【サンドボックス】岐阜県での医療過疎におけるモバイルファーマシーの平時活用認定

【サンドボックス】岐阜県での医療過疎におけるモバイルファーマシーの平時活用認定

【2022.08.30配信】内閣府は8月30日、新たな技術の実用化に向けて規制官庁の認定を受けた実証を行う「サンドボックス制度」において、岐阜県での医療過疎におけるモバイルファーマシーの平時活用を認定したと公表した。


 認定内容は以下の通り。

■実証名:災害対策医薬品供給車両を用いた過疎地域における調剤モデルに関する実証

■申請者:岐阜市長(岐阜薬科大学附属薬局)

■申請日:2022年7月13日
■認定日:2022年8月30日

■主務大臣:厚生労働大臣【事業所管、規制所管】

■申請背景・実証目的
・現状、人口減少により薬局が経営できる環境下にない医療過疎の地域では、医薬分業の確保が困難であり、多くの場合診療所の医師が1人で診察から調剤、投薬まで行っている。そのため医師に過度の負担がかかっており、医薬分業の観点からも医療の質の確保が課題となっている。
・災害対策医薬品供給車両は、保険薬局の調剤室と同等の設備を有し、災害時に被災地において災害処方箋に基づき調剤を実施するための車両として各地で導入されているが、医療過疎地での平時の使用におけるエビデンスは、これまで報告されていない。
・本実証では、保険薬局が存在しない医療過疎地に派遣された災害対策医薬品供給車両において保険調剤を実施することの有用性を明らかにすることを目的とする。
・過疎地医療における災害対策医薬品供給車両の平時活用方法が確立されれば、患者や医師の利便性が向上し、医師と薬剤師によるダブルチェックや適正な在庫管理などの医薬分業のメリットを医療過疎地においても享受することが可能となる。さらに、全国での導入も進み、結果的に災害対策となることも期待できる。

■実証計画 (実証期間:認定後、かつ、2022年9月以降で、薬局の変更届出を行った日から、6ヶ月後の末日まで)
 (1) 岐阜薬科大学附属薬局が、災害対策医薬品供給車両の利用申請を大学に対して行い、承認を取得する。
(2) 岐阜薬科大学附属薬局の許可権者である岐阜市長に対して、災害対策医薬品供給車両を附属薬局の一部として用いることについて、薬局の構造設備の変更届出を行う(薬局の一部とする。)。
(3) 実証実験開始前に、現状の医師による薬剤管理・調剤・服薬指導に関して事前に調査する。
(4) 実証実験開始前に1ヶ月間、診療所へ薬剤師を派遣し、診療所に派遣された薬剤師による薬剤管理・調剤・服薬指導(薬剤師による院内調剤)を実施し、調査する。
(5) 院外処方せんによる調剤・服薬指導を災害対策医薬品供給車両を用いて実施し、インタビュー及びアンケート形式等により収集した調査項目について、(3)および(4)と比較する。

<実証のイメージ>
・対象者:伊自良北診療所を利用する患者(週2回、各1時間、各5人程度を想定)
・医療過疎地域である岐阜県山県市伊自良地区において、岐阜薬科大学所属の薬剤師が災害対策医薬品供給車両を用いた調剤及び薬剤の交付業務を行う
・車両は、本実証の協力者である伊自良北診療所近隣の駐車場に駐車
・伊自良北診療所においては、伊自良北診療所から9.4キロの地点に最寄りの薬局が存在しているものの、開局時間は9時~12時30分、16時~19時半である
・免許返納等の理由により、伊自良北診療所を利用する患者が、本診療所で交付された処方箋を基に、上記最寄りの薬局その他の薬局において、薬剤師から調剤・薬剤の交付を受けることは困難である

<課題となった規制について>
 新技術等関係規定に違反しないことの考え方
・薬剤師法第22条及び同法施行規則第13条により規定されている薬剤師が調剤を行うことができる場所には、薬局が含まれている。薬局の構造設備の基準は薬局等構造設備規則によって規定されている。災害対策医薬品供給車両について、既存の許可された薬局の一部であり、調剤室の設備や環境が薬局等構造設備規則に概ね適合していれば、正確かつ安全に医薬品を調剤できると考える。
・薬局等構造設備規則においては、薬局の構造設備の一部を完全に分離することが可能かどうかについては規定していないが、本実証では、以下①~⑤をもって認められるものと考えられる。
①薬局の構造設備が店舗と車両に分離していても、薬局としての同一性連続性を有するための措置を講じ、またその措置の内容を厚生労働省及び薬局開設の許可権者である岐阜市保健所が確認すること(当該車両が薬剤師法第二十二条で規定される調剤の場所としての薬局に該当するため同法に違反しないと考えられる)。
②岐阜薬科大学附属薬局(店舗)において、すでに薬局構造設備規則を満たしていること(店舗は薬局等
構造設備規則第一条で規定される薬局の構造設備の基準を満たしており、その一部である当該車両も調剤室としては同規則の基準を満たしているため同規則に違反しないと考えられる)。
③車両内において常時調剤等の実務に従事している薬剤師が、岐阜薬科大学附属薬局の管理薬剤師と連携し、一体的に管理をするための措置を講じること(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第七条に定められた薬局の管理を実施することが可能であるため同法に違反しないと考えられる)。
④車両の行動範囲を許可権者である岐阜市及び実証場所である岐阜県が把握しており、実証計画に則れば有効な薬事監視が可能であると考えられること(都道府県知事が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第六十九条第二項で規定される立ち入り調査を行うことで同法に違反しないと考えられる)。
⑤公衆衛生上の危害が生じた又は生じる可能性があると認められる場合には実証事業を中止することが可能であること(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第七条で定める薬局の管理者による判断が可能であり、また、都道府県知事が同法第七十二条第四項で規定される改善命令等を行うことが可能であるため、同法に違反しないと考えられる)。

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