薬剤師会のスポークスマンが語った薬局の未来。「一人の処方箋を一元的に見られる薬局の価値」

薬剤師会のスポークスマンが語った薬局の未来。「一人の処方箋を一元的に見られる薬局の価値」

【2020.10.16配信】社会の要請に合わせて、どのように薬局の価値を提示していくのかが問われている。薬局で処方箋薬を受け取る「医薬分業」の費用に見合った機能が問われている中、日本薬剤師会のスポークスマンとしての役職である専務理事を務める磯部総一郎氏は、「病院の機能分化や地域完結型医療が進められる中で、医療や介護のスタッフが移り変わっても、複数科の患者の医薬品情報を一元的に管理している薬局の存在は非常に重要になる。それがなければ患者の安全は守られない」と強調。患者の服薬情報を一元管理する薬局の姿を推進していく考えを示した。今後の調剤報酬改定にも少なくない影響を及ぼしていくと考えられる。


一人の患者の複数科の処方箋を一元的に管理できているか

 幕張メッセで10月14日~16日まで開かれた「医療と介護の総合展」(リードエグジビションジャパン主催)で講演したもの。

 磯部氏は、「病院の機能分化や地域完結型医療が進められる中で、医療や介護のスタッフが移り変わっても、誰かが常に一人の患者さんの情報を把握している必要がある。複数科の患者の医薬品情報を一元的に管理している薬局の存在は非常に重要になる。それがなければ患者の安全は守られない」と話した。

 これは端的にいうと国が進める「かかりつけ薬剤師」制度の推進ということになるが、すでに議論がスタートしている2022年4月の調剤報酬改定にもリンクしていくことになるだろう。

 現行のかかりつけ薬剤師の加算算定は、患者からの同意を基本としている。しかし、この同意をもってして、本来的なかかりつけ薬剤師の機能である一元的な服薬管理が行えているのかどうかを測れているのか。ここには懐疑的な見方がある。

 磯部氏の発言は、この一元的管理の実効性をさらに深掘りした指標で薬局の機能を評価すべきだとの方針が窺える。

 その指標は今後、議論が進むと考えられるが、例えば、一人の患者の複数の処方箋を本当に一つの薬局が管理しているのかどうか。こんな指標が浮上してくる可能性はあるだろう。今後、医療の情報がITによって連携されてくると、一人の患者が複数の診療科を受診していることもわかりやすくなってくる。

 いずれにしろ薬局では、「この患者さんの一元的管理はできているか」という本質的な問いと実行を進めておく必要があるだろう。

 一元的管理が同じ薬効の重複を見つけたり、薬の飲み残しの整理につながり、患者にとってもメリットをもたらす。

2025年までが一つの山場

 厚生労働省でのキャリアもある磯部氏は予算編成の過程にも詳しい。

 磯部氏は、2022年から2025年までは、国費の投入割合の高い75歳以上人口の伸びが特に顕著であることから、「自然増がこれまでのように5000億円の中でおさまることが難しくなる可能性が高く、この数年間の医療費の財源問題をどうしていくかが大きなテーマ」とした。若干といえ2020年春には実現した調剤報酬のプラス改定が危うくなる可能性を示唆した。しかし、予期せぬ新型コロナウイルス感染症で受診抑制が起きたため、この問題がどのように医療費に響いてくるかが連動してくるとの見方を示した。

 「主語が薬剤師になりがちだが、常に主語は患者や国民であるべき。患者や国民にとって薬局が何ができるのか。患者目線に立った価値の提示が求められている」(磯部氏)

シールド越し、かつマスクをつけて講演した日本薬剤師会専務理事の磯部総一郎氏

この記事のライター

関連する投稿


【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、物価上昇および賃上げ分を含めたプラス改定を求めている。


【日本保険薬局協会】敷地内薬局基本料の変更求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】敷地内薬局基本料の変更求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、いわゆる敷地内薬局を対象とした基本料である「特別調剤基本料A」に設けられている「7種類以上の内服薬を調剤した場合には薬剤料が90/100 に減算」となる報酬体系を撤廃することを求めている。


【日本薬剤師会】改正薬機法成立を受けてコメント発表

【日本薬剤師会】改正薬機法成立を受けてコメント発表

【2025.05.14配信】日本薬剤師会は5月14日、改正薬機法が成立したことを受けてコメントを発表した。


【日本薬剤師会】“アクションリスト”、「早急に」作成・公表/地域医薬品提供体制強化で

【日本薬剤師会】“アクションリスト”、「早急に」作成・公表/地域医薬品提供体制強化で

【2025.04.10配信】日本薬剤師会は4月10日に定例会見を開き、地域医薬品提供体制強化のための「アクションリスト」について、「早急に」作成、公表したい考えを示した。


【日本薬剤師会】公式キャラクター「ふぁるみん」47都道府県ご当地版作成/LINEスタンプも

【日本薬剤師会】公式キャラクター「ふぁるみん」47都道府県ご当地版作成/LINEスタンプも

【2025.04.10配信】日本薬剤師会(日薬)は4月10日に定例会見を開いた。この中で公式キャラクターである「ふぁるみん」について、47都道府県ご当地版を作成したと報告した。日薬版ではLINEスタンプの配信も開始した。


最新の投稿


【OTC薬協】新会長に上原茂氏(大正製薬社長)/書面で就任所信表明

【OTC薬協】新会長に上原茂氏(大正製薬社長)/書面で就任所信表明

【2025.05.19配信】日本OTC医薬品協会は5月19日、新会長に上原茂氏(大正製薬社長、大正製薬ホールディングス社長)が就任したと発表した。就任会見は行わず、所信表明である「会長就任のご挨拶」を書面で配信した。


【改正薬機法_認定薬局】“上乗せ”機能に基準明確化の意見/厚労省検討会

【改正薬機法_認定薬局】“上乗せ”機能に基準明確化の意見/厚労省検討会

【2025.05.19配信】厚生労働省は5月19日、「第14回薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」を開催し、改正薬機法で新設される「健康増進支援薬局」など、認定薬局の基準について議論した。構成員からはこれまでの基準には基本的な薬局機能まで含まれているため、今後の基準においては“上乗せ”の機能を基準にしていくべきなどの意見が出た。


【新経済連盟】改正薬機法成立で三木谷代表理事がコメント公表

【新経済連盟】改正薬機法成立で三木谷代表理事がコメント公表

【2025.05.16配信】一般社団法人新経済連盟(所在地:東京都港区、代表理事:三木谷浩史氏)は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」が5月15日付けで成立したことを受け、代表理事のコメントを発表した。新経済連盟はこれまでも濫用のおそれのある医薬品の販売規制について、「市販薬のネット販売にビデオ通話を義務付ける厚生労働省の案の撤回」を求めており、今後の下位法令等が規定においても引き続き要望活動を展開する構え。


【あすか製薬】緊急避妊薬のスイッチOTCの承認申請を公表

【あすか製薬】緊急避妊薬のスイッチOTCの承認申請を公表

【2025.05.15配信】あすか製薬は5月15日、 緊急避妊薬のスイッチ OTC について、製造販売承認申請を行ったと公表した。


【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【日本保険薬局協会】物価・賃上げ分のプラス改定求める/厚労相に要望書提出

【2025.05.15配信】日本保険薬局協会は5月15日に定例会見を開き、前日の14日に福岡厚労大臣宛てに「2026 年度診療報酬改定等に関する要望書」を提出したことを説明した。その中で、物価上昇および賃上げ分を含めたプラス改定を求めている。