一人の患者の複数科の処方箋を一元的に管理できているか
幕張メッセで10月14日~16日まで開かれた「医療と介護の総合展」(リードエグジビションジャパン主催)で講演したもの。
磯部氏は、「病院の機能分化や地域完結型医療が進められる中で、医療や介護のスタッフが移り変わっても、誰かが常に一人の患者さんの情報を把握している必要がある。複数科の患者の医薬品情報を一元的に管理している薬局の存在は非常に重要になる。それがなければ患者の安全は守られない」と話した。
これは端的にいうと国が進める「かかりつけ薬剤師」制度の推進ということになるが、すでに議論がスタートしている2022年4月の調剤報酬改定にもリンクしていくことになるだろう。
現行のかかりつけ薬剤師の加算算定は、患者からの同意を基本としている。しかし、この同意をもってして、本来的なかかりつけ薬剤師の機能である一元的な服薬管理が行えているのかどうかを測れているのか。ここには懐疑的な見方がある。
磯部氏の発言は、この一元的管理の実効性をさらに深掘りした指標で薬局の機能を評価すべきだとの方針が窺える。
その指標は今後、議論が進むと考えられるが、例えば、一人の患者の複数の処方箋を本当に一つの薬局が管理しているのかどうか。こんな指標が浮上してくる可能性はあるだろう。今後、医療の情報がITによって連携されてくると、一人の患者が複数の診療科を受診していることもわかりやすくなってくる。
いずれにしろ薬局では、「この患者さんの一元的管理はできているか」という本質的な問いと実行を進めておく必要があるだろう。
一元的管理が同じ薬効の重複を見つけたり、薬の飲み残しの整理につながり、患者にとってもメリットをもたらす。
2025年までが一つの山場
厚生労働省でのキャリアもある磯部氏は予算編成の過程にも詳しい。
磯部氏は、2022年から2025年までは、国費の投入割合の高い75歳以上人口の伸びが特に顕著であることから、「自然増がこれまでのように5000億円の中でおさまることが難しくなる可能性が高く、この数年間の医療費の財源問題をどうしていくかが大きなテーマ」とした。若干といえ2020年春には実現した調剤報酬のプラス改定が危うくなる可能性を示唆した。しかし、予期せぬ新型コロナウイルス感染症で受診抑制が起きたため、この問題がどのように医療費に響いてくるかが連動してくるとの見方を示した。
「主語が薬剤師になりがちだが、常に主語は患者や国民であるべき。患者や国民にとって薬局が何ができるのか。患者目線に立った価値の提示が求められている」(磯部氏)

シールド越し、かつマスクをつけて講演した日本薬剤師会専務理事の磯部総一郎氏