八重樫医師は、5月28日にキャンペーンの進捗方向をアップした。
「キャンペーンが始まってたった1ヶ月強の5月25日に、菅首相は今までは医師・看護師・特例で歯科医師のみが可能であった予防接種の注射行為を、救急救命士や臨床検査技師にも認める方針を出しました(1)。厚生労働省が5月31日に有識者会議を開き、法的に可能だとの解釈を示す方向です。皆様のおかげで、新型コロナワクチンの打ち手が増えて、日本がコロナ禍をより早く脱する可能性が高くなりました」として、昨今の動きを報告。
「『どうせ何も変わらない』と諦めないで、既成概念に縛られず、行動して下さった皆様ひとりひとりのおかげです。コロナ禍という国難を乗り越えるために、キャンペーンを通じて様々な方々に一緒に行動を起こして頂きました。皆様のおかげで日本がより良い方向に変わります。心より感謝申し上げます」とした。
ただ、救急救命士や臨床検査技師の打ち手の確保だけでは不十分との考えを表明。
「医療機関に勤務する臨床検査技師さんの人数は約6.7万人です[2]。国家試験に合格した臨床検査技師さんは累計約20.7万人おりますが、働いてない方も数多くいて、今回の貢献を見込めるのは医療機関に勤務する臨床検査技師さんでしょう。20万人を見込むのには無理があります。一方で、救急救命士として働いている救急救命士さんは2.7万人であり、資格を有する方全部でも3.7万人です。ただ、コロナ禍でコロナ患者さんを乗せた救急車の救急搬送で病院たらい回しも多く、業務が逼迫しており、すでに過労で多くの方の貢献を見込めないでしょう」とし、実質的に多くの確保にはならないのではないかとの懸念を示した。
同時に、打ち手となる医療専門職種の議論の観点にも考えを示した。
「医療専門職で大切なのは知識に基づく判断です。筋肉注射という難易度が低い手技を認めるか否かを判断するのに、人体に針を刺しているか否かで判断するのは、医療従事者のスキルで何が大切か理解していないのではないか」として、針刺しの実績の有無を重視する方針には疑問を呈した。
「内閣の総力を挙げて取り組んでいく」(6)と昨日5月28日の会見で答えています。特例として打ち手として認められた歯科医師は全国各地で重要な打ち手となっていて、ワクチン接種を加速するのには打ち手を増やすことは重要であることの証明となっています。総力を上げるならば、法整備をしてでも薬剤師さんを接種の担い手にするべきでしょう。結論として、世界26ヶ国で平常よりワクチンを接種の担い手として活躍している、薬剤師さん31万人にも活躍してもらったほうが良いでしょう。6年制の薬学部教育で、5年前から模型を用いて筋肉注射等の練習をさせている大学もあります(7)。すでに新型コロナワクチンの接種の研修会を薬剤師さん向けて開催した大学もあります(8)。薬剤師さんがワクチンを接種できるようになると、将来的にもワクチンが気軽に安価に接種できることで、新たな感染症に対してパンデミックを防ぐ効果もあるでしょう」」として、今後の議論に期待を示した。
サイトでは、参考資料として、以下を列記している。
1. 首相、接種1日60万回増へ総力 6月中旬までに
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE24BT50U1A520C2000000/
2. 医療機関に勤務する臨床検査技師さんの人数は66,866名
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000575525.pdf
3. 臨床検査技師の試験に受かった人数は累計207,668人)
日本臨床衛生検査技師会史・組織の発展 P278
4. 救急救命士の資格を有する消防職員は3万7,143人、うち2万6,581人が救急救命士として運用https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h30/chapter2/section4/38616.html
5. 薬剤師による接種「立法措置が必要」 政府答弁書
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA287TZ0Y1A520C2000000/
6. 「1日100万回接種、6月中旬以降に」 首相表明https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA287UR0Y1A520C2000000/
7.「薬剤師による注射」、6年制薬学部でどこまで学ぶ︖「将来⾒据えた取り組み」始めた⼤学もhttps://pnb.jiho.jp/tabid/68/pdid/29952/Default.aspx
https://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/af1266af80cb927bfa81424850f08f5e
8. 新型コロナワクチン接種、薬剤師に研修 長崎の大学https://www.asahi.com/articles/ASP5V7F9CP5VTOLB008.html?iref=pc_ss_date_article
【薬剤師によるコロナワクチン接種】八重樫医師「医療専門職で大切なのは針刺し実績ではなく知識に基づく判断」/署名活動の進捗報告
【2021.05.31配信】「薬剤師さんが新型コロナワクチンを接種できるようにしよう!」との署名活動を展開している八重樫牧人医師(亀田総合病院総合内科部長)は5月28日、オンライン署名のホームページ上で進捗を報告した。その中で、八重樫氏は、筋注は難易度が低く、「医療専門職で大切なのは針刺し実績ではなく知識に基づく判断だ」との考えを示した。医療機関勤務の臨床検査技師6.7万人、救命救急士2.7万人に加え、薬剤師31万人を打ち手にする必要性を指摘している。
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