【中医協総会】後発薬“変更不可欄”で議論/池端委員「現状は患者の訴えがほとんど」

【中医協総会】後発薬“変更不可欄”で議論/池端委員「現状は患者の訴えがほとんど」

【2021.07.21配信】厚生労働省は7月21日に中央社会保険医療協議会総会を開き、後発医薬品の推進や分割調剤、フォーミュラリなどについて議論した。この中で処方箋の“後発薬変更不可欄”について診療側委員から「現状は患者からの要望がほとんど」などとして、アドヒアランスの問題からも必要性があるとの意見が示された一方、支払側からは「限りある資源をどう活かすかの観点で考えて欲しい」との意見が出て、議論は平行線となった。


 日本医師会常任理事の城守国斗氏は、後発医薬品の推進に関連して、デバイスが変わることで使用方法が変わる場合などにおいて、患者が受け入れづらく後発医薬品に変えづらいケースがあることを指摘。「いったん試しても戻したいということもあり、アドヒアランスも悪くなる」と話した。さらには後発医薬品にはない効能効果をもつ先発薬もあるとした。
 そういった背景で、「後発薬変更不可」の処方箋が一定数存在しているとし、「変更不可欄を削除すべきではない。アドヒアランスの観点からやむを得ないことにご理解いただきたい」とした。
 一方、自己注射薬の増加が今後、予測される中で、行政の方からデバイスへの工夫について促すことも必要ではないかとした。

 安定供給の問題に関しては、監督の厳格化が「現状にも増して安定供給を阻害することも考えられる」とし、「まずは品質と安定供給の施策に関して工程表を定めることが必要ではないか」と話した。

 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦氏も、自身の体験も踏まえ「知る限り、後発薬に変更不可とするのは、ほとんどが患者さんからの要望。薬局で後発品にしませんかと再度聞かれることに対して、一定の負担を感じる高齢者もいる」とした。

 こうした意見に対し、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、後発医薬品の供給不安定化について理由を検討すべきとした上で、後発医薬品の“変更不可欄”については、「患者から訴えがあっても、効果は同等であることを説明し納得いただくことも医師の大切な業務ではないか。不可欄は役割を終えたと思っている」として削除を求める意向を示した。

 また幸野氏は後発医薬品調剤体制加算に関しては、現状を鑑みると、「減算の対象が4割は妥当なのか、加算の対象70%は妥当なのかについては検討が必要」と指摘した。

 幸野氏の後発医薬品変更不可欄への意見に対しては、城守氏、池端氏が改めて反論し、「医師からはもちろん説明している。その上で患者が後発医薬品がよいということも権利だと思う」とした。

 幸野氏もさらにコメントし、「限りある財源の中でどういていくかの観点で考えて欲しい」として、議論は平行線となった。
 

 

この記事のライター

関連する投稿


【厚労省】次期調剤報酬改定へ「現在の薬局の立地に至った経緯」調査

【厚労省】次期調剤報酬改定へ「現在の薬局の立地に至った経緯」調査

【2025.07.10配信】厚生労働省は7月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の調査票案」を提示した。次期調剤報酬改定議論の基礎資料となるもの。


【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、物価上昇および賃上げ分を含めたプラス改定を求めている。


【日本保険薬局協会】敷地内薬局基本料の変更求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】敷地内薬局基本料の変更求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、いわゆる敷地内薬局を対象とした基本料である「特別調剤基本料A」に設けられている「7種類以上の内服薬を調剤した場合には薬剤料が90/100 に減算」となる報酬体系を撤廃することを求めている。


【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【2025.04.23配信】厚生労働省は4月23日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、後発医薬品調剤体制加算の要件である「カットオフ値」が急減している店舗があることを説明し、問題視。対応を求めた。


【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、後発医薬品調剤割合について、「90%以上」の薬局が前年の調査から倍増していることがわかった。令和5年度調査では33.3%だったものが、今回の令和6年調査では66.1%となった


最新の投稿


【スギHD】セキ薬品の株式の取得/持分法適用会社化

【スギHD】セキ薬品の株式の取得/持分法適用会社化

【2025.08.19配信】スギホールディングス株式会社は8月19日、埼玉県を中心に調剤併設型ドラッグストアを展開する株式会社セキ薬品の株式(3万7929株、持株比率 34.8%)を取得し、持分法適用会社とすることについて決定し、同日、株式譲渡契約を締結したと公表した。


【薬局DXコンソーシアム】病院が新たに加盟/社会医療法人 仁厚会

【薬局DXコンソーシアム】病院が新たに加盟/社会医療法人 仁厚会

【2025.08.19配信】薬局DXコンソーシアムに病院が加盟した。社会医療法人 仁厚会が会員となった。


【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。


【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例

【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例

【2025.08.08配信】厚生労働省はこのほど、保険調剤「確認事項」(令和7年度改訂版)を公表した。2枚処方箋を受け付けることにより、投薬期間上限を超えるなどの不適切事例を指摘している。


【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環

【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環

【2025.07.30配信】東京都薬務課は7月30日、定例会見を開き、7月3日に危険ドラッグに指定した成分について説明した。指定した3成分はいずれも興奮、陶酔又は幻覚作用等を有する。すでに厚労省でも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する大臣指定薬物に指定され、令和7年7月13日をもって施行された。