【前期業績ハイライト】既存売上高は4.3%増。期首計画から1ポイント上回り
杉浦副社長はまず、終わった期の業績ハイライトを説明。
売上高は+11.2%の6025億円、営業利益+13.2%の337億円で4期連続の増収増益となった。
コロナ禍でマスク着用やテレワークなど新しい生活様式が定着する中、店舗での感染対策を行い、最前線で地域の安全で健康な暮らしを支えるために営業を継続したことで多くの支持を得たことが、結果的に業績につながったと総括した。
売上では巣篭もり需要や食品増など特に郊外店が好調に推移し、既存売上高は4.3%増と期首計画から1ポイント上回ったという。
調剤併設の強みを生かして開局を進め、調剤事業は前期比11.7%増の1175億円となった。
営業利益では、地域社会のインフラとしての店舗営業を支えてくれた従業員に対し、昨年に続き特別手当てを支給したことで人件費は増加したが、その他の経費をコントロールしたことで人件費増を吸収し、過去最高益を更新した。
出店では121店舗を出店し、過去最高の出店となった。内訳は関東34、中部34、関西32、北陸21。
出店数は年々増加しており、店舗数は5年で4割増加している。
期末店舗は1391店舗。
医療機関を併設した店舗も出店している。医療機関併設型店舗は調剤の成長ポテンシャルにも大きな影響があるとして、出店を拡充していく。
デジタル活用の面では、3つを説明。
1つ目は顧客との接点である公式アプリの増加。601万D Lとなっているという。販促費を抑えながら売上の最大化に寄与している。今後も量的には質的にも更なる進化を目指す。
2つ目は売り場に携帯型情報端末を導入。店舗事務室でしか確認できなかった情報も確認することができるようになり、発注を含め、業務が効率化された。
3つ目に、ビューティー領域で全店に新カウンセリングシステムを導入した。一人一人に合わせたカウンセリングを行うためのもの。
戦略的なパートナーシップに関しては、同社が進めるトータルヘルスケア戦略は多岐にわたるため自社だけでなく他社と積極的な協働を進めている。新たな購買体験を顧客に提供することを前提とする。
前期にはメドピア社との取り組みであるアプリ「スギサポウオーク」では150万D Lを達成。単なる歩数計アプリではなくチェックイン機能による来店促進、ミッション機能を用いて健康支援ソリューション、企業広告への活用を進めている。
台湾で店舗を展開する大樹薬局と提携。商品供給はすでに進んでおり、今年5月には商品数拡大など、本格的な展開が進展する予定という。日本式ドラッグストアの商品展開や接客ノウハウを提供予定。台湾での成功事例を積み上げ、同様の取り組みで更なる海外展開を目指す。
【次期業績見通し】上期は昨年のコロナ特需を加味し増収減益計画も通期では増収増益に
2022年2月期は増収増益を経過計画。売上高は7.9%増の6500億円、営業利益0.9%増の340億円を見込む。コロナの感染状況が同社の業績に大きな影響を与えるため、下期から段階的な経済活動の再開、来年の年初から少しずつ訪日外国人が戻り始めるとの前提に立っているもの。
調剤の伸びも見込み、既存店売上高は1.6%増加する見通し。
販管費に関しては積極的なD Xへの投資と企業規模拡大に伴う人材採用強化を継続する一方、人員の適正配置や働き方改革によって人件費の伸びを抑えるなど、経費を適正にコントロールをして、営業利益の確保を図る。
今期の見通しでは、上期はコロナ特需で大幅な利益増大があった前期実績を加味して増収減益の計画とするものの、下期に利益を確保することで通期では増収増益の計画とする。
出店に関しては引き続き、関東・中部、関西、北陸へ計120店舗の出店を予定し、前期同様、調剤併設で進めていく。退店は20店舗を計画し、年間100店舗の純増を目指す。各地域でのドミナント化へ向けて、継続的な出店をしていく。
【今後の戦略】「調剤併設型」「医療機関併設型」「敷地内薬局」を三位一体で進める
同社が進めるトータルヘルスケア戦略の中でも、「医療・服薬領域」の方針を説明。
この中で、杉浦副社長は認定薬局制度について、次のように説明。
