【市民団体】緊急避妊薬OTC化の「試験的運用」に反対する要望書提出/厚労省医薬品審査管理課長へ

【市民団体】緊急避妊薬OTC化の「試験的運用」に反対する要望書提出/厚労省医薬品審査管理課長へ

【2023.06.23配信】「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」は6月23日、厚労省に要望書を提出した。厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で検討が進んでいる緊急避妊薬のOTC化に関わる「試験的運用」に反対し、全国的なOTC化早期実現を求めるもの。


「試験的運用」は、一部地域の薬局等での試験的な運用を行うことで、緊急避妊薬のOTC化につなげようとする試み。6月26日にも検討会議の開催が予定されており、試験的運用が法的に可能かどうかや、試験的運用をするのであればどのようなスキームにすべきかについて議論される見込み。

 市民団体では、会見で緊急避妊薬を必要としている当事者が求める時間軸と検討会議の議論進捗のスピード感には乖離があるとの考えを示した。会見で「切実な声が検討会議に届いているのか」と語った。
 代表の染矢明日香氏は「試験的運用」に関して、「そもそも必要のないものを行う、その妥当性が不透明」であるとし、「議論の公平性という面では後退と受け止めている」と述べた上で、仮に試験的運用が実施されることになった場合についても「できるだけ多くの薬局で取り扱うように引き続き求めていきたい」と話した。厚労省からは試験的運用の検討について、「一部地域での運用」だけでなく、「日本全体で72時間以内にアクセスできるような試験的運用の方向性も含めて検討している」というコメントがあったという。

 提出した要望書は、「緊急避妊薬OTC化の試験的運用に反対し、全国的なOTC化早期実現を求める要望書」。受け取りは厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 吉田易範課長。

 具体的な要望内容は以下の通り。

【要望内容】
緊急避妊薬のOTC化について、一部地域の薬局における試験的運用ではなく、全国的・全面的なOTC化を早急に実現すること

 WHOは、緊急避妊薬の入手は女性の権利とし、「必要とするすべての女性・少女がアクセスできるようにすべき」と勧告しており、国際産婦人科連合(FIGO)は緊急避妊薬をOTC/処方箋を必要としない提供に適するとしています。また、46,312件のパブリックコメントが集まり、約98%が賛成であったことを鑑みても、意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性が日本でも迅速に緊急避妊薬にアクセスできるよう、緊急避妊薬の早急かつ全面的なOTC化の実現を求めます。

要望の理由

1、緊急避妊薬はWHO必須医薬品リストにも掲載され、重大な副作用のない安全な薬で医学的管理下におく必要はないとされており、既に海外では、約90 ヵ国で医師の処方箋なしに薬局などで購入することが可能であること

2、46,312件集まったパブリックコメントではOTC化に賛成する意見が45,312件と約98%を占め、喫緊のニーズが示されたこと。また、「試験的運用」はパブリックコメント取りまとめ資料の「主なご意見」として抽出されているが、同様の意見の件数や意見の抽出方法が不明確であること

3、2017年のOTC化の検討に加え、2021年6月の議論再開からこれまですでに6回に渡る長期の検討を重ねているが、試験的運用が法制上可能かどうか、試験的運用がどの程度されればスイッチOTC化が実現するか等の議論や、試験データの収集・分析のために更なる検討の長期化が予想されること

4、一部の薬局での解禁では、WHO必須医薬品へのアクセスの公平性が保たれず、人権・SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の侵害にあたること

5、既に海外調査よりOTC化による公衆衛生上のメリットがリスクを上回ることが示されており、一部薬局に限定する科学的根拠がないこと

この記事のライター

関連するキーワード


緊急避妊薬

関連する投稿


【緊急避妊薬のOTC化】評価検討会議は終結、薬事審議会での承認可否判断へ

【緊急避妊薬のOTC化】評価検討会議は終結、薬事審議会での承認可否判断へ

【2025.05.23配信】厚生労働省は5月23日、「第32回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」を開催し、緊急避妊薬のスイッチOTC化について議論した。


【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」

【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」

【2025.05.22配信】日本薬剤師会(日薬)は5月22日に定例会見を開催した。その中で緊急避妊薬の薬局販売にかかる調査事業について報告した。


【あすか製薬】緊急避妊薬のスイッチOTCの承認申請を公表

【あすか製薬】緊急避妊薬のスイッチOTCの承認申請を公表

【2025.05.15配信】あすか製薬は5月15日、 緊急避妊薬のスイッチ OTC について、製造販売承認申請を行ったと公表した。


【緊急避妊薬】スイッチOTC化に係る調査事業報告書が公表

【緊急避妊薬】スイッチOTC化に係る調査事業報告書が公表

【2025.05.14配信】厚生労働省は5月14日、緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る環境整備のための調査事業である「令和6年度 緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書」を公表した。令和5年度事業では購入者の約85%において、服用3~5週間後に産婦人科医を受診しておらず、また、避妊の成否を妊娠検査薬で確認していないなどの課題が抽出されていた。そのため令和6年度事業では妊娠の可能性に関しチェックリストやフロー等の資材を見直し。その結果、課題の改善がみられた。購入者の避妊成否確認については、販売後3~5週間後の調査において、6割が「確認した」と回答しており、また、その他2割も「今後確認する」と回答した。


【東京都薬剤師会】緊急避妊薬調査事業、協力医療機関数が250に

【東京都薬剤師会】緊急避妊薬調査事業、協力医療機関数が250に

【2025.02.07配信】東京都薬剤師会は2月7日に定例会見を開いた。この中で、緊急避妊薬販売にかかる環境整備のためのモデル的調査事業の協力医療機関リストを公開した。250の医療機関から協力を得た。


最新の投稿


【販売中止】「フルナーゼ点鼻液」/グラクソ・スミスクライン

【販売中止】「フルナーゼ点鼻液」/グラクソ・スミスクライン

【2025.06.16配信】グラクソ・スミスクラインは6月16日、同社が販売する「フルナーゼ点鼻液」について、年内を目途に販売を中止することを公表した。


【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【2025.06.15配信】ヘルスケア卸大手の大木ヘルスケアホールディングスは6月11日に、事業部説明会を開催した。来る6月17日(火)~6月18日(水)にTRC 東京流通センターで開く「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会2025 年 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」の事前説明会の位置付け。OTC医薬品に関しては、“推し活”市場の拡大を背景に、“推し活”をきっかけに需要に気付きを与える提案を実施することを説明した。


【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【2025.06.13配信】政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、いわゆる骨太方針を閣議決定した。医療・介護に関連しては、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と記載した。これまでは、社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針がとられてきた。薬剤師で参議院議員の神谷政幸氏はXで「税収増を踏まえた経営の安定化や確実な賃上げに繋がる対応がついに反映」と投稿。医療介護業界の声が届いたとの考えを示唆した。


【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【2025.06.12配信】奈良県薬剤師会(後岡伸爾会長)は、「健康ハートの日 2025」に協賛する。


【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。