【中医協総会】“コロナ特例加算”の恒久化をめぐって意見対立/調剤報酬の感染対策加算4点の継続なるか

【中医協総会】“コロナ特例加算”の恒久化をめぐって意見対立/調剤報酬の感染対策加算4点の継続なるか

【2021.07.07配信】厚生労働省は7月7日、中央社会保険医療協議会総会を開き、次期診療報酬改定に向けた議論を行った。この中で日本医師会など診療側から、現在の診療報酬上の“コロナ特例加算”の恒久化を求める要望が出た。これに対し、支払側の健保連からは「エビデンスが必要」「減収の担保のような考えは診療報酬の原則にはずれる」などの意見が出て、議論は平行線となった。コロナ禍の診療報酬上の対応として、例えば調剤報酬では基本料に「調剤感染症対策実施加算」4点の措置が取られているが、これがどの程度、延長、あるいは恒久化されるのか、注目が集まる。


 日本医師会常任理事の城守国斗氏は、冒頭、コロナ対応については、「医療現場全体で分担対応することになっている」と述べた。また受領行動が大きく変容したことによって、「医療費が1.3兆円減少したとの結果が出ており、通常増加していた分を考慮すると2兆円分が減少したと考えられる」と指摘。
  その上で、次期診療報酬改定においては通常通りの手法ではなく「手直しをしていくことがミッション」と話した。

 論点となっている「コロナ・感染症対応について」については、城守氏は、感染対策の重要性を挙げた上で特例的な加算に関して「感染が仮に収束したとしても継続することが重要」とし、「包括的な評価」や「恒久化」、さらには「点数の再評価」も検討すべきだと要望した。

 コロナ対策への診療報酬上の措置としては、一例として、初診・再診(医科・歯科)について1回当たり5点、入院については1日当たり10点、調剤については1回当たり4点、訪問看護については 1回当たり50円などが設けられている。
 調剤の加算名称は、「調剤感染症対策実施加算」。感染対策を行っていることに対して評価が上乗せとなっている。

 日本病院会副会長の島弘志氏も、「感染対策の加算継続に関して慎重に判断すべきだとは思うが、こうした感染対策を行ったことでインフルエンザも激減するなどの効果も認められることから、継続すべきであると考える」と述べた。  

 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦氏は、城守委員に賛同する考えを示し、加算は継続すべきであると同時に、加算対象機関が増えるような見直しを求めた。その上で、「交付金や補助金の活用も骨太方針に示されているが、どの範囲を交付金で、どこを診療報酬にするかの大枠が決まらないと議論がしづらい」との認識を示した。「現時点で診療報酬で対応しているものは継続してほしい」と述べた。さらに、「医療経済実態調査によって利益率が数パーセントしか認められない中で、数ヶ月の診療実態によって賞与が支払えなくなる事例が出た」として、コロナ禍では医療機関の経営の脆弱さが露呈したとし、「抜本的にどう考えるのかを議論すべき」とした。

 これに関連し、日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は、薬局でも感染対策を行った上で医薬品供給を行っている現状を説明。今後も感染再拡大も懸念される中で、「感染対策は引き続き行っていく必要がある」として、「疲弊しないように引き続き対応が必要と考えます」と述べ、調剤報酬上の加算継続を訴えた。

 こうした診療側の要望に対し、支払側からは反対意見や慎重論が相次いだ。
 
 全国健康保険協会理事長の安藤伸樹氏は、「検討にあたっては前提として効果検証していただき、真に必要な対応であるかや、特例を実施する基準、解除する基準などを明確していくべき」と話した。特例による影響についての調査結果報告を事務局に求めた。さらにはワクチンの接種状況や医療計画の策定における医療提供体制とも整合性をとった幅広い議論に資する資料を求めた。
 特例の恒久化に関しては、「議論はすればよいと思うが、効果など資料に基づいた形であればよい」とした。

 健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、「特例加算の恒久化に関しては明確に反対する」と述べた。
 「特例に関しては政府の措置として付けられた経緯があり、中医協で議論されていないもので、エビデンスもないもの。議論するのであればエビデンスを示すべき」とするとともに、 「補助金でコロナ対応をするのか、診療報酬でするのかはすみわけるべき」との考えを示した。
 さらに「診療報酬で減収補填をするようなことになれば、診療行為に対する対価という診療報酬の原則が崩れる」とし、「減収への対応は補助金・交付金で」と主張した。
 「感染収束まではやむを得ないが、対応にどれだけの費用が必要かの精緻も必要」と話した。

