【電子処方箋】「まずは紙の処方箋発行/受付」の運用周知

【電子処方箋】「まずは紙の処方箋発行/受付」の運用周知

【2023.01.26配信】日本薬剤師会は1月26日に定例会見を開いた。その中で、同日に開始した電子処方箋について、「まずは紙の処方箋を発行/受付」する運用を都道府県薬剤師会担当役員宛てに周知したことを報告した。電子処方箋の管理サービスでデータを蓄積、活用しても、処方箋自体は“紙”の形式も選択できるため。


 日本薬剤師会から都道府県薬剤師会担当役員宛てに周知した文書は以下の内容。

■電子処方箋の運用開始に係る情報提供について(その3)
 平素より、 本会会務に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、令和5年1月13日付け日薬情発第 173号ほかにてご案内のとおり、 1月26日より電子処方箋管理サービスの運用が開始されます。
 開始にあたっては、紙の処方箋の発行受付をする中で電子処方箋管理サービスへの処方・調剤情報の登録閲覧や重複投薬等チェック等の機能を使った運用を行うことから段階的に始める施設があることについては、 令和5年1月23日付け日楽情発第 179号でご案内したとおりですが、 今般、 厚生労働省より 社会保険診療報酬支払基金の医療機関等向けポータルサイトからのメールを通じて、改めて、その旨の周知がなされました。
 この運用は、 電子処方箋を前提とした業務への切替えに向けて着実な運用を図ることを目的とするもので、 具体的には、 ① まずは紙の処方箋を発行・受付し、 紙の処方箋から電子処方管理サービスへ処方情報 調剤情報の登録等を行い、 確実に運用できること等を確認する段階からスタートし、 ② その後、電子処方箋の発行・受付に移行する、という方法となります。
 このとおり、紙の処方箋の発行受付の場合でも、重複投薬・併用禁忌のチェックを行うことは可能であり、電子処方箋管理サービスに処方情報 調剤情報を登録し、データの蓄積・利活用を行っていくことは、地域の医療機関・薬局間における情報共有をさらに促進させ、よりよい薬物療法の提供に繋げるという電子処方箋の意義に照らし大変重要です。
 各薬局におかれましては、紙の処方箋から電子処方箋への段階的移行についてご理解いただきますとともに、電子処方箋への移行にあたっては「チェックリスト」 もご確認いただき、 確実に運用できることを確認した上で利用を開始することもご検討
の上、取組を進めていただきますようお願いいたします。
 会務ご多用のところ恐縮ながら、貴会会員にご周知下さるようお願い申し上げます。

解説

 上記の文書を解説すると、要は「まずは“紙”の処方箋を発行から進めて、地域の状況をみて電子処方箋の発行に移行していってください」ということ。
 これは患者に混乱を生じさせないための配慮。開始当初は電子処方箋システムを導入する医療機関・薬局が地域の中で“まばら”な状態が発生するためだ。例えば、電子処方箋システムを導入している医療機関で電子処方箋を発行してもらい、そのあとでかかりつけ薬局を訪問し、仮にその薬局で電子処方箋システムが未対応だった場合、患者は対応済の薬局を探して訪問するか、処方箋発行医療機関に戻って紙の状態の処方箋を発行しなおしてもらう必要が出てきてしまう。

 そのため、電子処方箋システムを導入している場合であっても、まずは“紙”の状態の処方箋を発行することが混乱を避ける手段となりえる。

 一方、「電子処方箋システムを導入しているのに、紙の処方箋を発行」という状態がよく分からないという読者もいるかもしれないが、電子処方箋システムを導入済の医療機関であっても、処方箋自体は“紙”か“電子”かの形式の2種類の発行が可能。そして、“紙”の状態の処方箋を発行した場合であっても、電子処方電システムを導入済であれば、電子処方箋管理サービスに処方箋データは送受信できるため、しっかりデータは蓄積されていき、そのデータによって重複投薬チェック機能などが利用できる。
 薬局側も処方箋自体が電子でなくても、薬局が電子処方箋システムを導入していれば、薬局で調剤済のデータを電子処方箋管理システムに送ることができるようになり、重複投薬チェックなどに活用されるデータ蓄積に貢献できるようになる。
 
 つまり、発行形態が紙か電子か、よりも、電子処方箋システムを導入していくことが重要で、紙の形式であっても医療DXの価値であるデータの蓄積と活用は可能ということになる。

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