「2015年に(厚労省から)公表された“患者のための薬局ビジョン”では、かかりつけ薬剤師・薬局機能と、高度薬学管理機能が薬局に必要とされる機能として掲げられた。そして、今年8月には薬機法改正に伴う薬局分類が始まる。患者の薬局ビジョンに掲げられたかかりつけ機能を充実させた地域連携薬局、そして高度薬学管理機能を備えた専門医療機関連携薬局の認定制度だ。2025年までには地域連携薬局、専門医療機関連携薬局、あるいはどちらにも属さないその他の薬局に分類される見通しだ。政府はこの薬局分類によって、優れた医薬品・医療機器を患者様に早く安全に効率的に提供し、地域包括ケアシステムの中で薬局や薬剤師にさらなる活躍を促すとともに、患者様のための薬局ビジョンを実現することを目指している」
その上で、同社の認定薬局への取り組みについて、「2つの認定薬局に求められる要件は厳しいが、当社も対応していく。創業以来の調剤併設を進める上で、まずは地域連携薬局への対応を進める。専門医療機関連携薬局についても、専門医療機関との連携や専門医療人材の育成を通して認定を目指していく」とした。
こうした国策を踏まえ、同社の調剤戦略については、調剤併設型店に加え、医療機関併設型、敷地内薬局を三位一体として進める考え。
「調剤併設型店」は地域連携薬局に対応した店舗。
「医療機関併設型」は超高齢社会に対応した医療・健康・介護をワンストップで提供する医療インフラであるとともに医療機関との連携パターンに合わせてかかりつけ薬剤師・薬局機能や高度薬学管理機能を持つ店舗となる。
この三位一体モデルについては、「三位一体モデルを推進することによって地域の調剤・医療ネットワーク構築を進めることで地域の患者様は自身の特性や趣向・状態に合わせてこの3タイプの中から店舗を選ぶことができ、また、店舗間での患者様情報を共有をすることで安全で安心な調剤サービスを提供することが可能となる」(杉浦副社長)との見方を示した。
D X推進に関しては、「当社の人の強みを生かすために、D Xを推進し、リアルとデジタルの融合による生産性の向上を進める」とする。調剤領域では、すでにかかりつけ薬局化支援システムを導入しており、さらに新たなレセコン、電子薬歴システムを今期中に導入する予定。これらにより調剤の専門性と患者の利便性の向上を図る。
「調剤の専門性」については、デジタルを活用して調剤時の服薬指導データを蓄積・分析を進める。例えば処方内容と服薬指導、その対応結果のデータを分析し、患者一人ひとりに最適な服薬指導を行うことができるようになることを目指す。データ分析・服薬指導・検証のサイクルを繰り返し、その専門性を高め続けるとする。
「患者の利便性」に関しては、これまでの対面サービスに加え、デジタルの接点を増やす。スマホから処方箋の画像を送信できる、薬剤師とのチャットでの相談、ビデオ通話によるオンライン服薬指導等のサービスにより、患者の利便性向上につながる。
デジタルとリアルの融合による生産性向上では、同社の1400店舗は店舗ごとを見ると生産性にばらつきがあるとして、D Xを通じて底上げをはかり生産性を改善する考え。商品・サービスを通じた優良顧客の育成や新たな顧客を開拓するとともに、知的業務支援や機械化などによる省力化も進める。
ESGの取り組みについては、「コロナ禍で地域からの“安全安心な商品を購買したい、信頼できる情報を入手したい、気軽に相談をしたい”などの思いを今まで以上に実感した」との考えを示した。
「当社は医療提供施設として、またエッセンシャルワーカーとして、ヘルスケアを身近にかつ気軽に提供する存在としての役割・期待の高まりを感じている。国内は少子高齢化、経済成長を上回る医療費の増加、地域の不十分な医療ネットワーク・インフラなどの問題が山積の中、健康的な食生活・運動というセルフケア、医療費適正化に向けた医療行為の成果向上や患者様へ適切な情報提供と支援、在宅で居住する高齢者向けの介護や生活支援などのニーズが高まっている。環境問題で言えばパリ協定を起点に地球温暖化防止は世界の共通の重要な課題の1つとなっている。このような社会や環境の変化は、創業以来、地域社会への貢献を理念に掲げてきた同社グループにとってより1層の追い風が吹いていると捉えている。不確実な時代であるからこそ、地域のお客様患者様の課題解決に全力で取り組むことが最終的には経済的な利益の獲得、企業価値の最大化に結びつくと考えている」と述べた。
E G Sの具体的な取り組み内容については、5月の定時株主総会終了後に発行予定の統合報告書の最新版で確認できるとした。