建議の調剤報酬にかかわる提言内容は以下の通り。
■調剤報酬
医師の処方した処方せんに従い調剤を扱う薬局については、近年、その数が大幅に増加している。また、薬学部定員も大幅に増加してきた。
薬局の立地の状況をみると、いわゆる「門前薬局」との指摘がある、診療所や病院の近隣又は敷地内に所在する薬局が大半を占めている。また、薬剤師数が増え、薬剤師1人当たりの処方せん枚数が減少する中にあっても、処方せん1枚当たりの技術料が上昇し、結果として薬剤師1人当たりの技術料の水準はコロナ禍を除き概ね維持されている。〔資料Ⅱ-1-39 参照〕
厚生労働省は、薬剤師について、医師に処方された薬の調製・交付等の「対物中心の業務」から、処方内容を確認し、医師への疑義照会等による重複投薬・相互作用等の防止や、患者への服薬指導などの「対人業務」へのシフトを目指してきたが、その進捗は道半ばである。
調剤報酬については、こうした状況も踏まえて実施された財務省の予算執行調査の結果が公表されている。患者への服薬指導、減薬の提案、重複投薬等の防止等、対人業務を行う薬局を重点的に支援できるよう、調剤基本料・地域体制加算の仕組みを見直すべきである。〔資料Ⅱ-1-40 参照〕
ア)調剤基本料の見直し
調剤基本料は、薬局の運営維持に要するコストを、処方せんの集中率52と受付回数の側面を含めた効率性の観点も含め、経営の実態を踏まえて評価したものである。
実際に処方せん集中率が高い薬局は備蓄している医薬品目数が少ない傾向にあり、その点においては集中率の低い薬局に比べて低コストであるといえる。集中率が高くなるいわゆる敷地内薬局については、誘致が過熱するなどの課題が生じている。
令和2年度(2020 年度)診療報酬(調剤報酬)改定では、一部の処方せん集中率が高い薬局を、点数がより低い調剤基本料2や調剤基本料3イの対象とする見直しを行っているが、その影響は極めて限定的であり見直しは不十分である。
また、財務省の調査によれば、処方せん集中率が高い薬局であっても、集中率が低く小規模な薬局と同様に調剤基本料1が算定されている実態が認められる。
このため、経営の実態も踏まえつつ、処方せん集中率が高い薬局等については、調剤基本料1の適用範囲等を見直すべきである。〔資料Ⅱ-1-41 参照〕
イ)地域支援体制加算の見直し
地域支援体制加算は、地域包括ケアシステムの中で地域医療に貢献する薬局を評価するものであり、地域医療に貢献する体制を有することを示す実績等の基準を満たした薬局に適用することとされている。
一方で、調剤基本料1の薬局を対象とした地域支援体制加算1(39 点)及び2(47 点)は、それ以外の調剤基本料の薬局を対象とした地域支援体制加算3(17 点)及び4(39 点)に比べ、実績に係る要件が大きく緩和されている。
このため、調剤基本料1の薬局を対象とした地域支援体制加算1及び2の要件について、地域医療に貢献する薬局を重点的に支援する観点から抜本的に見直すこととし、例えば、処方せん集中率が高い薬局の後発品調剤割合要件の見直し、残薬への対応や減薬の提案に係る実績を必須化する、「地域連携薬局」の認定を受けていることを要件化するといった措置を講じるべきである。〔資料Ⅱ-1-42 参照〕

【財政審】「建議」とりまとめ/集中率で調剤基本料1の範囲見直し提言
【2023.11.20配信】財務省の財政制度等審議会は11月20日、「令和6年度予算の編成等に関する建議」をとりまとめた。調剤報酬に関しては、集中率で調剤基本料1の範囲見直すことのほか、基本料に関連づけられる地域支援体制加算1と2の要件については、「地域医療に貢献する薬局を重点的に支援する観点から抜本的に見直す」ことを提言している。
関連する投稿
【日本薬剤師会】「調剤管理料は表面的な業務ではなく調剤の根本に関わる評価」/財政審に反論
【2025.05.28配信】日本薬剤師会は5月28日に都道府県会長協議会を開いた。この中で財務省「財政制度等審議会」から公表された、いわゆる「春の建議」の内容について見解を示した。
【日本薬剤師会】「過密地域への薬局開設について財務省の目がいった」
【2025.05.28配信】日本薬剤師会は5月28日に都道府県会長協議会を開いた。この中で財務省「財政制度等審議会」から公表された、いわゆる「春の建議」の内容について見解を示した。
【財政審】「薬局数の集約化・適正化は喫緊の課題」/調剤報酬の項で
【2025.05.27配信】財務省の財政制度等審議会は5月27日、いわゆる“春の建議”として「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」をまとめ公表した。
【財政審】OTC類似薬の保険適用の在り方、「新たな選定療養」として薬剤費自己負担の案
【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。
【財政審】リフィル処方活用へ、診療報酬上の「加減算」含め検討を
【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。
最新の投稿
【2025.06.29配信】日本薬剤師会は6月28・29日に第106回定時総会を開き、その中で岩月進氏が会長演述を行った。
【2025.06.26配信】株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋氏)の連結子会社である医療AIカンパニー、株式会社MG-DX(本社:東京都渋谷区、代表取締役:堂前紀郎、以下「当社」)は、薬局特化型の接客AIエージェント「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」において、OTC医薬品の遠隔販売に特化した新たなシナリオを構築したと公表した。
【薬学生】薬局就職者、奨学金利用率は平均上回る39.7%/日病薬
【2025.06.25配信】日本病院薬剤師会は6月25日に定例会見を開き、薬学生の4・5・6年生を対象した調査を行った。その結果、奨学金を利用している学生は33.8%。就職活動終了者921人のうち奨学金の活用者は320人(34.7%)だった。うち、保険薬局への就職者では奨学金の利用率は39.7%で平均を上回っていた。
【2025.06.23配信】クオール薬局等の保険薬局を運営するクオールホールディングス株式会社(東京都港区、代表取締役社長:中村 敬氏、以下クオール)と、KDDI株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長CEO:松田浩路氏、以下KDDI)はローソン店舗にてオンライン服薬指導が受けられる新たなサービスを開始すると公表した。
【2025.06.20配信】日本薬剤師会は6月20日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」及び「規制改革実施計画」等の閣議決定を受けて、見解を公表した。