬局が安定して地域住民・患者への薬剤師サービスの提供を継続できるよう、現下の物価高・職員の着実な賃上げに対応するための診療報酬等による措置もしくは必要な財源の確保を求めてまいりました。
今般の基本方針 2025 においては、 「公定価格の引上げを始めとする処遇改善を進める」と強い方針が打ち出され、「医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」、そして、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記されております。これまで医療・介護等の関係団体が一丸となって要望してきた「賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映」に対し、政府 ・与党をはじめとする多くの関係者の方々のご理解をいただけたものと受け止めており、深く感謝申し上げます。
また、薬剤師・薬局に関する事項として、医療DXの推進にあたり、「薬局が有する情報の標準化とDXを進める」と明確な方針が打ち出されました。質の高い効率的な医療サービスのためには薬局が有する情報が必須であり、薬局から医療機関への服薬状況等のフィードバック情報など、薬局と医療機関が共有する情報や、そのもととなる調剤録(薬歴)の情報などの標準化によるDXに積極的に取り組んでまいります。
さらに、持続可能な社会保障制度のための改革の方策として、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し等についても言及されておりますが、国民の医療アクセス ・医薬品アクセスを阻害するようなことがないよう、慎重かつ丁寧な議論の上で実現可能性を判断することが不可欠であることは言うまでもありません。そして、国民・患者はもちろん、医療現場にとって過度な負担を強いることがないよう配慮も必要です。
また、こうした検討が進められる一方で、本会としては、引き続き後発医薬品の普及・促進に取り組むなど、持続可能な社会保障制度に寄与してまいります。
今後、物価高・賃上げに係る対応については、前回診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証したうえで本年末までに結論を得ることとされております。一方、今般の基本方針で言及されている事項ではないものの、後発医薬品の普及・推進に係る加算や調剤報酬体系のあり方等に対する指摘も一部見受けられますが、引き続き本会としては、薬剤師 ・薬局による、患者の安全・適正な薬物治療のための様々な業務、国民皆保険の維持・堅持のための取り組みを適切に評価いただけるよう主張していくとともに、来年度予算編成過程に向けて注視していきたいと考えています。
また、規制改革実施計画においては、かねてより課題として指摘されてきた在宅医療における薬物治療の提供に係る項目が引き続き掲げられています。本会では、地域の薬局全体で在宅医療のニーズに対応すべく、地域薬剤師会が中心となって、薬局同士が連携できる体制づくりや当該地域の医薬品提供体制について多職種間で協議を進めていくことが重要であることから、在宅医療体制を含めた地域の医薬品提供体制強化のための 「アクションリスト」の策定を進めてきており、近日中の公表を予定しているところです。
日本薬剤師会は引き続き、全国の患者・地域住民がくまなく薬剤師サービスを受けられる体制の構築のため、都道府県薬剤師会・地域薬剤師会、地域の薬局と一丸となって取り組んでまいります。
令和7年6月20日
日本薬剤師会