「OTC類似薬に関する薬剤の自己負担の在り方を、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大とあわせて検討すべき」
保険給付の範囲について、以下の通り記載した。
エ)保険給付の範囲の在り方の見直し
現役世代の保険料負担軽減を含め、国民皆保険制度の持続可能性を確保するとともに、創薬イノベーションの推進を着実に図っていく観点から、自助・公助を適切に組み合わせていくことが必要となる。
セルフケア・セルフメディケーションの推進や、費用対効果評価の本格適用により「薬事承認されたが保険収載されていない医薬品」の範囲が拡大していくこと等と整合的な制度改正を検討する必要がある。
a)保険給付範囲の見直しの考え方
我が国の外来薬剤費や国民1人当たり外来受診回数は諸外国と比べて高い水準にあり、セルフケア(自分の身体は自分のために自分で守る)、セルフメディケーション(軽微な身体的不調は自分自身で対応する)を推進する余地があると考えられる。また、医療技術の進歩に伴い高額な医薬品の収載が増加傾向にあり、今後も、保険財政への影響が大きい医薬品が出てくることも想定される。
こうした状況を踏まえ、イノベーションの推進や質の高い医薬品へのアクセスの確保、国民皆保険の持続性確保を両立する観点から、費用対効果評価の対象範囲の拡充に加えて、自助・公助の適切な組み合わせの観点から、保険給付範囲の在り方を検討する必要がある。
b)セルフケア・セルフメディケーションの推進(自助の観点)
セルフケア・セルフメディケーションは、国民の利便性向上に資するほか、国民自らの予防・健康意識の向上にもつながるものであることから、政府としても、OTC 薬の適正な使用に資する取組とあわせて積極的に推進していく必要がある。
なお、診療や調剤に係る医療費を含めた合計の自己負担額でみても、OTC 薬を購入した方が安くなるケースもあり、こうしたことを踏まえ、国民の利便性向上に資する医薬品のスイッチ OTC 化を進め、薬局で自ら購入できる医薬品の選択肢を増やしていく必要がある。
c)セルフケア・セルフメディケーション推進と整合的な保険給付範囲の見直し
諸外国の動向を見ると、軽度な症状に対する医薬品の処方に一定の制限をかけている国や、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、薬剤費の一定額までは自己負担とするといった仕組みを持つ国が存在している。
日本においても、セルフメディケーションの推進、市販品と医療用医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点等を踏まえ、医薬品の有用性に応じた自己負担率の設定や、薬剤費の定額自己負担の導入、OTC類似薬に関する薬剤の自己負担の在り方を、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大とあわせて検討すべきである。
d)費用対効果評価の本格活用等と整合的な保険給付範囲の見直し
現在、保険診療と保険外診療を併用して治療を行う場合には、原則として保険診療部分も含めて全額が自己負担となっている。「全ての診療行為を保険適用とする」か「全ての診療行為を保険適用としない」のいずれかしか選択肢がない硬直的な制度であり、未承認薬を使用すると、薬剤料だけでなく、技術料も含めて全額自己負担となり、患者にとって大きな負担となり得るものである。
今後、費用対効果評価を本格的に活用していく場合には、「薬事承認されたものの保険収載はされていない」医薬品の範囲が拡大すると見込まれるため、費用対効果の本格活用の検討とあわせ、保険外併用療養制度の柔軟な活用・拡大、民間保険の活用について検討を行うことが必要である。