協力薬局は340軒を予定/前年の2.3倍に
調査事業は、厚生労働省医薬局医薬品審査管理課委託事業「緊急避妊薬の適正販売に係る環境整備のための調査事業」で、日薬が受託しているもの。
日薬によると、令和6年度は協力薬局数は340薬局を見込み(一部調整中)、前年の145薬局から2.3倍以上となった。
調査事業は、地域において連携する薬局、産婦人科医ごとに“1モデル”として実施している。1モデルあたり薬局数は2〜6軒、連携産婦人科医は1医療機関。今年度の協力薬局拡大にあたってはモデル数自体を増加させるパターンと、1モデル内で協力薬局を増やすパターンがあり、県によっては両パターンを併用したところもあるという。
都道府県ごとのモデル数は、地域の事情に応じて1〜5モデルとなっている。
実施モデル数は前年50モデルから85モデルに増加した。
研究計画を変更/主な変更点はチェックリストの「妊娠の可能性」の項目
今年度は研究計画を若干、変更。9月25日から、サイトでは新しい硏究計画に基づく一般の人への受付が開始されている。
https://www.pharmacy-ec-trial.jp/
研究計画の変更に伴う主な変更点は、チェックリストの「妊娠の可能性」の項目。的確な実施に向け、追加的研修も実施した。
令和5年度の中間報告では産婦人科医との連携状況などの課題指摘
同調査事業は令和5年度分で「中間報告」をまとめ、公表している。
中間報告では販売可否判断がより的確に実施できるように事前質問表とチェックリストを細くする資材等を作成する必要があることなどが、課題として挙げられていた。
緊急避妊薬の服用希望者に対する販売可否判断については、解析対象とした1982件のうち、92.6%(1836件)において「販売可」と判断されていた。
「販売可とするが受診は必要」は6.0%で、その主な理由は避妊指導の必要性、性感染症の可能性などだった。
緊急避妊薬販売において、薬剤師が産婦人科医につなぐ等の連携は重要であると考えられたとしている。
一方、「販売不可」は1.4%であり、購入せずに産婦人科医受診を選択したケース、服用の必要性がないことが判明したケースなどが含まれていた。
販売不可になったケースの多くは本人の納得が得られていることがうかがえたという。
こうした結果を受け、今後は特に販売不可となった場合の産婦人科医との連携状況について引き続き把握するとともに、適切な連携体制を構築するための方策を検討する必要があるなどの課題が浮かび上がっていた。
そのため、販売時における妊娠有無の確認に関して、精度を上げる改訂を行ったという。薬局で販売する以上、産婦人科医の確認とはまた違った確認工程が必要になる。
さらに販売後に関しても、3週間後に的確に効いたのかの確認など、精度を上げる必要があったとした。
当初から実施時期はずれこみ
令和6年度の調査事業の実施は、当初は6月20日開始を予定していたところ、9月25日に延びた。
その背景について、日薬常務理事の長津雅則氏は、中間報告で浮かび上がった課題への整理にも時間を要したとの考えを示した。
令和5年度の事業結果をまとめた「中間報告」は今年5月20日に公表された。その内容を受けて、資材の改善などに対応してきた。「追加的研修」も、中間報告から令和6年度実施までに協力薬局の薬剤師の受講を終えて実施に臨んだ。
長津氏は「準備期間が短かったことは協力薬局の皆さん等に対して申し訳なく思っている」と述べた。
その上で、「調査事業は安全に緊急避妊薬が薬局から販売されることを調査するもの」とし、時間軸が最重視されるものではないとの考えを示した。開始のずれは「やむを得なかったことと思っている」(長津氏)。
編集部コメント/慎重に進められる調査事業
緊急避妊薬のアクセス改善のためには、速やかに多くの薬局で配備し、必ずしも産婦人科医との連携を必須とせず、薬局は医薬品の提供に専念し、産婦人科医受診やその後の妊娠確認は本人に委ねるべきとの意見もあるだろう。
ただ、各国と我が国では性教育や避妊に関する状況に違いがあることも事実だ。
諸外国ではコンドームは避妊方法としてではなく性感染症対策として認識されていることがすでに一般的な一方で、日本では海外で主流であるピルなどの女性が主体的な避妊方法が定着していない。
こうした中にあっては、知識が豊富である人、そうでない人の双方の安全安心に配慮した制度設計が、ステップとしては我が国では現実的であると指摘できる。
調査事業や薬局での販売を通して、「敷居が高い」と言われる産婦人科医受診が身近になることも、女性の健康的な生活の確保に意味があることではないか。
令和6年度の調査事業実施の開始のずれにおいても、5月の中間報告公表、それを受けた課題分析、その後の研究計画見直し、そして変更点の実効性を高めるための追加的研修の受講など、さまざまな必要事項があった。
医薬品業界の専門紙としての“贔屓目”かもしれないが、連携産婦人科医はもちろんのこと、行政、日薬、都道府県薬剤師会、協力薬局・薬剤師は定められたミッションの中で最大限努力しており、慎重に調査事業を進め、一歩一歩、アクセス改善への貢献を果たそうとしていると映る。
少なくとも、「絶対に後戻りさせてはならない」という決意を感じる。