【令和7年度の薬価“中間年改定”】岸田首相「関係者の意見も聞き検討進める」/参議院予算委員会で神谷政幸氏の質問に答える

【令和7年度の薬価“中間年改定”】岸田首相「関係者の意見も聞き検討進める」/参議院予算委員会で神谷政幸氏の質問に答える

【2024.03.28配信】参議院予算委員会が3月28日午前から開かれ、神谷政幸参議院議員が質問に立った。


神谷議員「これまでのように0.625倍の範囲で(改定を)行うことは現実的ではない」「令和7年度中間年改定は中止にするか、本来の趣旨である乖離幅が大きい品目の範囲で行うべき」

 神谷議員は医薬品供給問題を取り上げ、原因は多岐にわたるものの、薬価の頻回な改定が製薬業界の利益を圧迫していることは明白であると訴えた。不採算品の薬価引き上げの特例措置は昨年に続き実施され、令和6年度は1943品目が対象となる予定であることを紹介。「その現状を踏まえて中間年改定が医薬品供給問題に与える影響について岸田総理のお考えをお聞かせください」と質問した。

 これに対し岸田首相は、医薬品の供給不足については後発医薬品産業の少量多品目生産といった構造的な課題がある中での非効率な製造や後発医薬品メーカーの薬機法違反を契機とした供給量の低下、感染症の拡大等による需要の増加があったと指摘。「こうしたことが相まって医薬品の供給不足の事態が生じていると認識をしています」と回答。その上で薬価の中間年改定については「市場実勢価格を適時に反映し国民の皆さまのご負担を抑制する観点から実施しているもの」であるとし、「これまでの薬価改定においては不採算となっている医薬品の薬価を引き上げるなど医薬品の安定供給問題にも適切に対応してきていると認識をしています」と述べた。「医薬品の安定供給に向けては今後とも足元の供給不足の解消と、中長期的な産業構造の改革、この双方に取り組み品質の確保された医薬品を安定的に供給できる体制の確立を図ってまいりたいと考えています」と述べた。

 これに対し神谷議員は、「次の質問」とし、「中間年改定の影響により利益が減少する中でも医薬品卸は物流を確保するために他業種に負けない賃上げをして人員確保しなければなりません。また小規模の地域に根ざした薬局は薬価改定の資産減の影響を吸収しきれず経営が苦しく、現場からは今回のプラス改定に関して感謝しているが賃上げできるか不安だという声が数多くあがっています。令和7年度中間年改定は中止にするか、本来の趣旨である乖離幅が大きい品目の範囲で行うべきと考えますが岸田総理の考えはいかがでしょうか」と質問した。

 これに対し岸田首相は、「薬価の毎年改定については国民負担を抑制する観点から重要な取り組みであると考えて」いるとした上で、「引き続きイノベーションの推進と国民皆保険の持続性、これを両立する観点から薬価改定を行っていきたい」との考えを示した。加えて、「その上で、令和7年度の中間年改定についてご指摘がありましたが、診療報酬改定のない年の薬価改定のあり方、これについては昨年末、厚生労働省の中医協で了承された令和6年度薬価制度改革の骨子において、引き続き検討するとされています。令和6年度に速やかに議論を開始することとされているところであり、関係者の意見も伺いながら検討を進めてまいりたいと考えます」と回答した。

 神谷議員は「平均乖離率は令和5年度調査で6%と過去30年で最も小さくなっており、次の中間年改定をこれまでのように0.62 5倍の範囲で行うことは現実的ではないと考えます。賃上げを実施しつつ、医薬品流通体制と地域の医薬品提供体制を守るためにぜひ前向きなご検討お願いしたいと思います」と述べた。

この記事のライター

関連するキーワード


薬価改定

関連する投稿


【中医協】最低薬価引き上げ、約3%

【中医協】最低薬価引き上げ、約3%

【2025.01,15配信】厚生労働省は1月15日、中医協総会を開き、令和7年度の薬価改定について議論した。最低薬価について約3%程度引き上げることとした。


【福岡厚労相会見】大臣折衝内容を説明/後発医薬品供給支援基金を造成

【福岡厚労相会見】大臣折衝内容を説明/後発医薬品供給支援基金を造成

【2024.12.25配信】福岡厚生労働相は12月25日午前に会見を開き、大臣折衝内容を説明。後発医薬品供給支援基金を造成するとした。


【令和7年度改定】特定薬剤管理指導加算3ロ5点 →10点/長期収載品の選定療養等に係る説明等に係る評価見直しで

【令和7年度改定】特定薬剤管理指導加算3ロ5点 →10点/長期収載品の選定療養等に係る説明等に係る評価見直しで

【2024.12.25配信】厚生労働省は12月25日、中医協総会を開き、薬価中間年改定の年に行う期中の診療報酬改定について議論した。調剤においては、特定薬剤管理指導加算3ロ5点を10点に引き上げることとした。長期収載品の選定療養等に係る説明等に係る評価を見直す。


【令和7年度】薬価中間年改定、薬剤費2466億円(国費648億円)の削減/大臣折衝決定

【令和7年度】薬価中間年改定、薬剤費2466億円(国費648億円)の削減/大臣折衝決定

【2024.12.25配信】厚生労働省は12月25日、中医協薬価専門部会を開いた。


【令和7年度薬価改定骨子】支払い側意見/「薬価改定実施の判断に感謝」医療保険制度の持続可能性確保に向け

【令和7年度薬価改定骨子】支払い側意見/「薬価改定実施の判断に感謝」医療保険制度の持続可能性確保に向け

【2024.12.20配信】厚生労働省は12月20日11時から中央社会保険医療協議会薬価専門部会を開き、「令和7年度薬価改定の骨子(たたき台)」を示した。これに対し、支払い側から意見が示された。


最新の投稿


【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【2025.10.20配信】あすか製薬ホールディングスは10月20日、子会社のあすか製薬が緊急避妊薬「ノルレボ」の製造販売承認を取得したと公表した。承認取得を受け、第一三共ヘルスケアが同品の販売元として、発売に向けた情報提供体制の整備を進めるという。


【厚労省_疑義解釈】保険薬局との「特別な関係」で/総合入院体制加算及び急性期充実体制加算施設基準

【厚労省_疑義解釈】保険薬局との「特別な関係」で/総合入院体制加算及び急性期充実体制加算施設基準

【2025.10.20配信】厚生労働省は10月20日、令和6年度診療報酬改定に関する「疑義解釈(その30)」を発出した。総合入院体制加算及び急性期充実体制加算の施設基準においては、病院が特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係があれば、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合でも、「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がない」に該当しないとした。


【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【2025.10.17配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月17日に定例会見を開き、調剤報酬改定における「300店舗区分」の見直しを求める声明を公表した。


【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【2025.10.16配信】公益社団法人日本薬剤師会(日薬)、一般社団法人日本保険薬局協会(NPhA)、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の3団体は、「国民の健康維持・増進を支援する」ため、薬剤師の役割と機能を広く発信する共同広告企画を実施する。


【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【2025.10.13配信】日本ジェネリック・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会(分科会⾧・武藤正樹氏)はこのほど、活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書を公表した。10月11日に盛岡市で開催された「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 第19回学術総会」「OTC医薬品分科会」のシンポジウムの場で示したもの。シンポジウムは日本OTC医薬品協会当の共催。