「対人業務を重点的に評価する報酬体系への一層のシフトを」
調剤報酬に関しては以下のように記載した。
④ 調剤報酬改定
日本の薬剤師数は増加傾向にあり、諸外国比で見ると、その数は突出して多い。同時に、調剤薬局も増加を続けているが、その立地の状況を見ると、診療所の近隣が多くなっており、また、例えば一法人が一店舗を営業する薬局の割合は約 25%となっている。これらを踏まえれば、薬局数の集約化・適正化は喫緊の課題であると考えられる。
調剤報酬については、これまでも、「対物業務」から「対人業務」へのシフトを促す方向で対応が進められてきたが、引き続き、多剤・重複投薬の防止や残薬の解消、かかりつけ薬剤師機能の発揮といった観点から、対人業務を重点的に評価する報酬体系への一層のシフトを進めていくべきと考えられる。
「後発薬シェア踏まえ調剤技術料・薬学管理料の報酬体系見直しを」
ア)調剤報酬をめぐる動向
医薬分業が進み、処方箋受取率が上昇する中で、処方箋発行枚数は増加傾向にあり、調剤医療費のうち技術料の伸びが顕著となっている。他方で、薬剤師数が増加していることから、薬剤師1人当たり処方箋枚数の大きな増加は見られないが、処方箋1枚当たりの技術料は増加傾向にあるため、薬剤師1人当たりの技術料は増加している。
イ)対人業務へのシフト
薬剤師の業務については、医師に処方された薬の調製・交付などの「対物業務」から、処方内容を確認し、医師への疑義照会などにより重複投薬・相互作用等の防止、患者への服薬指導などの「対人業務」へのシフトを促す方向で改革が進められてきたところである。調剤報酬について見ると、技術料は、処方箋1枚当たりでも、薬剤師1人当たりでも大きく伸びており、適正化の余地が大きいと考えられる。
特に、令和4年度(2022 年度)改定において、かつての「調剤料」を、対物業務を評価する「薬剤調製料」と、対人業務を評価する「調剤管理料」に整理したものである。しかしながら、「調剤管理料」については、例えば服用状況等の確認や記録といった表面的な対人業務を評価するに過ぎず、見直し前と比べて点数もおおむね維持されている。「調剤管理料」の算定状況を見ると、薬学管理料の約5割を占めているが、本来であれば真に対人業務を評価する報酬項目により重点化する必要があるのではないか。実際、真に対人業務を評価する報酬(かかりつけ薬剤師指導料や服用薬剤調整支援料等)の算定状況は、芳しいとは言えない状況にある。
あわせて、これまで、政策推進のために手厚く評価してきた報酬項目(加算)であっても、報酬上の評価は国民負担に直結することも踏まえれば、政策目標の達成状況に照らして、必要に応じ、報酬体系の再編等を検討すべきである。
対人業務を評価することと、算定されている調剤管理料のメリハリの付け方が不十分であることや後発医薬品の数量シェアが9割に迫っている状況に照らして、調剤技術料・薬学管理料に係る報酬体系の見直しを行うべきではないか。その際、かかりつけ薬剤師指導料や服用薬剤調整支援料といった、薬学管理料の中でも、真に対人業務を評価する項目への評価の重点化を進めるべきである。
「処方箋集中率が高い薬局等における調剤基本料1の適用範囲縮小を」
ウ)調剤基本料のあり方
調剤基本料は、薬局の運営維持に要するコストを、処方箋の集中率と受付回数の側面を含めた効率性の観点から、経営の実態を踏まえて評価したものである。実際に集中率が高い薬局は、備蓄している医薬品の品目数が少ない傾向にあり、その点においては集中率の低い薬局に比べ低コストである。
これまでの診療報酬改定においても処方箋集中率に応じた見直しが行われてきているものの、更なる適正化の余地があると考えられる。したがって、経営の実態を踏まえながら、処方箋集中率が高い薬局等における調剤基本料1の適用範囲を縮小すべきである。