【日本薬剤師会_新理事の“横顔”⑥】山浦克典氏/「臨床現場と教育現場をつなぐ橋渡し役に」

【日本薬剤師会_新理事の“横顔”⑥】山浦克典氏/「臨床現場と教育現場をつなぐ橋渡し役に」

【2024.09.26配信】日本薬剤師会は岩月進新会長の下、6月30日の総会をもって新執行部を立ち上げた。本紙では、その中でも新たに理事になったメンバーに焦点を当てて取材、紹介する。第6回は山浦克典氏。


 「特に、薬局を倒産させてしまったつらい経験のある大学教員は希少だと思うんです、たぶん、いないのではないでしょうか」――。
 聞いている方がドキッとしてしまう発言なのだが、くったくなく、そう言い切ってしまう嫌味のなさが山浦氏のキャラクターだ。そんな豊富な経験が薬剤師会役員候補としても目にとまった背景ではないかと指摘する。
 「自分でもその大変さを経験したので、日薬役員にもいらっしゃる薬局を経営されている方はリスペクトしたくなります」と続ける。

 千葉大学薬学部を卒業後、メーカーの創薬研究所に勤務。その後、薬局経営に関心を持ち、開局するも、うまくいかなかった。薬局を閉じてからは大手薬局、CROの臨床開発モニターなどに従事。新薬が生み出される“出口”に近い治験などに関わる業務には非常にやりがいを感じていたが、恩師の勧めもあり、平成21年から大学で教員を務めることになる。
 現在は慶應義塾大学薬学部の教授であり、薬学部構内にある附属薬局の薬局長を兼務している。教員の仕事は、これまでの自分の経験全てを学生に還元できるとも考えている。

 研究者としては、服薬フォローアップの有用性などをテーマとして手掛ける。
 最近、力を入れている領域としては、口腔ケアと薬剤師の関わりがある。
 「口渇や口内炎、歯肉肥厚、顎骨壊死、嚥下障害など、口の中に悪影響をもたらす薬剤は意外に多い。また歯科医の方は薬剤師の専門性に理解のある方も多い。薬剤師が口の中の健康に関わる中で、健康な口、栄養状態、健康寿命に貢献できる」と考える。日本口腔ケア学会では薬剤師部会の部会長を務めている。
 厚労科研では、健康サポート薬局の有用性について介入研究の代表を務めている。これからも薬局薬剤師の仕事を国民に理解してもらえることにつながる研究を続けたいとする。

 日薬の役員としての役回りについては、「実際の臨床現場と教育現場が乖離していてはいけない。そこをつなぐ役割は、両方をある程度知っている人が必要なのではないか」とし、橋渡し役、双方への“翻訳者”の存在になれればとする。教育現場が優秀な人材を輩出することが薬剤師の将来に直結することも、いうまでもない。

 時々、日薬が独自で会員にアンケートをとって解析、公表する時もある。そんな時にも調査設計や解析に一役買えるのではと水を向けると、「調査研究もけっこう手掛けているので、そういったところでも貢献できれば」とする。
 日薬の委員会ではドンピシャ、「薬学教育委員会」や「臨床・疫学研究推進委員会」などを担当する。好きな言葉は「忘己利他」。社会貢献など他人のために尽くすことで自分も磨かれるという考えだ。
 研究者・教育者としてだけでなく、分け隔てない接し方という山浦氏のキャラクターは、円滑な委員会活動を実現してくれそうだと感じる。

【山浦克典氏 略歴】

(やまうら・かつのり) [東京] 58歳 ※年齢は2024年6月14日時点
平成1年 3月 千葉大学薬学部総合薬品科学科卒業
平成 3年 3月 千葉大学大学院薬学研究科博士前期課程修了
平成1 4年 3月 千葉大学大学院薬学研究科博士後期課程修了
平成 3年 (株)ツムラ 創薬研究所
平成 9年 4月 東京・埼玉・茨城の保険薬局管理薬剤師・開設者など
平成17年 1月 圏央入間クリニック埼玉PET 画像診断センター薬剤 部長
平成18年12月 富士バイオメディックス臨床 CRO部門サブマネージャー
平成21年 1月 千葉大学大学院薬学研究院講師、准教授
平成27年 4月〜現在 慶應義塾大学薬学部教授・附属薬局長
<薬剤師会役員歴>
令和5年 7月~現在 東京都薬剤師会代議員

この記事のライター

関連するキーワード


日本薬剤師会 新執行部

関連する投稿


【日本薬剤師会】会員1671人減少、10万人切る/組織強化委員の報告書は年明け完成見込み

【日本薬剤師会】会員1671人減少、10万人切る/組織強化委員の報告書は年明け完成見込み

【2025.12.23配信】日本薬剤師会は12月23日に定例会見を開き、日本薬剤師会の全国会員数調査報告について報告した。


【日薬】森副会長「基本料1の議論、手をつけること考えていない」

【日薬】森副会長「基本料1の議論、手をつけること考えていない」

【2025.12.03配信】日本薬剤師会は12月3日に定例会見を開いた。その場で中医協委員である副会長の森昌平氏は調剤基本料1を取り上げた議論に対して、日薬としては「対応は全く考えていない」と言及した。


【日薬】調剤報酬改定、「まずは薬局の維持を」

【日薬】調剤報酬改定、「まずは薬局の維持を」

【2025.12.03配信】日本薬剤師会(日薬)は12月3日に定例会見を開き、中医協での調剤報酬改定の議論について言及した。


【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に会見を開いた。この中で、同日公表された財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会の提言に対し反論した。


【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に定例会見を開いた。その中で、岩月進会長が中医協での敷地内薬局をめぐる議論に対してコメントした。


最新の投稿


【令和8年度診療報酬改定】本体+3.09%、令和8年度及び令和9年度の2年度平均として

【令和8年度診療報酬改定】本体+3.09%、令和8年度及び令和9年度の2年度平均として

【2025.12.24配信】12月24日の予算大臣折衝を踏まえて、令和8年度の診療報酬改定が決定した。令和8年度及び令和9年度の2年度平均として、本体を+3.09%とする。令和8年度+2.41%、令和9年度 +3.77%とする。


【中医協】オンライン受診施設、保険薬局内の開設に懸念

【中医協】オンライン受診施設、保険薬局内の開設に懸念

【2025.12.24配信】厚生労働省は12月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、オンライン受診施設に関して保険薬局内の開設に関する課題を提示した。委員からは、いわゆる療担規則に規定のある「経済上の利益の提供による誘引の禁止」などに照らすと懸念があるとして反対意見が相次いだ。


【日本薬剤師会】会員1671人減少、10万人切る/組織強化委員の報告書は年明け完成見込み

【日本薬剤師会】会員1671人減少、10万人切る/組織強化委員の報告書は年明け完成見込み

【2025.12.23配信】日本薬剤師会は12月23日に定例会見を開き、日本薬剤師会の全国会員数調査報告について報告した。


【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【2025.12.19配信】自民党と日本維新の会がまとめた税制大綱が公表された。セルフメディケーション税制について期限延長と対象の変更等を記載。薬局製造販売医薬品についても、税制の対象となる一般用医薬品等と同じ成分を有効成分として含有するものを対象に加える。


日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」新発売/第一三共ヘルスケア

日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」新発売/第一三共ヘルスケア

【2025.12.18配信】 第一三共ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、社長:内田高広氏)は12月18日、日本初となるOTC緊急避妊薬「ノルレボ」(要指導医薬品)を2026年2月2日(月)に発売すると公表した。価格(メーカー希望小売価格)は1錠 6800円(税込み 7480円)。


ランキング


>>総合人気ランキング