【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【2025.03.12配信】厚生労働省は3月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で医薬品の安定供給確保に関連する薬機法改正案について報告された。“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上している。


 今回の改正薬機法案では、医療用医薬品等の安定供給体制の強化を目的とした事項が複数含まれており、関連して重要供給確保医薬品の「供給不足の発生を未然に防止するために必要な措置」(改正後医療法第3 8条)がある。

 改正後医療法第3 8条の規定は、重要供給確保医薬品(安定確保医薬品A・B相当)について、その医療上の必要性の高さ、供給リスク等を勘案して、特に事前にサプライチェーン上の措置を講じなければ、その医薬品の供給不足により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある場合に、当該重要供給確保医薬品の製造販売業者、製造業者に対し、当該サプライチェーン上の課題への対応を求めることができるもの。

 事務局は、想定される事例として、βラクタム系抗菌薬のセファゾリン等の4成分について紹介。この4成分は、現在、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律 (令和4年法律第43号)の特定重要物資に指定され、2030年を目途に、原薬の国内製造体制を整備することとしている。
 一方で、国産原薬を使用した製剤は、その使用割合等にもよるものの、海外産原薬のみを使用した製剤より価格が高くなることが想定される。このため、特定重要物資とされているセファゾリン等の4成分については、安定供給確保の観点から、2030年目途の国産
原薬を使用した製剤の供給開始に向けて、例えば、薬価や時限的補助といった方法により、国産原薬を用いることに伴うコスト増に対し、どのような対応が可能かを検討する必要が生じるとの論点が示された。

診療側・支払い側から薬価上の措置には慎重意見/「国の措置で」

 本件は報告事項であり、中長期的にあり得る論点を示した形だが、診療側・支払い側委員からは慎重姿勢の意見が示された。

 日本医師会常任理事の長島公之氏は、「例えば薬価や時限的補助といった方法により国産原薬を用いることに伴うコスト増に対してどのような対応が可能かを検討する必要が生じる」という部分について、「まずは国が環境整備をしっかりと進め、必要なら時限的補助などの対応を行い、その上で薬価による対応の必要性や内容について効果の見込みなどの必要な資料もしっかり揃えて頂いた上で検討すべきであると考える」とした。

 健康保険組合連合会理事の松本真人氏は、「ご説明の法改正の趣旨や方向性については理解はしている。ただ5ページにありますが想定され得る対応については、政府としての考え方を中医協の場で説明されたということだと思うが、これは安全保障政策の一つ、すなわち国策として対応するのであれば、国が費用を負担することや税制措置など様々な選択肢があると思っている。原薬の国内制度体制の整備については、医薬品の安定供給を確保するためとは受け止めるが、今年中に改正法が施行されたとしても、実際に国産原薬を使用した製剤が流通するのは資料にもある通り2030年頃になると理解している。次期薬価制度改革で即座に結びつくものではないというふうに受け止めている」とした。

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