【日本薬剤師会_新理事の“横顔”①】日髙玲於氏/「学問的な考えを持ち社会課題解決を考えたい」

【日本薬剤師会_新理事の“横顔”①】日髙玲於氏/「学問的な考えを持ち社会課題解決を考えたい」

【2024.09.06配信】日本薬剤師会は岩月進新会長の下、6月30日の総会をもって新執行部を立ち上げた。本紙では、その中でも新たに理事になったメンバーに焦点を当てて取材、紹介する。第1回は日髙玲於氏。


 32歳で日薬の理事入りした日髙氏。理事の中で最も若い。しかし、日髙氏は“若い”だけではない。活発な活動は業界紙記者の中ではすでに広く知られていたし、薬剤師・薬局の歴史を知ろうとする強い思いから、元日薬会長の佐谷圭一氏と対話を重ねてきたほか、各地の薬剤師会にも現地まで足を運んできた。

 今回の取材中にも、日髙氏の見識の高さをうかがわせる瞬間があった。それはAmazonファーマシーに関する見解を聞いた時だ。日髙氏は「何のテーマでもそうだが、いつも念頭に置いている観点は、20年後の社会にそれはどういう影響をもたらすのかということだ」と指摘。Amazonファーマシーに関しては実際にどのような取り組みが展開されるかをまずは正確に知る必要があると前置きしつつも、「利便性は高まるが、国民全体の健康へのリスクと天秤にかけて検討する必要がある。そこには専門家である薬剤師が関わらないといけない」と語った。
 
 とかく既存の薬局との対立構造として語られがちなこの問題。しかし本質的には国民の健康を維持・増進する職務のある薬剤師が、専門的観点から検証・提起することがまず最初にくるべきだろう。日本の国民の健康を守るのは国家の責任でもあり、その責任を果たすために設けられた国家資格の1つが薬剤師であるからだ。そう水を向けると、日髙氏は「日本国憲法第25条の第2項、国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない、ですね。それに基づき薬剤師法があるといえます」と即座に回答。薬剤師としての立脚点を正確に捉えている印象だ。

 北里大学薬学部を卒業後、千葉薬品に入社。在宅医療に関わってきた。在学中にがんで自身の母を看取った経験が「薬剤師としてできることがたくさんある」という実感にもつながった。そして、在宅医療に関わる中で「その人らしい最期」に関わるために、制度が課題になっていることも経験。「どうしたら現場の声を政策に届けることができるのか」に関心を持つようになった。

 薬剤師の地域への貢献の広がりを、学問的な側面からもエビデンスを持って証明したいと考える。千葉薬品を退社後に大学院へ入り、公衆衛生学の領域でMPH(Master of Public Health)を取得。現在も慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室の研究員を続けており、今後はPh.D(Doctor of Philosophy=博士号)取得を目指している。

 プライベートでは同じ薬学部出身で、製薬企業の開発に携わる女性と2022年に結婚。高い志も、夫人の理解と支えがあってのことだと、ここは照れ笑いを見せる。

 薬剤師会での役員歴などはない。しかし、若いがゆえに持っている中長期的な薬剤師の未来像への関心の高さは、日薬にも何らかの化学反応をもたらしてくれるのではないか。

【日髙玲於氏 略歴】

(ひだか・れお)[東京、32歳]※年齢は2024年6月14日時点
平成28年 7月 北里大学薬学部卒業
平成30年 4月(株)千葉薬品入社
平成31年 3月(株)フロンティアファーマシー出向
令和 6年 3月 慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科修士課程修了
令和 6年 5月~現在 慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室特任研究員
<薬剤師会役員歴>
なし

この記事のライター

関連するキーワード


日本薬剤師会 新執行部

関連する投稿


【日本薬剤師会】骨太方針への見解公表

【日本薬剤師会】骨太方針への見解公表

【2025.06.20配信】日本薬剤師会は6月20日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」及び「規制改革実施計画」等の閣議決定を受けて、見解を公表した。


【日本薬剤師会】「応需義務」の解釈明確化を厚労省に要望へ/カスハラ調査結果受け

【日本薬剤師会】「応需義務」の解釈明確化を厚労省に要望へ/カスハラ調査結果受け

【2025.06.19配信】日本薬剤師会(日薬)は6月19日に定例会見を開き、「薬局業務におけるカスタマーハラスメント発生時の対応事例に係るアンケート調査」の結果を説明した。この結果を受け、日薬では応需を拒否することの正当な範囲の明確化を厚労省に求めていく考え。医師においては令和元年に関連の医政局長通知が出ている。薬剤師に関してもそれらにならった形での通知等の発出が想定される。


【日本薬剤師会】夏の参院選へ、「通らなければ何もなくなる」/岩月会長

【日本薬剤師会】夏の参院選へ、「通らなければ何もなくなる」/岩月会長

【2025.05.28配信】日本薬剤師会は5月28日に都道府県会長協議会を開いた。挨拶の中で岩月進会長は、薬剤師業務に大きな影響を与える夏の参院選の厳しい状況について触れ、「通らなければ何もなくなると思わなければいけない」と語気を強めた。


【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」

【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」

【2025.05.22配信】日本薬剤師会(日薬)は5月22日に定例会見を開催した。その中で緊急避妊薬の薬局販売にかかる調査事業について報告した。


【日本薬剤師会】改正薬機法成立を受けてコメント発表

【日本薬剤師会】改正薬機法成立を受けてコメント発表

【2025.05.14配信】日本薬剤師会は5月14日、改正薬機法が成立したことを受けてコメントを発表した。


最新の投稿


【厚労省】次期調剤報酬改定へ「現在の薬局の立地に至った経緯」調査

【厚労省】次期調剤報酬改定へ「現在の薬局の立地に至った経緯」調査

【2025.07.10配信】厚生労働省は7月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の調査票案」を提示した。次期調剤報酬改定議論の基礎資料となるもの。


【奈良県議会】薬価制度の抜本的改正を求める意見書を採決/奈良県薬が働きかけ

【奈良県議会】薬価制度の抜本的改正を求める意見書を採決/奈良県薬が働きかけ

【2025.07.02配信】奈良県議会は7月2日、奈良県議会本会議において「薬価制度の抜本的改正を求める意見書」を会派全会一致で採決した。


【厚労省】電子処方箋の新目標を公表

【厚労省】電子処方箋の新目標を公表

【2025.07.01配信】厚生労働省は7月1日、第7回「医療DX令和ビジョン2030」を開催し、電子処方箋普及の新目標を公表した。


【日本薬剤師会】定時総会会長演述/岩月進会長

【日本薬剤師会】定時総会会長演述/岩月進会長

【2025.06.29配信】日本薬剤師会は6月28・29日に第106回定時総会を開き、その中で岩月進氏が会長演述を行った。


【OTC医薬品の遠隔販売】支援システム構築へ/MG-DX社

【OTC医薬品の遠隔販売】支援システム構築へ/MG-DX社

【2025.06.26配信】株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋氏)の連結子会社である医療AIカンパニー、株式会社MG-DX(本社:東京都渋谷区、代表取締役:堂前紀郎、以下「当社」)は、薬局特化型の接客AIエージェント「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」において、OTC医薬品の遠隔販売に特化した新たなシナリオを構築したと公表した。


ランキング


>>総合人気ランキング