「試験的運用」は、一部地域の薬局等での試験的な運用を行うことで、緊急避妊薬のOTC化につなげようとする試み。6月26日にも検討会議の開催が予定されており、試験的運用が法的に可能かどうかや、試験的運用をするのであればどのようなスキームにすべきかについて議論される見込み。
市民団体では、会見で緊急避妊薬を必要としている当事者が求める時間軸と検討会議の議論進捗のスピード感には乖離があるとの考えを示した。会見で「切実な声が検討会議に届いているのか」と語った。
代表の染矢明日香氏は「試験的運用」に関して、「そもそも必要のないものを行う、その妥当性が不透明」であるとし、「議論の公平性という面では後退と受け止めている」と述べた上で、仮に試験的運用が実施されることになった場合についても「できるだけ多くの薬局で取り扱うように引き続き求めていきたい」と話した。厚労省からは試験的運用の検討について、「一部地域での運用」だけでなく、「日本全体で72時間以内にアクセスできるような試験的運用の方向性も含めて検討している」というコメントがあったという。
提出した要望書は、「緊急避妊薬OTC化の試験的運用に反対し、全国的なOTC化早期実現を求める要望書」。受け取りは厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 吉田易範課長。
具体的な要望内容は以下の通り。
【要望内容】
緊急避妊薬のOTC化について、一部地域の薬局における試験的運用ではなく、全国的・全面的なOTC化を早急に実現すること
WHOは、緊急避妊薬の入手は女性の権利とし、「必要とするすべての女性・少女がアクセスできるようにすべき」と勧告しており、国際産婦人科連合(FIGO)は緊急避妊薬をOTC/処方箋を必要としない提供に適するとしています。また、46,312件のパブリックコメントが集まり、約98%が賛成であったことを鑑みても、意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性が日本でも迅速に緊急避妊薬にアクセスできるよう、緊急避妊薬の早急かつ全面的なOTC化の実現を求めます。
要望の理由
1、緊急避妊薬はWHO必須医薬品リストにも掲載され、重大な副作用のない安全な薬で医学的管理下におく必要はないとされており、既に海外では、約90 ヵ国で医師の処方箋なしに薬局などで購入することが可能であること
2、46,312件集まったパブリックコメントではOTC化に賛成する意見が45,312件と約98%を占め、喫緊のニーズが示されたこと。また、「試験的運用」はパブリックコメント取りまとめ資料の「主なご意見」として抽出されているが、同様の意見の件数や意見の抽出方法が不明確であること
3、2017年のOTC化の検討に加え、2021年6月の議論再開からこれまですでに6回に渡る長期の検討を重ねているが、試験的運用が法制上可能かどうか、試験的運用がどの程度されればスイッチOTC化が実現するか等の議論や、試験データの収集・分析のために更なる検討の長期化が予想されること
4、一部の薬局での解禁では、WHO必須医薬品へのアクセスの公平性が保たれず、人権・SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の侵害にあたること
5、既に海外調査よりOTC化による公衆衛生上のメリットがリスクを上回ることが示されており、一部薬局に限定する科学的根拠がないこと

【市民団体】緊急避妊薬OTC化の「試験的運用」に反対する要望書提出/厚労省医薬品審査管理課長へ
【2023.06.23配信】「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」は6月23日、厚労省に要望書を提出した。厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で検討が進んでいる緊急避妊薬のOTC化に関わる「試験的運用」に反対し、全国的なOTC化早期実現を求めるもの。
関連する投稿
【緊急避妊薬のOTC化】評価検討会議は終結、薬事審議会での承認可否判断へ
【2025.05.23配信】厚生労働省は5月23日、「第32回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」を開催し、緊急避妊薬のスイッチOTC化について議論した。
【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」
【2025.05.22配信】日本薬剤師会(日薬)は5月22日に定例会見を開催した。その中で緊急避妊薬の薬局販売にかかる調査事業について報告した。
【2025.05.15配信】あすか製薬は5月15日、 緊急避妊薬のスイッチ OTC について、製造販売承認申請を行ったと公表した。
【2025.05.14配信】厚生労働省は5月14日、緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る環境整備のための調査事業である「令和6年度 緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書」を公表した。令和5年度事業では購入者の約85%において、服用3~5週間後に産婦人科医を受診しておらず、また、避妊の成否を妊娠検査薬で確認していないなどの課題が抽出されていた。そのため令和6年度事業では妊娠の可能性に関しチェックリストやフロー等の資材を見直し。その結果、課題の改善がみられた。購入者の避妊成否確認については、販売後3~5週間後の調査において、6割が「確認した」と回答しており、また、その他2割も「今後確認する」と回答した。
【東京都薬剤師会】緊急避妊薬調査事業、協力医療機関数が250に
【2025.02.07配信】東京都薬剤師会は2月7日に定例会見を開いた。この中で、緊急避妊薬販売にかかる環境整備のためのモデル的調査事業の協力医療機関リストを公開した。250の医療機関から協力を得た。
最新の投稿
【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中
【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。
【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例
【2025.08.08配信】厚生労働省はこのほど、保険調剤「確認事項」(令和7年度改訂版)を公表した。2枚処方箋を受け付けることにより、投薬期間上限を超えるなどの不適切事例を指摘している。
【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環
【2025.07.30配信】東京都薬務課は7月30日、定例会見を開き、7月3日に危険ドラッグに指定した成分について説明した。指定した3成分はいずれも興奮、陶酔又は幻覚作用等を有する。すでに厚労省でも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する大臣指定薬物に指定され、令和7年7月13日をもって施行された。
【ドラッグストア協会】濫用防止薬に関わる業界販売ガイドライン、年内省令発出後の公表予定
【2025.07.29配信】日本チェーンドラッグストア協会は7月29日に定例会見を開き、改正薬機法で定める指定濫用防止医薬品の販売に関する業界ガイドラインに関して、年内をメドとする省令発出後に公表する見込みであることを説明した。
【ドラッグストア協会】参議院選挙結果報告/「本田顕子氏を本気で応援した」
【2025.07.29配信】日本チェーンドラッグストア協会は7月29日に定例会見を開き、参議院選挙の結果報告をした。