 併せて、「コロナ対応で必要なのは対症療法的ではなく、医療機関の機能分化と連携強化。コロナで学んだことを積み上げるべきだ」とした。

 こうした幸野氏の意見に対しては、城守氏が「中医協の役割には地域医療の安定化もある」と述べたほか、日本医師会常任理事の松本吉郎氏も「特例的な対応がなければ地域医療が維持できなくなる」、池端氏も「診療報酬で医療機関の経営は成り立っている」と述べるなど、議論は平行線となった。

この記事のライター

関連する投稿


【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【2025.03.12配信】厚生労働省は3月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で医薬品の安定供給確保に関連する薬機法改正案について報告された。“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上している。


【中医協】最低薬価引き上げ、約3%

【中医協】最低薬価引き上げ、約3%

【2025.01,15配信】厚生労働省は1月15日、中医協総会を開き、令和7年度の薬価改定について議論した。最低薬価について約3%程度引き上げることとした。


【中医協】認知症薬「ケサンラ」の薬価算定やコロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果を議題に

【中医協】認知症薬「ケサンラ」の薬価算定やコロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果を議題に

【2024.10.10配信】厚生労働省は10月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)を開いた。認知症薬「ケサンラ」の薬価算定やコロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果を議題とした。


【一般用抗原定性検査キット】コロナ“第11波”で薬局入手困難に

【一般用抗原定性検査キット】コロナ“第11波”で薬局入手困難に

【2024.08.29配信】新型コロナウイルス感染症の“第11波”ともいわれる感染拡大で、一般用抗原定性検査キットが不足している。日本薬剤師会は厚生労働省に対し、不足解消に向けた措置を要望した。


【厚労省_中医協】日薬連、令和7年度の薬価中間年改定「実施する状況にない」

【厚労省_中医協】日薬連、令和7年度の薬価中間年改定「実施する状況にない」

【2024.08.07配信】厚生労働省は8月7日、中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会を開催。関係業界からの意見聴取を行った。


最新の投稿


【日本薬剤師会】全国薬学部に薬剤師会入会案内チラシを配布/卒業式資料として

【日本薬剤師会】全国薬学部に薬剤師会入会案内チラシを配布/卒業式資料として

【2025.03.15配信】日本薬剤師会は3月15日に臨時総会を開いた。この中で、全国薬学部に薬剤師会入会案内チラシを配布したことを報告した。


【日薬_岩月進会長】「賃上げ・物価高騰に対応した財源を要望」/第105回臨時総会会長演述で

【日薬_岩月進会長】「賃上げ・物価高騰に対応した財源を要望」/第105回臨時総会会長演述で

【2025.03.15配信】日本薬剤師会は3月15日に第105回臨時総会を開いた。この中で会長の岩月進氏は会長演述を行った。医療分野における賃上げ・物価高騰に対応した適切な財源を、引き続き政府に要望していく考えを示した。薬剤師においては、「今後は、処方箋調剤にとどまらず、健康サポート機能のさらなる充実、さらには人口減少地域や山間へき地、島しょ部への対応、休日・夜間や在宅医療等における医薬品提供の確立や、 OTC 医薬品や検査薬や衛生用品などを含めた供給拠点としての地域の薬局が必要な機能を発揮できるよう体制を整えていかなくてはならない」とした。


【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【2025.03.14配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が3月14日に開かれた。


【OTC類似薬】“処方箋医薬品以外の医療用薬”7000品目800成分のうちOTCあるのは130成分1900品目/田村まみ氏(国民民主党)

【OTC類似薬】“処方箋医薬品以外の医療用薬”7000品目800成分のうちOTCあるのは130成分1900品目/田村まみ氏(国民民主党)

【2025.03.14配信】3月13日に参議院予算委員会公聴会が開かれた。この中で国民民主党の田村まみ氏は、「“処方箋医薬品以外の医療用薬”7000品目800成分のうちOTCあるのは130成分1900品目」だと指摘した。


【薬局経営状況】令和7年度薬価改定で1薬局あたり200万円の収益減/自民党薬剤師問題議員懇談会で訴え

【薬局経営状況】令和7年度薬価改定で1薬局あたり200万円の収益減/自民党薬剤師問題議員懇談会で訴え

【2025.03.12配信】3月12日、自民党薬剤師問題議員懇談会が開かれた。この中で日本薬剤師会と日本薬剤師連盟は、令和7年度薬価改定で1薬局あたり200万円の収益減となること、約3割の薬局が赤字経営であるなどのデータを示し、薬局経営の厳しい状況を訴えた。主要民間企業と比べ人件費上昇率・額は「大きく下回っている」とし、人材確保にも支障をきたしているとの危機感を表明した。